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運動の健康メリットって週にどれぐらいやると「薄れちゃう」の?問題


 

運動量を増やすほど体にいいが、やりすぎれば体に悪いからバランスが大事よねー」みたいな話を「不老長寿メソッド」に書いてたりします。エクササイズが体に良いのは間違いないものの、オーバートレーニングになっちゃうのも心配だから気をつけましょうねーみたいな話っすね。

 

 

ただ、ここで難しいのが、普通に健康的な男女を調べた過去のデータを見てみると、

 

  • だいたいみんな低~中ぐらいの量の運動をすると大きなメリットを得られることは間違いないけど、ある時点を境にメリットが減っていくよねー

 

みたいな傾向が見られるとこであります。なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとしなんで、どんだけ体に良いことだろうがいつかリミットは来るわけです。

 

ということで、新たに出た研究(R)では、オランダの142,493人の参加者(平均年齢42歳)を集めて、中等度から活発な身体活動(MVPA:早歩きからランニングぐらいの負荷の運動)と心臓病やら脳卒中による死亡率との関係を、だいたい中央値で6.8年ぐらいで調べてくれてます。調査に参加してくれた人たちは、もともと健康な人たちと、病気にかかりやすそうな人たち(コレステロール高め)に分かれてますね。

 

 

ちなみに、みんなの運動量については、事前に「通勤で週に何分ぐらい歩いてます?」とか「余暇でどれぐらい歩いたり自転車に乗ってます?」みたいな質問を使って評価。そのうえで、脳卒中や急性心不全の発症率と比べてます。

 

 

でもって、結果を見てみると、

 

  • 健康な人の場合、まったく運動していないグループと比べて、運動量が第2、第3、第4四分位の人たちは、死亡リスクおよび心臓と血管の病気リスクがそれぞれ29%、28%、24%低かった

 

  • もともと心臓と血管の病気リスクが高いグループは、まったく運動していないグループと比べて、運動量が第1、第2、第3、第4四分位の場合は、死亡リスクおよび心臓と血管の病気リスクがそれぞれ31%、34%、36%、31%低かった

 

  • すでに心臓と血管の病気にかかっている患者さんの場合は、まったく運動していないグループと比べて、第3と第4四分位群は死亡リスクおよび心臓と血管の病気リスクがそれぞれ26%と30%低かった

 

みたいになりました。「四分位?なにそれ?」という方は全然無視していただいてOKなんですが、要するにここからどんなことがわかったのかと言いますと、

 

  • 早歩きからランニングぐらいの運動を増やすと、健康な人でも不健康な人でも死亡リスクおよび心臓と血管の病気リスクがそこそこ下がる

 

  • ただし、健康な人と心臓と血管の病気リスクが高い人は、ある程度あたりから運動の健康メリットが上がらなくなる

 

  • 一方で、すでに心臓と血管の病気にかかっている患者さんの場合は、運動の量が多いほど死亡リスクが下がる(さすがに天井知らずってことはないでしょうが、このサンプルで最も大量に運動をしている人たちのレベルが理論的な分岐点に遭遇しなかったとは言える)

 

といった話ですね。ということでざっくり言えば、健康な人の場合は運動の量は一定のとこで効果が頭打ちになり、心臓と血管の病気に悩んでいる人はメリットが消えにくいのではないか、と。

 


こうなると、「どれぐらいの運動でメリットが薄れちゃうの?」ってとこが気になりますけど、すごーくざっくりしたことを言うと、

 

  • 1週間に「10000メッツ・分」あたりから健康メリットが薄れるかも!

 

ってとこですかね。またよくわからない言葉が出てきましたけど、要するに運動の強度(メッツ)に実施時間(分)をかけるだけです。たとえば、国立健康・栄養研究所のメッツ表だと、普通のウォーキングは3メッツなんで、

 

  • 普通の速さ(時速4kmぐらい)で60分歩いた場合=3.0 メッツ × 60分=180メッツ・分

 

って感じになります。こうして見ると、週に10000メッツ・分ってのは、そこまで高いハードルでもない感じはしますね。

 

 

まぁこの研究は、運動量の測定が自己申告なのでどこまで信じていいかと言われれば心もとないとこもありますし、心臓と血管の病気リスクしか調べてないので、その他のメリットについては不明であります(脳機能とか癌予防とか)。以上をふまえたうえで、なんとなく「週に10000メッツ・分ぐらいの運動はやっとくか……」ぐらいの基準にしてみるといいかもですね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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