コンカレントトレーニングで筋力と持久力をどっちも爆上げ!って説はどこまで正しいのか?のメタ分析
「コンカレントトレーニングって意味あるの?」という良いメタ分析(R)が出てましたんで、内容をチェックしておきましょう。
耳慣れない方もいらっしゃいましょうが、「コンカレント(concurrent)」は「同時」って意味で、筋トレと有酸素運動を組み合わせるトレーニング方法です。つまり、
- 持久力トレーニング=ランニングとかサイクリングとかHIITとか
- 筋トレ=スクワットとかベンチプレスとか
を組み合わせて行うわけですね。スクワットとベンチプレスをやった後に、サイクリングをやったりとか、そんな感じですな。当然、筋力と持久力がどっちも欲しい人には良さそうなトレーニング法なんですが、ここには難点もありまして、
- 持久力トレーニングは、筋トレのメリットを抑えてしまいがち! 筋トレは持久力トレーニングのメリットを抑えてしまいがち!
って問題があります。俗に「干渉効果」と呼ばれる問題で、そのメカニズムがどんなもんかと言いますと、
- 筋繊維の働きが弱くなっちゃう
- 持久力トレーニングの直後に筋力トレを行った場合は急性疲労がじゃまになる
- 持久力トレーニング後にAMPKが活性化して筋肉の合成が阻害される
といったことがよく言われております。まぁここらへんは複雑なので無視してもらっても構いませんが、いずれにせよコンカレントトレーニングはデメリットも大きいのでは?ってのはよく言われてきたことなんですよね。
というわけで、このメタ分析では、「4週間以上の筋力トレーニング(ST)」と「コンカレントトレーニング(CT;同じレベルの筋力トレーニング+持久力トレーニング)」の効果をチェックすべく、先行研究から43のデータをまとめてくれてます。ありがたいですねぇ。
ここで評価された項目は大きく3つでして、
- 最大筋力(37試験、967名)=スクワット、両側レッグプレス、両側膝伸展、片側膝伸展で評価
- 爆発的筋力(18試験、478名)=ジャンプの高さ、スクワット・ジャンプ力、1RMの50%でのレッグプレス力、または等尺性の力発生率で評価
- 筋肉量の増え方(15試験、389名)=下半身の筋肉パーツごとにDXAスキャンを行い、外側広筋の厚さ、大腿四頭筋の断面積で評価
みたいになってます。また、その他の重要なポイントとしては、
- 持久力トレーニングの種類はサイクリングとランニングがメイン
- コンカレントトレーニングの頻度は「週4.1回 vs. 週6.1回」で効果の違いをチェック
- 筋力トレーニングと持久力トレーニングの実施時期は、「別の日 vs. 同日 vs. 同一セッション」で効果の違いをチェック
- 筋力トレーニングと持久力トレーニングを行う順序による効果の違いをチェック(同じセッションで実施した場合)
ってあたりも検証のポイントになってます。もしかしたら筋トレと持久トレの順番や回数によっては干渉効果が起きない可能性もあるんで、ここは非常にありがたいとこですよね。
でもって、分析の結果はこうなりました。
- コンカレントトレーニングをしたグループは、全体的に爆発的筋力の増加量が小さくなっていた。ただし、この効果は、筋力トレーニングと持久力トレーニングの間隔が3時間以内の場合にのみ統計的に有意だった
- 「筋トレ→持久トレ」と「持久トレ→筋トレ」の順番はどちらが良いのかは、十分な試験がないので判断ができなかった
- また、コンカレントトレーニングによる爆発的筋力の増加量の低下は、サイクリングの場合は統計的に有意だったが、ランニングでは有意ではなかった。ただし、外れ値(ほかの研究よりも飛び抜けて数値がヘンな実験データ)を取り除いたところ、サイクリングとランニングの試験の間には差が見られなくなった
- コンカレントトレーニングによる爆発的筋力の増加量の低下は、トレーニング頻度が低い場合には統計的に有意だったが、高い場合には有意ではなかった。しかし、著者らが同じ外れ値の研究を除外したところ]、トレーニング頻度に基づく差はなくなった
- 最大筋力と筋肉量の増加については、2つのグループ間で差がなかった
ということで、全体的に見ますと、競技レベルの方であればコンカレントトレーニングにおける順序や頻度にこだわる意味がありそうですが、私ぐらいの「健康維持のために運動してます!」みたいな人は、別に細かいとこまで考えなくてよさそう。というか、別にコンカレントトレーニングをやってもいいし、筋トレと持久トレを別々にやってもいいしって感じで、そこまで目立った差も出にくい印象っすね。
ちなみに、念のために、他の研究チームが行った2つのメタ分析も見ておくと、
- 21の先行研究を対象とした2012年のメタ分析では、筋力のみのトレーニングは下半身のパワーがより大きく増加し、下半身の筋力と筋肥大については差がなかった。コンカレントトレーニングと持久力のみのトレーニングは、ともにVO2maxを増加させた(R)
- 27件の先行研究を対象とした2021年のメタ分析(R)では、これまでずっとトレーニングをしてきた人が筋力トレーニングのみを行った場合は、コンカレントトレーニングよりもスクワットとレッグプレスの1RMの増加が大きかった。
- そこそこのトレーニングをしている人は、筋トレだけをくらべても特に1RMが増えやすいってことはなかった。
- ほとんど運動をしない人の場合は、筋力のみのトレーニングとコンカレントトレーニングは同様の効果を示した。
- また、コンカレントトレーニングが1RMの増加を弱めるのは、筋力トレーニングと持久力トレーニングが同じセッションで行われた場合だけだと思われる
みたいになってますね。やはりガチに運動をしている人は別として、健康維持のためにやってるぐらいであれば何も考えないほうが良いのではないか?って気になりました。