困っている人を助けると自分の苦痛も減るから、ガンガンに助けたほうがいいぞ!という研究の話
「他人への親切は体に良い!」ってのは過去に何度も確認されてきた話。人間は社会的な動物なので、他人を助けることで自分のストレスも調整され、そのおかげで最後は寿命まで伸びるというんですよね。すごいですねぇ。
でもって、新しいデータ(R)は「辛い気持ちを抱えている人を助けると自分自身の苦痛も減るぞ!」ってな結論になってて良い感じでした。
これはドイツ語圏で暮らす男女62名を対象にした実験で、みんなの平均年齢は39歳ぐらい。まずは実験の概要をざっくり説明すると、
- 参加者の半分の脳をfMRIスキャナで調整しつつ、感情的に辛い写真を見てもらう(病気の人とか、戦場にいる人とか、飢餓に苦しむ子供とか)
- 残り半分は、研究者が指示した「感情コントロール戦略」を使い、辛い写真を見ている人の苦痛をやわらげようと試みる
- 以上の作業により、参加者にどのような変化が起きたのかをチェックする
みたいになります。他人の苦痛をやわらげようと試みることで、果たして個人の感情はどうなるか?ってのを調べたわけですね。
で、ここで使われた「感情コントロール戦略」は大きく2種類でして、
- 再評価戦略:「これは、ただの写真だからさ!そこまでガチにとらえる必要はないよ!」みたいに視点を変えることで、辛い感情をやわらげる作戦。いわゆるリアプレイザルで、怒りの感情をコントロールするときによく使われる手法だったりします。
- 受容戦略:「辛い気持ちになるのは当然だよね!でも、その気持を押さえつけると逆効果になっちゃうから、自分の辛さを認めてみよう!」みたいに、ネガティブな感情を受け入れることで、辛い感情をやわらげる作戦。いわゆるアクセプタンスで、近年はメンタル改善の定番手法のひとつになりつつある。
といった感じになります。どちらもこのブログで過去に伝えた定番のやり方で、私もよく使ってますね(特に再評価は使い勝手が良いので、よく使っている感じ)。
それでは、結果がどうだったかを見てみましょう。
- 感情的なストレスにさらされている人を積極的に助けないと、みんなの個人的な苦痛のレベルは高くなった 。
- ネガティブな写真に対する共感が高い被験者は、一般的に感情調節のパフォーマンスが低かった(つまり、再評価や受容を使っても効果が出にくい)。
- 全体として、共感的であることはメンタルのコストがかかり、他人の苦しみにさらされたときの苦痛がより大きくなる可能性がある。
- 積極的に他者を助けた場合は、自身の苦痛が減りやすくなり、特に社会的な感情のコントロールは自身のネガティブの感情状態を減少させる。
みたいになります。事前の予想どおり、やはり他人の感情を助けてやることで、自分のネガティブな感情も大きく減るのではないか、と。
ちなみに、ここでいう「社会的な感情」ってのは、「他の人々の思考、感情、行動に依存する感情」のことで、恥ずかしさ、罪悪感、恥、嫉妬、嫉妬、高揚感、共感、誇りなどがあります。この実験で行われたように、他人への共感によって引き起こされる感情のことですね。「共感力が高い人ほど辛い目にあいやすい」ってのは昔からよく言われることですが、他人を助けることにより、この共感的な辛い感情をどうにかやりくりできるわけっすね。
まぁ世の中には、他人の感情を調整できない状況もよくあるので、「どんな場面でも他人を助けよう!」とは言えないところではありません。そんなときは、相手の感情を調整するよりも、「無(最高の状態)」でも書いたように、ただ観察に徹した方がよいかもしれません。ただ、一般的には、受動的に観察するよりは、能動的に援助していくのが良いのは間違いないんでしょうねぇ。