このブログを検索




【質問】夜型人間でも早起きできるようになりませんか?


 

こんなご質問をいただきました。

 

30代の男です。いろいろ調べると私は夜型の体内時計のようです。それでも仕事の都合でできれば早起きを続けたいのですが、体内時計を朝型に変えることは可能なのでしょうか?

 

というわけで、夜型の人が朝型になるのは可能なのか?ってことですね。

 

 

念のためおさらいしておくと、人間の睡眠と覚醒のサイクルは生物学的に深く刻み込まれてまして、脳の奥深くにある神経細胞の束が、私たちが眠くなる時間や目が覚める時間などを調節しております。これが、いわゆる体内時計っすね。

 

 

でもって、体内時計は人によって異なりまして、いろんな要素に影響を受けることがわかっております。例えば、光の影響に対する体内時計の感度が高い人と低い人がいたり、食事のタイミングによる反応が違ったりといった要素がありまして、これらの違いによって私たちが早起きが得意なのか、それとも夜更かしが得意なのかが決まるわけですな。

 

最高の体調」にも書いたとおり、なかでも重要な要素は「光」でして、太陽やら室内光の影響は本当に大きいんですよ。当然ながら、おかげで昔は早起きするのはそれほど大変ではありませんで、200年前の産業革命までは、体内時計と環境はもっと同期していたと考えられております。現代では夜間にも人工照明がガンガンに室内を照らしてるんで、そのせいで体内のマスタークロックが「あれ?いま昼間かな?」と勘違いしちゃうんですよね。

 

 

 

では、夜型の人が朝型になる方法はあるのか?と言われれば、「ある程度まで早起きになることは可能だが、正直めちゃ難しいだろう」ってのがお答えになります。上述のとおり、体内時計を変える作業ってのは、遺伝のルールに戦いを挑む行為でもあるんで、本当にムズいんですよ。

 

 

ただ、バーミンガム大学などの研究(R)では、「もしかしたらそれなりに体内時計をズラせるかも?」って結果が出てるんで、これをお伝えしておきましょう。

 

 

これは、10代後半から20代前半の「極端な夜ふかし人間」22人を対象にした実験で、参加者の睡眠タイミングは、だいたい8時間睡眠の場合で午前3時ぐらいに寝るのが普段のルーチンだったらしい。確かに、かなりの夜ふかしですな。

 

 

で、参加者にどんな指示が出たかと言いますと、

 

  • 通常より3時間早く起床し、ベッドから出たらできるだけ早く日光にあたってねー
  • 午後3時以降はコーヒーを飲まず、昼寝もしないでねー
  • 夜7時以降は食事をとらないでねー
  • 夜になったら室内は照明を限界まで落として、スマホやPCの画面を見ないでねー
  • いつもより3時間早い時間に就寝するようにねー
  • なにより重要なのは、以上の習慣を1週間は確実に守ってねー

 

って感じだったそうです。いずれも宵っ張りの朝寝坊にはキツい習慣ですが、この指示を守り抜いた参加者は、実験のスタート時よりも平均で2時間早く眠れるようになり、うつ病やストレスが少なくなったんだそうな。もともと極端な宵っ張りであれば、睡眠衛生の徹底により、体内時計が改善するかもしんないわけですね。

 

 

もちろん、この研究はかなり小規模だし、そもそも「夜型を朝型に変えよう!」って目的で行われたものではないので、果たして「早起きをしたいんです!」って人にも有効かは判断できかねるところです。ただし、上記のプロトコルってのは、睡眠改善の世界だと普通に行われていることなので、早起きになりたい人にも有効なのかも?って気はしております。まぁ当面は他にできることもないので、本気で「早起きができるようになりたい!」と思ったら、上記のプロトコルを守るのが最善ってのもありますが。

 

 

ただし、このプロトコルに難点があるとすれば、

 

  • かなり大きくライフスタイルを変えなければならないので、日常生活に支障が出るかも
  • プロトコルを少しでも守らないと、すぐに過去の体内時計にもどってしまう可能性がある(週末だろうが同じ生活リズムを続けなければならない)

 

ってとこでしょうね。起床と就寝を3時間ずつズラさなきゃいけないので生活はガラッと変わるし、そこまでがんばったところで少し気を抜いたら元の状態にもどってしまう可能性があるんですよねぇ。このコストとベネフィットのバランスは難しいところです。

 

 

ならば、「体内時計の調整などあきらめて労働環境を変えたほうがいいのでは?」と考えるのもひとつの手でしょう。早起きはあきらめて、睡眠と覚醒のリズムに合わせて仕事のスケジュールを変えちゃうって考え方ですな。事実、クロノタイプに従ってスケジュールを組んだ労働者は、そのぶんだけ睡眠が深くなったってな報告(R)もありますしね。

 

 

もちろん、勤め人だと難しい話なんですが、もし出社時間が変えられないときは、上記のプロトコルをまろやかに取り入れながら30〜1時間ぐらいの範囲で体内時計をズラしつつ、「自分の集中力が上がる時間に生産的な仕事をする!」みたいに決めとくしかないかなぁと。ここらへんは、企業側が意識してくれるとありがたいんですけどね。

 

 

かくいう私もこちらの対策に落ち着いたクチでして、かつては4時起きとか5時起きにチャレンジしたこともあったものの、結局は「無理だ!」って結論になったんですよね……。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM