老化の予防には食事や運動も大事だけど「感情のコントロール」も欠かせないよね!という研究の話
人間はストレスで老ける!ってのはよく知られた話で、「最高の体調」でも1章を使ってストレスのエイジング対策を解説しております。実際のところ、慢性的なストレスは生物学的な老化スピードを上げるし(テロメア長の減少とか)、心臓や血管の病気とも関連しているしで、良いことはなんもないんですよね。
でもって、新しい研究(R)では、「ストレスは遺伝子レベルで老化を推し進めるぞ!」って結論になってて、あらためてストレスはおそろしいなーって感じでありました。
まずはざっと研究の概要をチェックしておくと、
- 18~50歳の健康な成人444名(男性45%)が対象
- みんなの心理的&生物学的なストレスを調べる
- ついでにみんなのセルフコントロール能力や感情コントロールスキルも調べる
- 血液検査も行ってみんなのとエピジェネティック(後天的な遺伝子の変化)も調べる
みたいになります。
ちょい難しいことを言うと、ここではDNAメチル化にもとづいて生物学的な年齢を評価してまして、テロメアの長さみたいにすでに確立されているバイオマーカーよりも正確な評価が可能かも?って言われてるんですよ。通常は、内臓の機能とかから身体の老化を推測することが多いですが、ここではDNAの状態にもとづいくアルゴリズムから生物学的な年齢を推定してるわけっすね。
で、その結果がどうだったかと言いますと、
- ストレスが溜まれば溜まるほど,DNAから判断される加齢のスピードは上がり、ストレスに関連した生理学的指標(インスリン抵抗性とか)の悪化とも関連していた
- が、感情のコントロール能力が高ければストレスによる老化の悪影響はやわらぎ、逆に感情コントロールがヘタになるほどストレスで老化のスピードは上がる
- また、セルフコントロールの能力はストレスとインスリン抵抗性の悪化をやわらげ、セルフコントロール能力が改善するほどインスリン感受性も改善する傾向があった
って感じになってます。もちろん、この研究は横断研究なんで因果関係がわかるわけじゃないし、長期的な影響も不明ではあるんですが、「感情コントロールとセルフコントロール能力で老化を予防できるかも?」ってのは十分あり得る話かなーとか思うわけです。
ちなみに、ストレスとDNAの老化については過去にもいくつか事例は上がってまして、
- 2018年のメタ分析では、生涯の心的外傷後ストレス障害(PTSD)が重症な人と、幼少期に重いトラウマを抱えている人はDNAの老化が進行しやすいと報告されている(R)
なんてのが出てたりします。そもそもストレスで加齢が進むってのはかなり確立された話なので、こういう結果が出るのも不思議ではないっすね。
また、セルフコントロール能力と老化の関係を示したデータもそこそこありまして、
- 2021年1月に行われた子供のコホート研究では、参加者を生まれてから45歳まで追跡調査した結果、セルフコントロール能力が高い子供ほど老化が遅いことがわかった。ちなみに、参加者のセルフコントロール能力は、社会階級の出自や知能とは無関係で成人してからも自然に変化しているので、あとから学習で伸ばせる可能性があると思われる(R)
- 2021年8月の縦断研究(R)では、セルフコントロール能力のトレーニングをすると、エピジェネティック(GrimAge)な年齢が若返るかもよ?と報告している
みたいになってたりします。セルフコントロール能力を伸ばすトレーニングで老化を遅くできるかも?ってのは、ちょっとおもしろい観点ですねー。
もっとも、双子研究のメタ分析(R)などを見てみると、セルフコントロール能力の遺伝率の推定値は60%ぐらいなんで、生まれつきで決まっちゃうところはかなり大きい感じではありますが、それでも日頃から意識しておくのは悪くないでしょうね。結論としては、やっぱセルフコントロール能力って人生の成功だけでなく、アンチエイジングにも欠かせないんだろうなぁ……ってことで。