ヤクルト1000は本当にストレスと睡眠に効きまくる?箱買いすべき?という問題について考える
こんなご質問をいただきました。
いつも楽しく拝読しております。最近某デラックスさんの影響で、ヤクルト1000が品切れ状態になっております。
睡眠メンタル肌の改善が謳われてますが、実際どの程度効果があるのでしょうか??
とのこと。ヤクルト1000が売れてるってまったく知らなかったんですが、ツイッターで検索をかけたら確かにバズりまくってて驚きました。それ以前から芸能界でめちゃくちゃ流行ってたみたいですね。
わたくしヤクルト1000を全く知らなかったもんで、取り急ぎ公式サイトを見てみたところ、根拠になってるデータは以下のような感じでした。
- 47名の学生を半分にわけて、一方にヤクルト1000を飲んでもらいつつ8週間を過ごさせたら試験のストレスが減ったよー(R)
- 94名の学生を半分にわけて、一方にヤクルト1000を飲んでもらいつつ8週間を過ごさせたら睡眠の質が上がったよー(R)
ということで、どちらも学生を対象にした試験になってまして、いずれも二重盲検法で行われ、すべてのデータが収集されるまでは、研究者も学生も何を飲んでいるかはわからないように設計されております。個人的には、どちらの研究もよくデザインされている印象でして、よろしいのではないでしょうか。
で、両方のデータをまとめてると大変なので、睡眠に関する調査だけをざっくり抜き出すと、
- ヤクルト1000を飲んだグループは、テストに対する不安感の増加は変わらなかったが、試験のストレスによる睡眠の問題は起きにくくなった
- 具体的には、プラセボに比べて眠りに落ちるまでの時間が短く、徐波睡眠が多く、起床時の眠気も少なかったと報告されている
- 研究チームは、「有害な副作用はない」と報告したうえで、「LcS(ヤクルト1000)の毎日の摂取は、ストレスが増加する時期に睡眠の質を維持するのに役立つかもしれない」と結論づけている
のようになってまして、かなり良さそうな気がするわけです。
ただし、これらの試験をベースに私がヤクルト1000を買うかと言われれば「すんません!買いません!」って感じではあります。その理由をざっくり挙げると、こんな感じです。
- 第一に、かなり小規模&均質なグループでしかヤクルト1000の効果が研究されていない。参加した学生さんの数が少ないとバイアスがかかりやすく、したがって、この研究の結論は一般集団には当てはまらないかもしれない。どの試験も、各グループに約30〜50人の参加者を使用しただけだし(ちなみに、医薬品などが承認される前に通過しなければならない第3相臨床試験は、数百人あるいは数千人の参加者で構成される)
- 第二に、これらの研究では、研究者のほとんどがヤクルト本社から報酬を受け取っている。もちろん、「サプリ会社がスポンサーになってる研究ってどこまで信じていいの?問題」でも書いたとおり、企業がスポンサーだからといって必ずしも悪いとは言えないものの、ヤクルトとは関係ない別のグループがこの研究を再現して欲しい!と思うのも正直なところ。
- 第三に、上記の研究は、ヤクルト1000が睡眠にどのような影響を与えたかについては答えていない。例えば、「この研究で使われたLcS菌は、実際に被験者の腸内に定着したのか?」とか「腸内にLcS菌が定着したとして、どのような化学物質を作り出すのだろうか?」「迷走神経を通じて脳に信号を送ってるの?」「免疫系の機能を変化させる化合物を分泌したりしたの?」などなど、ヤクルト1000が睡眠やストレスに効いてるメカニズムもよくわからん。
まー、私もメカニズムがわからないままサプリを試すこともありますし、企業スポンサーの問題も「まぁまぁよくあることだしな」って感じでそこまで気にならないんですけど、もうちょいいろんなデータがないとヤクルト1000の箱買いはしないかなぁといったところです。
ただ、くり返しになりますけど、行われた試験はまっとうなものですんで、「俺はヤクルトの可能性に賭ける!」という気概がある方なら箱買いしてもいいのではないかと。こちらからは以上です。