今週の小ネタ:換気で睡眠の質が爆上がり!思いやりがある人はよく眠れる!アヤワスカの儀式で幸福に!
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
寝室の換気で睡眠の質が改善しまくる?
室内の換気は大事!みたいな話は「最高の体調」にも書いたとおり。室内の二酸化炭素の濃度が上がると、どうしても脳のパフォーマンスが落ちたりしますからね。
ってことで、近ごろ新たに「換気」にまつわる研究(R)が出てまして、どんな結論だったかと言いますと、
- 寝室の換気で空気の質を最適化すれば、より安らかな夜を過ごすことができる!
みたいな感じです。まぁ、これまでの研究でも、寝室の空気の質と睡眠の質との関連性は示されていたですけど、いままでの調査はラボ実験ばかりだったので、今回の研究では、より現実的なセッティングでリサーチをしてくれてます。
これはチューリッヒ工科大学などの研究で、35人の男女が対象。年齢は27〜64歳で、重大な睡眠障害がな人だけを選んだそうな。
で、どんな研究をしたのかと言いますと、
- 最初の1週間は、いつもどおりに寝てもらって、普段の換気レベル、空気の質、睡眠パターンなどをチェック。
- その後3週間にわたって、換気レベル低、換気レベル中、換気レベル高って3パターンに分けて、みんなにいろんな空気の質で寝てもらう。
- 参加者の睡眠パターンを継続的にモニターして、どうなるかを調べる。
みたいになります。完全に日常の寝室で、換気がどこまで影響するかを調べたわけですね。
すると、結果はこんな感じになりました。
- 換気量がCO2濃度に大きな影響を与えており、換気レベルが低くなるほどCO2濃度高くなった(そりゃそうですね)
- CO2濃度と同じく、湿度も換気率の変化によって変化した。低換気量では相対湿度は概して高く、高換気量では相対湿度はわずかに低下し、さらに相対湿度レベルが睡眠の質に最適とされる50%~60%の範囲内に保たれていた。
- 換気量を低く設定した場合、PM2.5濃度はめちゃくちゃ高くなった(とはいえ、世界保健機関が定めた推奨ガイドラインを下回るレベル)。
- 温度は換気の量によって違いが出なかった。
- 換気量を低レベルから中レベルに上げると、覚醒回数が減り、深い睡眠が増え、浅い睡眠が減った。
ということで、寝室の換気を良くすると二酸化炭素の量が減るだけでなく、湿度が睡眠に最適なレベルに保たれるのではないか、と。
もっとも、この研究は35人しか使っていないため、寝室の換気と睡眠の質との間の用量反応関係は分からないので、その点は残念なところではあります。もうちょい人数を増やせば、おそらく最適なCO2濃度とか湿度が分かってくるんじゃないでしょうか。とはいえ、窓を開けておくだけで睡眠に違いが出るなら、やっとくしかないですねー。
思いやりがある人はよく眠れる!
「思いやりのある人はよく眠れる!」ってデータ(R)が出ておりました。なんでも、他人の苦痛をやわらげたいと思うような人は、入眠が困難だったり、夜中に頻繁に目が覚めたり、朝早く目が覚めたりといった睡眠障害に悩まされるケースが少ないんだそうな。ちなみに、この調査で定義する「思いやり」とは、他者の幸福や苦痛に対する深く純粋な関心を持ち、他者の苦痛や苦痛を和らげたいという願望がある人って感じになります。
この研究は、1980年にフィンランドで開始された調査データを使ったもので、37年にわたって収集された情報を分析してます。具体的には、このデータから、
- 睡眠パターンの評価
- 健康行動と働き方の状況
- 抑うつ症状に関する情報
などを抽出して、それぞれにどんな関係があるかをチェックしたんですよ。その結果なにがわかったかと言うと、
- 思いやりレベルが高い人は、一般的に睡眠不足を感じることが少なく、睡眠障害も少なかった。しかし、抑うつ症状で調整すると、思いやりと睡眠パターンとの関連は消失した。
- また、思いやりのある人は、11年後の睡眠障害も少ない傾向があった。こちらも、やはり抑うつ症状を考慮すると消失した。
- さらに分析すると、思いやりの高さが睡眠の問題を少なくするのであって、その逆ではない可能性が高いことがわかった。
のようになります。要するに、他者への思いやりがある人は抑うつの症状を起こしにくく、そのおかげで睡眠に問題が起きずにすんでいるんだってことですね。過去に「困っている人を助けると自分の苦痛も減るから、ガンガンに助けたほうがいいぞ!」なんてデータもあったように、やはり人様への親切心はメンタルに良いんですねぇ。
もちろん、この研究は、すべての評価が自己申告をベースにしてるんで、そこにバイアスがかかっている可能性は十分にあったりします。そこはご注意いただきたいとこながら、思いやりが体に良いのは間違いないので、心がけておくのが良さそうですね。
アヤワスカの儀式で幸福度が上がる!
