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内向的な陰キャ男性が人生の幸福感を得るには何が必要なのか?を最新の性格研究から考えるエントリ


 

このブログで何度か書いてるとおり、わたくし人後に落ちないレベルの陰キャでして、とにかく社交性ゼロ人間なんですよ。そのおかげで最近は、

 

  • 人生のすべてをほぼ新宿区内で過ごしている(年に1〜2回出張で都外に出るぐらい)
  • というか、そもそも自宅からもほとんど出ない(運動をするか映画のために外出するぐらい)

 

という感じで暮らしてまして、ド内向ライフを送り続けております。外向性が高い人からは「それって楽しいの?」とか言われるものの、なんせ私は知らない人が多い飲み会に参加するとその後3日は寝込むレベルの人間なので、いまの暮らしがちょうどいいんすよ。

 

 

ただ、ここで気になってしまうのが、割と複数の研究で「外向的な人の方が幸せだよねー」って傾向が報告されてるところです(R)。ここでいう外向性ってのは、社交的で表現力が豊かで自己主張が強いタイプのことでして、それだけコミュニケーションがうまければ人生を謳歌しやすいでしょうなぁって気になるわけです。

 

 

では、内向的な人間はつねに外向人間の後塵を拝するしかないのか?って気分になりますが、直近のデータ(R)は「いや!内向人間にも道はある!」って結論になってておもしろかったです。

 

 

これは2つのサンプル(合計700人以上)を対象に、「幸福の多面性」と「幅広い性格特性」との関係を分析したものです。というとなんだか難しそうですが、簡単に言いますと、

 

  • 幸福というと「なんか幸せな感じだなー」みたいな感覚を得られるかどうかをもとに判断することが多いけど、実際の幸福ってもっと幅広い概念だよねー

 

  • ひとくちに外向的とか内向的とか言うけど、人間の性格ってもっと細かくて込み入ったものだよねー

 

って考え方をベースにしてます。「幸福感があるか?」や「内向か外向か?」みたいにシンプルなフレームワークだけで考えていると、本来はもっと複雑な要素を取りこぼしてしまうんじゃないか、と。

 

 

というわけで研究チームは、過去の幸福研究などをベースに、人間に幸福をもたらす要素を11パターンに分類しております。

 

  1. ポジティブな感情が多いかどうか(ポジティブな気分や感情の頻度や強度が高い)

  2. マイナス感情が少ないかどうか(ネガティブな気分や感情の頻度や強度が低い)

  3. 生活の満足度(自分の人生に対して肯定的な評価ができるか)

  4. 自律性(自分の考えで自分の行動を決められるかどうか)

  5. 環境マスタリー(自分のニーズや欲求に合うように環境を変えていける能力)

  6. 自己成長(成長しつづける感覚を味わえるかどうか)

  7. 良好な人間関係(温かく信頼される対人関係)

  8. 自己受容(自分に対する肯定的な態度)

  9. 人生の目的・意義(自分の努力に明確な方向性と意味があること、または自分より大きなものとのつながりが感じられること)

  10. 生活への関与(活動や生活に夢中になってコミットできること)

  11. 達成感(目標の進捗・達成、達成感・効力感・有能感など)

 

幸福をポジティブな感情でとらえるよりもかなり複雑さが増していて、納得感がかなりアップした気がしますねー。

 

 

 

幸福をもたらす5つの性格特性

でもって、チームはこの幸福要因をベースにしつつ、実験の参加者たちの性格と比較したところ、上記11の要因を満たしやすい人たちは、以下の5つの性格を備えている傾向があったんだそうな。

 

1. 熱意が大きい:友好的で感情表現が豊かで、報酬を喜ぶかどうかを表す特性。熱意のスコアが高い人は、フレンドリーで社交的、感情表現が豊かで人生をたくさん楽しむ傾向があり、人生の満足度、ポジティブな感情、個人の成長、ポジティブな人間関係、自己受容、人生の目的を独立して予測した。

 

