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どんな人生のトラブルも適切に対処できる人が持つ3つの特性と3つのスキル

 


無(最高の状態)」では「最終的には智慧の状態を目指せるといいよねー」みたいなことを書いてます。「智慧」ってのはここ十数年で研究が進み始めた分野で、すごーくざっくり言うと、人生になんらかのトラブルが起きたときなんかに、

 

  • 短期的または長期的な問題を適切に解決できる(例:深刻な病気になってもヘンナ療法などにハマらず対処する)

  • 困った人にサポートを提供する、またはより大きな利益に貢献できる(例:家族や友人が必要としてる情報を提供する)

  • 社会的に正しいことをする(例:たとえ収入が少なくなっても、仕事で倫理的に行動する)

 

みたいな行動を取れるかどうかを意味しております。要するに、自分自身や身近な人が、人生の難しい決断や道徳的なジレンマ、長期的な問題に直面したときに、ふさわしい行動を取れる状態なわけですね。これはすばらしいですねぇ。

 

 

では、「このような状態を達成するためには何が必要なのか?」ってのが気になりますが、クラーゲンフルト大学などの先生方がポイントをまとめてくれててタメになりました(R)。くわしいところは「無(最高の状態)」でも書いてますけど、理解のサポートに使える内容になってるんじゃないでしょうか。

 

 

この論文は、先生方が過去の智慧研究をまとめたもので、まずは「智慧の構造」を以下のように表現しておられます。

 

人生の困難な状況において、非認知的な知恵の構成要素(探索的志向、他者への関心、感情調節)が、認知的構成要素(知識、メタ認知能力、自己省察)の知恵への影響を調整する。

 

……って、これだとわけがわからないと思いので、簡単に噛み砕いていきましょう。

 

 

で、まず自分や友人の身になにか大きなトラブル(病気とか仕事の失敗とか)が起きた際に、まず必要なのが「この状況を適切に対処しなければ!」というモチベーションであります。この点で、智慧のある人は、以下のような特性を備えており、そのおかげでモチベーションが上がるんだそうな。

 

  1. 探索的志向:智慧のある人は知識を好み、人生に好奇心を持ち、経験を成長の糧とする性質がある。例えば、自分とは異なる視点もオープンに受け入れるし、自分と真逆の意見も有益だと考える。


  2. 他者への配慮:智慧のある人は、他者の感情を理解し、その幸せやポジティブな感情に気を配る。ガンジーやマンデラが、一部の親しい友人や親族だけでなく、全人類に関心と配慮を向けたように、公平性、倫理性、共感性、そして思いやりは、知恵を構成する重要な要素だと言える。


  3. 感情調整能力:智慧のある人は、非常に困難な状況においても、自分の感情や他者の感情を制御することができる。要するに、自分の感情をモニタリングし、必要に応じて修正できる。このような人は、リアプレイザルやユーモアなどの戦略を使ってネガティブな感情を軽減するのがうまい。

 

これら3つの特性を高いレベルで備えている人は、つねにオープンマインドで、冷静さを保ち、気遣いと思いやりを示し、倫理的に行動する傾向があるわけですね。これに対し、智慧レベルが低い人は、トラブルに対して動揺し、問題を一面的にしか見ず、利己的に行動する傾向があったりします。これは納得ですね。

 

 

が、ただモチベーションだけあっても、実際に問題に取り組む能力がなければ意味はないわけで、その点で、研究チームは「3つの認知スキルが智慧には必要だよー」と申しておられます。

 

  1. 人生と自分に関する知識:人生や自分自身に関する知識(自分のニーズ、強み、弱み、偏りなど)を把握していること。この知識は必ずしも自覚できているものに限らず、体で覚えた実践的なスキルや専門知も入る。


  2. メタ認知能力:異なる見解、興味、価値観、目標も受け入れて、オープンマインドで考えることができる能力と、さらにはつねに謙虚でいられる能力を意味する。このような謙虚さは、人生について知り得ることの限界と、それを制御したり予測したりする力の限界を認識することから生まれる。


  3. 自己省察:自分自身の思考、感情、行動を振り返る能力を持つこと。それによって、自分の偏見や好み、盲点を見極め、偏見が判断に影響しないように、失敗から学ぶことを可能にする。

 

ということで、いずれも当ブログで「重要スキル」として提唱してきたものばかりでして、「そうですよねー」って感じがしますね。

 

 

でもって、以上3つの特性と3つのスキルを組み合わせることにより、智慧がある人達は、以下のような行動が可能になるわけです。

 

  1. 状況を客観的に理解する:新しい課題に直面したとき、智慧がある人は、まずは多くの人と話して、問題における客観的な事実とその感情的・社会的側面について情報を集める。さらには、他者と話すときにも、冷静で、敬意を払い、共感したコミュニケーションを取る。


  2. 利益を最大化する解決策や解決方法を見出す:智慧がある人は、すべての人の関心事のバランスを取ろうとし、結果に利害関係がある場合は一歩下がって自分の偏見を確認し、自分勝手なアドバイスをしてしまう可能性を減らす。


  3. 最良の解決策を提案して実行する:智慧がある人は、通常、人に何をすべきかを指示しないが、自分のスキルと経験を活かしてガイダンスを提供し、サポートを提供する。

 

うーん、これがいつもできたら、かなり人生は強いでしょうなぁ。いいですねー。

 

 

研究チームいわく、

 

困難な状況において、知恵の非認知特性要素(探索志向、他者への関心、感情の調節)は、個人が心を開き、思いやりを持ち、落ち着いた考えでいることを可能にする。その結果、これらの人々は、困難な状況において、認知的な知恵のリソース(人生と自分自身に関する広く深い知識、知識の限界と視点の相対性に対するメタ認知的認識、そして自己省察)を利用し、理性と賢明な行動をとることができる 。

 

とのことで、3つの特性と3つのスキルがガッツリ重なることにより、人間ってのは人生の困難に適切な答えを出せるようになるんだ、と。まー、このうち1つの要素を伸ばすだけでも、人生はかなり楽しくなるはずなので、意識して成長させていくのが吉ではないかと思う次第です。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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