アヤワスカの儀式に定期的に参加する人ほど幸福で健康だ!ってデータ(R)が、オランダから出ておりました。
アヤワスカってのは、アマゾンの先住民などが伝統的に使ってきた幻覚性のお酒のこと。アマゾン川に自生する植物の根などで作られ、ここにふくまれるDMTって成分が強力な幻覚体験を引き起こすんですよ。当然日本では違法なので体験しようがないですが、「幻覚剤は役に立つのか」なんて本もあるとおり、幻覚剤はここ数年で非常に熱いトピックなので、知識は知っておいて損はないでしょう。
でもって、「アヤワスカの儀式」は、このアヤワスカを使ったセレモニーで、詳しくは現代ビジネスさんの体験記事などをご覧ください。簡単に言えば、シャーマンの指示に従ってアヤワスカを飲むことで、深い内省や精神的な洞察が起きたりすると言われてるんですな。
では、その真実やいかに?ってことで、研究チームは、アヤワスカ儀式に定期的に参加している377人を募集。みんなの精神状態、食習慣、価値観などを測定したうえで、みんなの幸福度と比べたんだそうな。ちなみに、この参加者たちは、全体の30%が過去に100回以上のアヤワスカ儀式に参加していて、40%はサント・ダイメ教会に所属していたとのこと(サント・ダイメ教会は、キリスト教、先住民、アフロ・ブラジルのメンタリティを融合させた宗教団体)。
すると、めっちゃ怪しい儀式であるにもかかわらず、みなの答えはかなりポジティブでして、
- 99.8%が「アヤワスカが私生活にポジティブな影響を与えた」と感じていた。
- 64%が健康や幸福感の向上など、具体的な利点を挙げた。
- 99%がより幸福感を感じ、楽観的になり、自己認識が深まり、平和と落ち着きが増し、自信と自尊心が芽生え、社交的で共感的になり、感情のコントロールがうまくなったと回答。
- 儀式中に好ましくない出来事に遭遇したと報告したのはわずか8.5%だった。
- 参加者の95%が自分の健康状態を「良好」または「優」と評価し、実際の健康状態はオランダの一般人口を上回った。
- 74%が国の運動ガイドラインを遵守し、週に最低150分の適度な運動をしていた。食事は、野菜、豆類、果物の摂取量が多く、穀物と肉の摂取量は少なかった。
ということで、アヤワスカ儀式に長らく参加している人たちは、一般的な幸福度が高く、病気にもなりにくく、食事と運動の習慣もよい傾向があったらしい。
当然ながら、この研究デザイン上、データから因果関係を結論づけることはできないんで、「幻覚剤は役に立つのか」で描かれたように、果たしてアヤワスカそのものに良い効果があったのかは不明。このような儀式に参加するような人は意識が高いだけかも新内ですしね。
といっても、近年は幻覚剤にまつわる良い報告が増えてきたのも事実なんで、ここは追っていきたいなーとか思っております。