エビデンスベースド慈善活動を「Give Directly」で実践してみるの巻
https://yuchrszk.blogspot.com/2020/04/give-directly.html
近ごろ「パレオな商品開発」を販促するための参加型イベントをやってるんですが、そこで「なんでもいいから他人に親切にしてみようぜ!」ってお題を出したんですよ。
で、人様に指示を出しといて自分がやらないのは寝覚めが悪いんで、「なにをしようかなー」と思ってて思い出したのが、2018年に読んだ本のなかでとても良かった「〈効果的な利他主義〉宣言! 」であります。
これはオックスフォード大学のウィリアム・マッカスキル博士の本で、ざっと内容を紹介すると、
- 現代では複数のデータが「他人のためにお金を使うと幸せになれる」ことを実証している
- つまり、NPOへの寄附などは、かなり幸福度の向上には効果が高い
- ただし、せっかく寄付をするなら効果が出てるとこにしようぜ!
みたいな内容です。感情で金を出すんじゃなくて、どうせなら1円あたりで救える生活の総量が多いものごとに支払ったほうが、世界の幸福の総量は増すだろう、と。人助けも合理的にやろうってことですな。
ってことで、どこに寄付するかを考えたすえに決めたのがGive Directlyってとこです。
Give Directlyは2008年からやってる非営利団体で、おもにアフリカの貧困層にスマホ経由で現金を送金し、その使われ方もモニターしてるんですよ。物をあげたりスキルを伝えるよりも、お金をそのままあげたほうが効果が大きいのでは?って考え方っすね。
この考え方には一定の証拠があって、たとえば2019年のデータ(R)だと、カリフォルニア大学バークレー校が「Give Directlyに渡したお金はどう使われてるか?」を1年半ほど調べたところ、
- 現金1ドルを渡すごとに地元の経済活動が2.6倍に増えた
- 現金の使いみちは、食糧、薬、教育費が大半だった
- 地域の給料が向上した
だったそうで、結構な成果を見せてたりしします。その他にもGive Directlyは査読論文をいくつか公開(R)してて、どれもいい感じ。エビデンスベースド慈善活動の対象としては申し分ないのではないかと(いちおう効果量についてはまだ議論もあるんだけど、とりあえず証拠の量が多いのは間違いない)。
Give Directlyの使い方は簡単で、寄付ページで送金額と使い方を選んだら、名前とクレカ番号を入力すればOK。日本からだとPayPal送金はできないのでご注意ください。
で、現時点でGive Directlyは新型コロナに特化した寄付も受け付けてるんですが、今回は標準送金(For standard cash transfers)を選んでみました。ここらへんは完全に「〈効果的な利他主義〉宣言! 」の受け売りで、
- 報道の規模が大きい災害ほど資金が集まりやすいので、それ以外の問題に寄付をしたほうが影響力はデカくなる
って考え方をベースにしてます。もちろん新型コロナは大きな災害ではありつつも、実際は貧困が原因で死ぬ人の数のほうが多いので、そのぶんだけ1ドルあたりの影響度は増すんだってことですね。
送金が終わったら、Give Directlyから↓みたいなレシートメールが送られてきて終了。これは楽だぜ……。
私の取り組みとしては、「エビデンスのあるNPO」としておなじみのGiveDirectlyに寄付してみました。https://t.co/9Ep8O1F0J1#パレオクエスト pic.twitter.com/zQcEzDPohZ— 鈴木祐 (@yuchrszk)
April 4, 2020
ちなみにGive Directlyは、寄付を受けた人がどのようにお金を使い、どのように生活が変わったかを定期的に報告してくれてて、これも非常にナイスです。「科学的な適職」でも「エンドユーザーの声を聞くとやる気でるよねー」みたいな話を書きましたが、この作業を実践できるわけっすね。
ってことでいろいろ書きましたが、エビデンスベースド慈善活動を実践するならGive Directlyはよい選択ではないでしょうか。まぁ「寄附金控除が受けられないからなぁ……」とか「同じ国の貧困層を助けたいなぁ……」みたいなご希望をお持ちの方には向きませんが、気になる方はどーぞ。