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今週半ばの小ネタ:心拍変動トレーニングで感情のコントロールがうまくなる、マインドフルネス瞑想で運動をする気になる、コーヒーが脳に良いのはカフェインのおかげだけではない


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

 

心拍変動トレーニングで感情のコントロールがうまくなるらしいぞ

このブログでは、よく「心拍変動トレーニング」を取り上げてるわけです。心拍変動については、「『心拍変動』を鍛えれば自然とダイエットになるんじゃないの?説」をご参照いただければ幸いですが、こいつを鍛えると、タフなメンタルになりやすいと考えられてまして、私のような不安になりやすい人間は、ぜひトレーニングしておきたいところなんですよ。

 

 

でもって、新たに出た研究(R)も心拍変動の話で、まず結論から言っておくと、

 

  • 心拍変動をトレーニングすれば、ポジティブな経験を思い出しやすくなるよ!

 

みたいな感じです。心拍変動を鍛えると情動記憶にも良い影響が出て、良い記憶が頭に浮かびやすくなるんだそうな。もともと安静時の心拍変動が高い人ほどネガティブな感情にとらわれにくい傾向があるんですが、それはポジティブな記憶によるものかもしれないわけですね。

 

 

これは193人の男女を対象にした試験で、みんなを「心拍変動トレーニングをするグループ」と「なにもしないグループ」にわけて、5週間後に情動記憶テストをやってもらってます。このテストは、参加者にいろんなタイプの画像を見てもらったうえで、どれを一番よく思い出したかをチェックするというもので、使われた写真は、ポジティブ、ネガティブ、またはニュートラルな感情のいずれかが起きるように設定されております。

 

 

また、ここで使われた心拍変動トレーニングは、意識的にゆったりした呼吸をしつつ、自分の心拍変動の変化をチェック。なるべく心拍変動を増加させるようにがんばるというのもので、私がいまやってる「心拍変動トレーニング」に近い感じですね。

 

 

すると、トレーニングをしたグループには、こんな変化が確認されました。

 

  • 心拍変動が増加した参加者は、否定的なイメージよりも肯定的なイメージを好む記憶バイアスがあった。

 

  • 心拍変動のトレーニングによって、感情を扱う特定の脳回路、特に扁桃体と内側前頭前皮質との連携が改善されるっぽい。

 

ってことで、どうやら心拍振動を増加させる練習をすると、感情のコントロールがよりうまくなるらしい。言わずもがな、感情のコントロールは、人生のあらゆる側面に欠かせないポイントですから、これはありがたいところですね。

 

 

研究チームいわく、

 

心拍変動バイオフィードバックは、私たちが経験するポジティブなことを、より多く記憶してくれるのかもしれない。

 

とのことで、やはり心拍変動トレーニングはメンタルに良さそうなので、個人的にもずっと続けていくつもり。

 

 

 

 

マインドフルネス瞑想で運動をする気になる?

マインドフルネスのトレーニングで運動のモチベーションが上がるぞ!」ってデータ(R)が出ておりました。運動が体にいいのはわかるけど、どうしてもやる気が出ない……」という方は、瞑想などをするとモチベーションが上がるかもしれないわけですね(そもそも瞑想のモチベーションが低かったらどうしようもないですが)。

 

 

これはバージニア工科大学などの研究で、チームはこう言っておられます。

 

マインドフルネスが運動のモチベーションに与える影響を調べるにあたり、私たちは、「気質的マインドフルネス」が運動とどのように関連しているかに興味を持った。わかりやすく言うと、「気質的マインドフルネス」とは、なにも判断することなく、今この瞬間の感覚、思考、感情に同調している心理状態のことだ。

 

ということで、日常的にマインドフルネスな状態でいられる人は、運動のモチベーションも高いのではないかってところをチェックしたんだそうな。日常的なマインドフルネスレベルを計測する方法については、以前に「自分のマインドフルネス度を判断するための15問」にまとめたので合わせてご参照ください。

 

 

この研究は205人の男女を対象にしたもので、まずはみんなの普段の運動レベルを調べたうえで、これをみんなの日常的なマインドフルネスレベルと比べたんだそうな。すると、マインドフルネスレベルが高い人ほど、運動に対するモチベーションが高く、運動に対してネガティブな苦痛を経験しにくい傾向が見つかったとのこと。分析を見てみると、どうやらマインドフルネスレベルが高い人は、運動の苦痛をよりポジティブに体験しやすいみたいっすね。

 

 

また、その他にも、この調査からわかったことがいくつかありまして、

 

  • マインドフルな人ほど、社会的評価、競争の勝利、外見の改善といった外的なモチベーションで運動をしておらず、個人的な目標や幸福感といった内的なモチベーションで運動をしていた。

 

って感じだったそうな。マインドフルネスが高い人は自分が楽しむために運動をするため、自然とモチベーションが上がるらしいんですな。

 

 

 

研究チームいわく、

 

マインドフルネスを養うことにより、個人が運動と前向きで持続可能な関係を築くのに役立つ可能性がある。マインドフル瞑想などのトレーニングは、運動のモチベーションを促進し、身体活動への障壁を減らすのに有用だと思われる。

 

とのことで、「運動が苦痛でしかたない!」という方は、マインドフルネスのトレーニングをしてもいいかもしれませんねー。

 

 

 

 

コーヒーが脳に良いのはカフェインのおかげだけではない

コーヒーが一時的に脳の機能を高めるのは有名で、これは主にカフェインの効果だと考えられているんですが、新しい研究(R)では、

 

  • コーヒーが脳に良いのは、カフェイン以外のメリットも大きいのかも?

 

って話になってておもしろかったです。こちらはコーヒーを常飲する男女47人の脳を調べたもので、全体を「カフェインだけ飲む」あるいは「コーヒーを一杯飲む」って2つのグループにわけたあと、その前と後で脳をスキャンして違いをチェックしたというんですな。ちなみに、MRIスキャンのあいだは、参加者には「リラックスして、ただぼーっとしてくださいね」と指示したらしい。

 

 

その結果について、研究チームはこう言っておられます。

 

コーヒーを飲んだ後は、デフォルト・モード・ネットワークの脳領域間の機能的結合が減少した。また、体性感覚・運動ネットワークと前頭前野の間の機能的結合は減少し、高次視覚と右実行制御ネットワークの領域の結合は増加した。

 

簡単に言えば、コーヒーを飲んだ後のほうが、被験者の行動の準備が整い、外部からの刺激に注意深くなったということだ。

 

ということで、コーヒーを飲んだあとは、休息のあとで仕事に復帰する準備がより整うらしい。もちろん、カフェイン単独でも覚醒効果はあるんだけど、その効果はコーヒーのほうが大きいらしいようで、

 

私たちが発見した効果のいくつかは、カフェインによっても再現された。

 

しかし、それ以外にも、コーヒーを飲むことに特有の効果があるようだ。コーヒーに特有の香りや味、あるいはコーヒーに関する心理的な期待といった要因によって引き起こされるのかもしれない。

 

とのこと。なんでコーヒーのほうがカフェイン単体より優秀なのかは謎ですが、やっぱコーヒーは優秀ですなぁ。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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