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「プラズマ乳酸菌」ってどうなの? 使ってみる意味があるの? 問題を考えてみよう!


 

というわけで、ヒロミさんと免疫について話す会に参加してきました。

 

 

ただ、これだけだと、私が「プラズマ乳酸菌についてどう思ってるの?」ってのがよくわからんでしょうから、大事なポイントをまとめときます。

 

で、そもそもプラズマ乳酸菌がなにかと言いますと、「免疫細胞の司令塔を活性化するよ!」と言われてる細菌です。2010年代に見つかった菌でして、それまでは不可能だと考えられていた、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化に成功したんですよ。それでプラズマ乳酸菌と呼ばれるようになったわけですね。

 

pDCってのは免疫の司令塔として機能する細胞で、普段は眠っているんだけど、敵と出会うことで活性化し、いろんな免疫細胞に指示を出すんですよ。いわば免疫機能を調節するコントロールセンターみたいなもんですな。

 

その後、無事に商品化されたプラズマ乳酸菌はヨーグルトや錠剤などで売られるようになりまして、一説には「風邪に効く」「インフルエンザによい」「免疫に良い」などと言われてるんですな。ちょい凄めのプロバイオティクスみたいなイメージですかね。

 

では、その効能やいかにって話ですけど、プラズマ乳酸菌は、プロバイオティクスのなかでは割と研究の歴史が長い部類でして、興味深い報告がいろいろ出ております。たとえば、

 

  • 培養したヒトのpDCで行った試験(R)では、JCM5805によりpDCの活性化が確認されたりしている。

 

  • 111人の男女のうち半分に、JCM5805で発酵させたヨーグルト(1本あたり1×1011CFU)かJCM5805のカプセルを飲んでもらった試験(R)では、プラセボよりも免疫にプラスの影響があったと思われる。また、プラズマ乳酸菌を飲んだグループは、のどの痛みの程度も低かった。

 

なんてのがありまして、おそらくpDCの問題については、おそらくなにがしかの変化が起きてるんだろうと思うわけです。

 

それでは、pDCの活性のおかげで具体的なメリットが得られるかと言えば、こちらも割と面白い結論がいくつか出てたりします。ざっと紹介すると、

 

  • ベトナム人の子ども約1000人を対象にした試験では、そのうち半分にプラズマ乳酸菌の死菌を8週間飲んでもらったもの。すると、プラズマ乳酸菌を飲んだグループのみ、期間中に熱を出す回数や、風邪で学校を休む日数が下がった(R)。

 

  • 153人のビジネスパーソンが対象の試験では、プラズマ乳酸菌の死菌を4週間飲んでもらったら、その期間は、みんなの気分や活力レベルが改善し、体調、鼻水、せきやのどの痛みも改善した(R)。

 

  • 213人の男女を対象にした試験では、そのうちプラズマ乳酸菌ドリンクを10週間ほど飲んでもらい、インフルエンザの症状を比較
    (R)。結果、プラズマ乳酸菌ドリンクを飲んだ方がいちおうインフルエンザは少なかったが、有意差は確認されなかった。

 

  • 岩手県の全小中学校にプラズマ乳酸菌のヨーグルトを配布。これを25日間、週3回のペースで食べてもらったところ、他の町よりもインフルエンザによる欠席率が低くなった(R)。

 

みたいなものがありまして、これを見るにつけ、「おっ!なかなかいいんじゃない?」って気がするわけです。

 

ただ、これらのデータってのは、わりと判断を難しくしているところがありまして、それというのも、

 

  • 症状の変化の判断が、被験者の主観に頼っているケースが多い(HPQとか)。

 

  • 研究の参加者は多いものの、そもそも実験の期間中に風邪にかかる人の総数が少ないので、結局のところ、人数がめちゃ少ない状態で結論を出そうとしている。

 

って感じだからです。いかに大量の参加者を集めようが、実験のあいだにインフルエンザや風邪になる人はどうしても少数になっちゃうんで、「うーん、結局は効いてるのか効いてないのかがよくわからない……」みたいな印象に落ち着いちゃうんですよね。

 

なので、以上のポイントをあげつらって、「プラズマ乳酸菌は都合がいいデータだけ公開してる!疑似科学だ!キー!!」みたいな方もSNSで見かけたりするんですが、個人的には「いやー、そんなこともないでしょう」って印象を持っております。もちろん、上記の情報から「プラズマ乳酸菌は風邪に効く!」とは断言しづらいんですけど、とはいえ個人的には「とりあえず試してみたら?」ぐらいには思っているんですよ。なぜならば、

 

  • このタイプの成分の中では、わりと研究例が多いほうである(たとえば、ヤクルト1000などよりは確実に検証の数は多い)。

 

  • pDCになにがしかの影響を与えているのもほぼ間違いない。もちろん、それが良いことか悪いことなのかは別だが、安全性のチェックも行われている(健康な男女を対象にした試験では、プラズマ乳酸菌の死菌5000億個を含むカプセルを使って、過剰に摂取したらどうなるかを調べた試験では、問題となる副作用は認められなかった(R))。

 

  • 過去にコクラン共同計画などが信頼性の高い研究をいくつか行っており(R,R)、乳酸菌が感染症やそれにともなう下痢などに効果がある事実は示されている(なので、プラズマ乳酸菌についても、普通になにがしかのメリットはあると考えられる)。

 

って状況があるからです。まだまだ検証が必要な段階とはいえ、先行研究もふまえて考えれば、自分の身体で実験してみる価値は十分あると思うんで。特にプロバイオティクスは個人差が大きい成分ですんで、いろんな種類を試すのは大事ですからねぇ。

 

ちなみに、私の中では、世の中のサプリをだいたい4段階ぐらいに分類してまして、

 

  1. 飲んだほうがいい枠:かなり多くの試験で有効性が確かめられており、安全性も高いもの(プロテイン、クレアチン、ビタミンDなど)

  2. 試してもいいんじゃない枠:有効性を示すデータは多いけど、もうちょい試験がないと判断しづらいもの。または個人差が大きそうなもの(プロバイオティクス、亜鉛、トリプトファン、マグネシウムなど)

  3. もうちょい様子を見たい枠:有効性を示すデータがまだ2〜3件しかないもの。または、一部に効果がないという報告も多いもの(フィッシュオイル、ヤクルト1000など)。

  4. 金ドブ枠:メリットを否定する研究しかないもの。または、積極的に危険性が指摘されているもの(ダイエット系、精力アップ系全般)。

 

って感じになってます。この区分けからすると、プラズマ乳酸菌は2番の「試してもいいんじゃない?」枠っすね。どうぞよしなにー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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