職場で「わざと知らないフリをする」人っていったい何がしたいの?問題
会社で働いていると、「本当は知ってるくせにわざと知らないフリをする」って人に遭遇することが結構あったりします。「この資料ってどこにあるの?」と尋ねたところ、明らかに知ってるのに「ちょっとわっかんないっすねー」みたいに答えられたりするケースですね。
これってどういう現象なんだろう?と前から思ってたところ、この「知ってるのに知らないフリ」現象を調べた研究(R)が出ててビビりました。いろんなことを調べてくれる学者さんがおりますなぁ。
で、この「知ってるのに知らないフリ」現象のことを、研究チームは「知識の隠蔽」と呼んでまして、
多くの従業員は、日常の仕事の中でよく自分の知識を隠している。
と指摘しておられます。「知識の隠蔽」ってのは組織でよく観察される一般的な現象なんだってことですね。ちなみに、このような行動は専門的に「非生産的職務行動」と呼ばれてまして、ほかにも、
- わざと欠勤して会社を困らせる
- 同僚をいじめる
- 仕事中にダラダラとネットを見続ける
- 本当はもっと早くできるのにダラダラと仕事をする
みたいな行為があって、いずれも研究対象になってるとこと。「知識の隠蔽」は数ある「非生産的職務行動」のひとつなわけですね。
そこでチームは101人の従業員(65%が女性、平均年齢39歳)を集め、10日の勤務のあいだに始業時と終業時のタイミングで2つのアンケートに答えるように指示。朝にどれぐらいネガティブな感情を抱いていたか評価してもらい、1日の終わりには、その人の仕事量、同僚との関係性の緊張感、「知識の隠蔽」をどれぐらいしたか、などを報告してもらったそうな。
すると、データには明確な傾向が認められまして、
- 人間関係の緊張感が高い人ほど知識の隠蔽が増える
- 同僚に対して知識を隠した後は、みんな疲労感やネガティブな感情が改善していた
だったそうです。つまり、仕事でストレスを感じている人ほど同僚に「ちょっとわっかんないっすねー」と答える確率が高く、それによって疲れとネガティブ感情を減らすことができていたわけですね。「知識の隠蔽」は対人関係のストレス対策になってるんだ、と。うーん、なるほど。
著者らの言葉を借りますと、
知識を持っていないフリをすることは、相手に迷惑をかけるためのスピーディで完全な方法であり、その対処機能を即座に発揮して心理的な緊張をやわらげてくれる。
とのこと。知識を隠せば確実に相手は困るはずなので、その顔を見ることでストレス解消になり、手軽に緊張をほどくことができるってことですね。なんて嫌な話なんだ(笑
ってことで話をまとめると、
- 明らかに知ってるのに知らないふりをする人は、おそらくその前に何か嫌なことがあってストレスを抱えてる可能性が高い
- わざと知らないふりをすることで、どうやら心理的なストレスはかなり緩和されるらしい
って感じですね。こうしてみると、「知識の隠蔽」ってのは職場のストレス対策として意外と有効なんじゃないかとも思うわけですが、研究チームは以下のように戒めております。
「知識の隠蔽」を使うことで一時的に気分が良くなるかもしれないが、この方法は長期的には効果がない。
結局のところ、自分が人間関係のどの部分についてストレスを抱いているのかを検証し、その問題に対処することが望ましいだろう。
まぁ、いかに自分がストレスを抱えているとしても、いっつも「ちょっとわっかんないっすねー」としか答えなかったら、長期的にはみんなから嫌われていくのは間違いないですもんね。