今週半ばの小ネタ:リーダーシップ激増法、男女脳の違い、ココアでストレス対策、学校は週4日制で問題ない、企業は意図的に「ヤバいやつ」を上司に選んでいる、体力がある子どもはやっぱり成績もいい
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。いつもは3つの研究を取り上げてますが、今回は、6つの研究のポイントを、それぞれ超短縮バージョンで見ていくことにします。
朝の数分でリーダーシップを高める方法
フロリダ大学の研究(R)では、MBAコースに在籍する学生54名を選び、そのうち半分に「ベストリーダー介入法」を行ったんだそうな。これは、研究チームが開発したメンタルテクニックで、以前に取り上げた「『最高の自分』介入法」をベースに、「最高のリーダーを作る」方法に切り替えたものです。
具体的に、どんな指示が出たかと言いますと、
- 「自分の好きなところ」、「持っているスキル」、「持っている特徴」、「個人的な成果」、「得意なこと」のうち、「自分が最高のリーダーになるために役立つもの」を1つずつ振り返り、2~6文で書き出させる
- 参加者に「将来の任意の時期に、あなたが最高のリーダーシップを発揮できる場面を考えてください。その役割において、あなたにとってすべてが可能な限りうまくいったと想像してください」と指示を出す
って感じだったそうです。ポイントは「『最高の自分』介入法」と同じで、最高のリーダーを想像するときの自分は現実的な範囲にとどめるように指示されたらしい。
実験の期間は10日で、結果はこんな感じです。
- 「ベストリーダー介入法」をした日は、しなかった日に比べて、同僚を助けたり、よりよいアイデアの提案率が20%ほど増えた
ということで、手軽なテクニックのわりには良い結果が出ております。研究チームは「数分間ほどポジティブに考える時間を持つだけで、リーダーの職場でのパフォーマンス向上だけでなく、自宅でのオフタイムの幸福感も大きく変わる」と言っておられます。人の上に立たねばならない人は、お試しいただくといいかもですねー。
男女の脳って本当に違いがあるの?
シカゴ医科大学などの研究(R)では、男性の脳と女性の脳の違いについて調べた過去30年間の研究を分析し、数百の脳画像をまとめたんだそうな。「男女の脳はまったく違う!」みたいな話が昔からありますが、これが正しいのかどうかをチェックしたわけですね。
その結果、以下の傾向が見られたらしい。
- 男女の脳はサイズ以外に大きな差はない(男性のほうが身体が大きいので、当然男のほうが脳はデカくなる)
- よく「女性の脳は共感力がある!」とか「男性の脳は空間を把握するのがうまい!」とか言われるが、このあたりについてはほとんど違いが見られなかった
- 中国人とアメリカ人のように、多様な集団間との比較になるほど、男女脳の違いはなくなり、人類全体で男女の脳を区別する普遍的な要素は存在しないと思われる
ってことで、かつては男女の脳は違うと言われてきたのが、「男女間で異なる普遍的な脳の特徴はない。むしろ、脳は心臓や腎臓などの他の臓器と似ており、目立った違いはない」って結論だったそうな。ってことで、「男と女は脳から違うのだ!」みたいな議論には深入りしないほうがよさそうですね。
ココアでストレスに強くなるかも?
バーミンガム大学の研究(R)では、30人の健康な男性に高フラバノール(150 mg)または低フラバノール(<4 mg)のココアを飲ませ、その90分後に8分間のストレスタスクを実施させたんだそうな(連続して提示された数字を足し合わせ、誤答すると採点者から非難される、みたいな)。
すると、高フラバノール・ココアを飲んだグループには、格段によい結果が確認されまして、
- 高フラバノールのココアを飲んだら、ストレス化でも血管の機能が低下しにくく、ストレス時の血流も改善していた!
だったそうです。研究チームは「ストレスの影響を受けやすい人は、ココアを飲むと血管を保護できるかもしれない」と言ってまして、ストレスに弱い人は、フラバノールが豊富なココアを飲むのもよさそうですね。
学校は週4日制で問題ない説
ジョージア州立大学などの研究(R)では、「学校って週4日でもいいんじゃない?」って結論を出してて楽しいです。ざっくりどんな調査なのかと言いますと、
- コロラド州生徒評価プログラム(CSAP)に参加した小学生のデータを収集する。
- そのデータのうち。「週4日制」のクラスに参加した生徒と、「週5日制」のクラスに参加した生徒をピックアップし、4年生の読解力と5年生の算数のテストスコアを比較する。
って感じになります。すると、週4日制と週5日制で比べても、生徒たちの学力にはほとんど違いがなかったんだそうな。
なんで週4と週5で差がないのかは不明ですけども、研究チームは「週4日制のほうが教師が気合が入るから?」「生徒たちが十分な休憩を取れるから?」などの推測をしておられました。まぁ近ごろは、「ビジネスパーソンも週に3日は休んだほうがいいんじゃない?」って説が一般的になってきたので、この結果にも個人的には納得ですけども。
企業は意図的に「ヤバいやつ」を上司に選んでいる説
メリーランド大学などの研究(R)では、米国企業のプロフェッショナル59名に協力を頼み、「ある上場企業が会計マネージャーを探しているところを想像してね!」と指示。その際に、最終候補者に選ばれた2人の人物の人物像を見せ、どちらがマネージャーにふさわしいと思うかを評価させたんだそうな。
その結果、おもしろい傾向が確認されました、
- 企業が積極的に利益を報告する必要がある場合、経験豊富な経営者や採用担当者は、「他人の意見を聞いて強い倫理観を持つ候補者」よりも、「サイコパス、ナルシスト、マキャベリストなどのダークトライアドな性格の候補者」を採用したがる
- 経営者や採用担当者がダークトライアドを評価するのは、「道徳的なラインを平然とやぶることができるから」という理由がもっとも多かった
ということで、利益を第一に優先する企業ほど、性格がやばいやつを上司として歓迎しやすいという結論であります。確かに、ナルシストやサイコパスって、自信満々で良いリーダーっぽく見えますからねぇ。
体力がある子どもはやっぱり成績もいい
ノースイースタン大学の研究(R)では、8歳から12歳までの193人の生徒に認知能力と身体能力のテストを実施。そこで得られたデータを組み合わせたところ、以下の傾向が見られたらしい。
- 心肺機能の向上と数学とフランス語2(文法・綴り・語彙)の成績向上に有意な違いが見られた(β=0.12、SE=0.03、p<0.001)
- 心肺機能と文章理解・表現力との関係は認められなかった
- 心肺機能が高い子どもほど成績が良く、実行機能の働きも高い傾向があった
過去にも「IQが高い人は心臓と肺の機能も高いらしいぞ」って話があったとおり、子どもでも同じような傾向が確認されたわけですね。研究チームも「体力は脳の実行機能の向上と関連しており、特に認知の柔軟性は学業成績に影響を与える」とコメントしておられます。子どものころってまったく運動してなかったんで、やっぱやっておくんだったなぁ……。