「芸術は人生を変えるメリットだらけだ!」って本を読んだ話#3「アートで人生を変えるにはどうすればいい?」
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「芸術は人生の改善にメリットしかない!」の続きでーす(#1,#2)。このシリーズでは、「芸術をめぐる脳」という「アートは良いことだらけだ!」ってのをデータで示した本から、個人的に気になったところをピックアップしております。では、続きをどうぞ。
アートは人生の質を上げるのに役立つ
- 「何が人生の豊かさを生み出すのか?」という問題については、さまざまな理論があるが、誰にでも当てはまるものは、「好奇心」「畏敬の念」「創造性」である。
好奇心
- 「好奇心」は、進化のプロセスで、人間の脳に組み込まれてきた能力である。認知神経科学者の多くは、「好奇心」が生まれた原因を、予測不可能な世界で理想的な決断を下すために、脳の脅威検知システムの一部として発達したからだと考えている。そのため、疑問の答えを見つかって好奇心が満たされると、ドーパミンが体中にあふれ、満足感が生まれる。
研究によれば、好奇心はより高いポジティブな感情を誘発し、さらなる幸福の改善につながる。好奇心は共感力を高め、人間関係を強化する。
- その点で、アートは、私たちが生まれ持つ、理解したい、感動したい、曖昧さを心地よく感じたいという欲求に働きかけるため、好奇心を養うのに特に適している。
好奇心を鍛えるためには、アートを見ながら、余分な判断を入れずに、自分の中にどのような思考や感情が出てくるかを、ひたすら観察するのが良い。とても単純な行為だが、個人的な洞察を得ることができる。
畏敬の念
- 「畏敬の念」も、個人的な幸福度を高めるのに役立つ強力な感情のひとつである。大自然の光景や、好きなアーティストの感動的なパフォーマンスを目の当たりにして身震いしたり、脈が速くなったりすると、脳のデフォルト・モード・ネットワークと呼ばれるエリアがダウンレギュレーションする。
すると、心が一気に静寂になり、複数の神経伝達物質がドバドバと放出。これによって高揚感と多幸感がうまれ、「ピーク体験」や「超越体験」と呼ばれる感覚を生み出す。
- また、「畏敬の念」には、好奇心と創造性を高める働きもあり、より寛大に、より優しく、より共感的に、より希望を抱かせるように働かせる力がある。これは、私たちを行動へと駆り立てる原始的なモチベーションの感情だと考えられ、芸術に没頭することは、この感覚をより頻繁に生み出すことも分かっている。
創造性
- 「創造性」は、なにかをイメージし、独創的なアイデアや解決策を考え出す能力のことで、人類の最も価値あるスキルのひとつだと言える。
2000年代初頭、ジョンズ・ホプキンス大学の耳鼻咽喉科医であるチャールズ・リムは、音楽における「楽譜どおりの演奏」と「即興の演奏」は、まったく異なるメンタルの状態を生み出すという理論を提案した。
チャールズは、fMRI装置に入れても磁石が邪魔にならないような特別な電子キーボードを設計し、その中で、プロのジャズミュージシャンに、楽譜どおりの演奏と即興演奏の2パターンをやってもらった。
すると、「楽譜どおりの演奏」では、ミュージシャンの脳はエネルギーで急上昇し、前頭前皮質が活性化した。しかし、即興でリフを作ったときには、前頭前野のかなりの部分が沈黙した。それと同時に、自己表現によく使われる前頭前野の内側が光ることもわかっった。
このような実験により、私たちは、脳が創造的なフロー状態にあるとき、本当に良い変化起こすことがわかってきた。
- ちなみに、人類は激しく社会的な生き物であり、生物学的に、自分よりも大きなコミュニケーションに属するように進化してきた。その点で、アートは文化を創造し、文化はコミュニティを創造するため、ここでもアートはやはり幸福に貢献すると言える。
アートを実践するにはどうすべきか?
- アートで人生を変えるのに、高度なスキルを学ぶ必要はなく、好きなことをやれば良い。その代表的な例は「ガーデニング」である。
2020年にプリンストン大学の環境エンジニアが行った研究では、370人のガーデニング好きを調査し、「幸福感」や「人生の有意義さ」といったポジティブな感情の変化を追跡して、みんなの感情的な幸福度を測定した。その結果、ガーデニングは感情的な幸福感を強くサポートし、このメリットは、特に低所得者層に大きいことがわかった。
- この研究では、土の中にいる微生物をかき混ぜることで、脳機能が向上し、気分が高揚すると報告されている。ガーデニングは実用的であると同時に、気分を安定させ、セロトニン(メンタルの安定に関わるホルモン)のレベルを高めることができる。ガーデニングも、創造的な表現の一形態だと言って良い。
- また、シカゴ南東部にある都市型農場の「スウィート・ウォーター」は、ケール、スイスチャード、トマト、カボチャを植えた何百もの畑が整然と並び、ウッドチップで覆われた小道が曲がりくねっている。
それと同時に、スウィート・ウォーターでは、建築、デザイン、農業に加え、アクアポニックス、大工仕事、都市計画などを導入してコミュニティを形成している。スウィート・ウォーターは、「日常の芸術に敬意を表する」というスローガンを掲げており、家庭的な食事を作って分かち合ったり、日々の掃除や洗濯を工夫して効率するようなことも、十分に創造的で美的なアートになりうると主張している。
- また、芸術のメリットを得るのに熟練は必要なく、どんな素人でも、1日たった20分で人生を劇的に変えることができる。これを体験するためには、「美的マインドセット」を取り入れてみるのがよい。
「美的マインドセット」とは、身の回りにある芸術や美しいものを常に意識し、目的を持って生活に取り入れる姿勢を意味している。具体的には、
(1)好奇心が旺盛であること
(2)遊び心にあふれ、自由な発想で探求することが好きであること
(3)感覚が鋭敏であること
(4)創作者として、あるいは鑑賞者として、創造的な活動に意欲的であること
などが重要となる。このマインドさえあれば、日常のあらゆる行動はアートになり得る。
- 日常のアート行動とは、以下のようなものである。
・シャワーを浴びながら歌って、迷走神経と副交感神経を活性化させてみる。
・嫌なことを体験したら、スケッチや落書きをしてコルチゾールを減らしてみる。
・粘土遊び、編み物、ガーデニングなどで触覚を刺激し、フロー状態に入ってみる。
・自然の中に身を置く時間を増やし、自然のリズムとつながることで、ドーパミンやセロトニンといった神経化学物質を活性化する。