「本当の自己分析」って超ムズいから、原因を押さえておこうぜ!#3「マイクロ・フレンドシップ」
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「本当の自己分析」って超ムズいから、原因を押さえておこうぜ!」の続きです(#1,#2)。
ここでは、有名な社会心理学者であるデビッド・マイヤーズ先生の本をベースに、「本当の自分を知ることをジャマするバイアス」をいくつかまとめております。正しい自己分析を阻害する要因のなかから、代表的なものをピックアップしてるわけですな。
この手の認知の歪みってのは、知識を持っておくだけでもまどわされにくくなるんで、基礎知識として押さえておくと吉であります。
本当の自分を知ることをジャマするバイアス7. 自己の過大評価
- 心理学者のカール・ロジャーズは、「ほとんどの人は自分自身を軽蔑し、無価値で愛すべき存在ではないと考えている」と言ったが、実際には、私たちのほとんどは自分に対して過大評価をしやすい。
世界中の人々の大半は、「自分の能力をどう思うか?」と尋ねられると、中間点より上の点数を自己申告しやすく、「利己的バイアス」はどの文化でも一般的である事実が明らかになった。
私たちが利己的バイアスにとらわれやすいジャンルとしては、「他人への好感度」「他者への寛容さ」「道徳性の高さ」などがある。いずれにせよ、社会で「望ましい」と考えられている特性については、ほとんどの人が自分を平均的な人よりも優れていると思いやすい。
- 具体的な研究としては、カレッジボードが82万9000人の高校生を対象に行った調査が有名である。この調査は、「他人とうまくやっていく能力」について自己評価を求めたもので、結果的に自分を平均以下だと評価した人はほとんどおらず、60パーセントが上位10パーセントに自分を位置づけ、25パーセントは上位1パーセントに自分を位置づけた。
- また別の研究でも、ビジネス・マネージャーの90パーセントが、「自分の業績は同僚より優れている!」と自己評価した。同じように、大学の教授を対象にした調査では、90パーセントが「自分の指導は平均より優れている!」と自己評価した。
- なかでも利己的バイアスが働きやすいのは「倫理観」や「道徳性」で、「自分のモラルを0から100の尺度で自己評価してください」と指示したテストでは、全国調査の回答者の50%が90点以上と評価し、74点以下と答えたのはわずか11%だった。
- このようなバイアスは、社会的に望ましい特性だけでなく、客観的な指標がない特性に対して、最も強く働く。つまり、「数学の能力」や「走る能力」などよりは、「社会的スキル」や「正直さ」などのほうが、バイアスは発生しやすい。
- 利己的バイアスの類型として、私たちは、「自分の自尊心を守るような方法で結果を説明する」という心理もある。ある実験では、「あなたは成功しました!」と知らされた人は、その成功を自分の努力と能力のおかげだと考えた。しかし、「あなたは失敗しました!」と告げられた場合は、「これは運が悪かった」「そもそも課題に問題がある」などと考える傾向が見られた。
- スポーツの世界を対象にした研究でも、勝利した選手は「自分のおかげだ」と考え、敗北した選手は「不運だ」や「審判のミスだ」「相手チームがすごすぎる」「相手チームが汚い」などと考えるケースが多かった。
- 利己的バイアスは、特定の場面では有利に働くこともある。他人よりも自分は優れていると思えば、周りが恐れを抱くような場所でも思い切って挑戦するだろうし、そのおかげで成功する可能性は高まるかもしれないる。
しかし、その一方で、利己的バイアスが強いと、個人や集団の成功を自分の努力と能力と思い込むため、環境に恵まれていない人や、遺伝的にハンデがある人たちの失敗を、「努力が足りない」として非難する態度にもつながってしまう。
このような態度は、人種差別、性差別、ナショナリズムなどを起こしやすく、あらゆる排外主義を呼び込みやすい。サミュエル・ジョンソンも言うとおり、「自分を過大評価する者は他人を過小評価し、他人を過小評価する者は他人を抑圧する」のは間違いない。
本当の自分を知ることをジャマするバイアス8. マイクロ・フレンドシップ
- 人間は社会的動物なので、どうしても他者を必要とするように設計されている。そのため、仲間はずれにされたり、集団から排除されたりすると、文字どおり本物の痛みを体に感じる。逆人、親密で思いやりのある人間関係に支えられれば、より長く、より幸せに生きることができる。
- しかし、大半の人は、通りすがり人との短いおしゃべりや、荷物を宅配してくれた相手との友好的なあいさつ、タクシー運転手との何気ない会話など、つかの間のコミュニケーションの効果を低く見るバイアスがある。
しかし、実際の研究では、迷った人に道を教えた後などの、見知らぬ人との短い会話だけでも、気分がポジティブに改善することが示されている。このようなコミュニケーションは、どのようなタイプの人でも、気分を明るくする効果を持つ。
- シカゴ大学などの実験では、通勤客に5ドルのギフトカードをわたし、電車やバスの中で普段通りに過ごすか、見知らぬ人と会話を始めるかのいずれかを選択させた。当然、誰もが見知らぬ人との会話は気まずいだろうと思ったものの、 現実にはそんなことはめったになく、どちらかといえば幸福度が上がるケースのほうが多かった。
- 他の実験でも、コーヒーを買うときにバリスタと談笑した人、道ですれ違った見知らぬ人にほめ言葉をかけた人、バスの運転手にていねいな挨拶をした人などは、うすべて同じように気分が改善する結果が得られた。
- さらに別の実験では、参加者たちに、「近ごろ連絡を取っていない友人に、メッセージや電話で連絡を取ってくださーい」と指示したところ、みんなが予想した以上に、知らせを受けた相手は喜び、感謝の言葉を口にした。
- このような行動は「マイクロ・フレンドシップ」と呼ばれ、あらゆる研究が、見知らぬ人やただの知り合いとコミュニケーションを取るだけで、双方に予想をはるかに超えた気分の改善がもたらされる事実を示している。
もちろん、この効果が得られるのは外向的な人だけでなく、内向的な人にも同じようにメリットがあることがわかっている。
- とはいえ、たいていの人は「他人に話かけたら嫌がられるだろう」と思うバイアスがあるので、マイクロ・フレンドシップを行う際にはコンフォートゾーンを超える必要がある。少し勇気を出して宅配のお兄さんに声をかける。レジの店員に感謝を述べる。旧友にメッセージを送る。それだけでも、気分は大きく改善する。