2. 引きこもり度が高い:不安や鬱の影響を受けやすく、自意識が強いかどうかを表す特性。引きこもりのスコアが高い人は、落胆しやすく、圧倒されやすく、自意識が強い傾向があり、鬱病や不安神経症に悩まされやすい。逆に引きこもり度が低いほど生活満足度が高く、ポジティブな感情があり、ネガティブな感情が少ない。また、引きこもり度が低いほど、自律性、環境支配力、自己成長、ポジティブな人間関係、自己受容、達成感が予測された。

 

3. 勤勉さが大きい:目標志向、セルフコントロール力などを表す特性。勤勉な人は、達成志向が強く、自己統制ができ、効率的で、目的意識が高く、有能である。勤勉さは、生活満足度、ポジティブな感情、ネガティブな感情の減少、自律性、環境適応力、自己成長、ポジティブな人間関係、自己受容、意味と目的、関与、達成感と相関していた。

 

4.思いやりがある:他人の苦しみや幸福に共感できるかどうかを表す特性。思いやりのレベルが大きい人は、他人の感情や幸福を感じ、気にかけることがうまい。思いやりレベルの高さは、よりポジティブな感情、より環境マスタリー、自己成長、人間関係、自己受容、意味と目的、関与、達成感が良好だった。

 

5. 知的好奇心がある:知的な能力、または知的な活動を好むかどうかを表す特性。知的好奇心が高い人は、新しいアイデアを受け入れ、深く複雑に考えることが好きで、自分の経験についてよく考える傾向がある。知的好奇心は、自律性、環境への適応、自己成長、自己受容、目的、達成感を予測した。興味深いことに、知的好奇心は、生活満足度、ポジティブおよびネガティブな感情、ポジティブな人間関係、人生への関与など、より「感情的」な変数の予測には至らなかった。

 

 

 

幸福をちょっとだけもたらす2つの性格特性

次は、上の5つほどではないものの、やはり幸福度への影響が大きいのは以下の2つでした。

 

1. 自己主張性の高さ:自己主張性が高い人は、社会的に支配的で、社会的地位を目指すモチベーションが強く、挑発的なふるまいをする傾向がある。自己主張の強さは、人生における自律性と正の相関があるものの、一方でより大きな負の感情とも関係があることがわかった。おそらく、自律的に人生を送るためには、自分の信じるもののために抵抗することが必要であり、そのせいで幸福感が下がってしまうのだと考えられる。

 

2. 創造的な開放性:創造的な開放性のスコアが高い人は、クリエイティブ、美、想像、ファンタジー、感情を高く評価する。創造的な開放性と知的な好奇心のどちらとも、個人の成長や生活への関与と独立した関連性を持っていた。したがって、知的好奇心はより広く幸福を予測するが、創造的な開放性も重要だとは言える。

 

 

 

幸福にはつながらない3つの性格特性

最後に、幸福度への影響が認められなかった性格特性も見ておきましょう。

 

1. 礼儀正しさ:礼儀正しさのスコアが高い人は、公正で思いやりがあり、他人のニーズや欲求を尊重し、協力しやすい傾向がある。しかし、不思議なことに礼儀正しさは、どのような形の幸福感とも相関がなかった。

 

2. 秩序性:秩序性スコアが高い人は、整頓とルーチンを好み、完璧主義的な傾向がある。幸福度のどの指標とも相関がなかったが、自己成長レベルの低さと相関していた。つまり、秩序ある生活にこだわっても、幸福度に関しては何のメリットもない。

 

3. ボラティリティ:ボラティリティのスコアが高い人は、気分が不安定でイライラしやすく、衝動的なコントロールができない。いかにも幸福度を下げそうだが、実際には幸福度のどの指標とも関係がなかった。つまり、あなたが気分屋で衝動的な人であっても、幸福度が高くなる確率を下げることはないかもしれない。

 

 

というわけで、いろいろと見てみましたが、この研究を内向人間が生きる参考にするには、以下のポイントが重要になるでしょう。

 

  • 人間の幸福感を高める5つの要素のうち、外向/内向が関わるのは「熱意」しかない!

 

要するに、幸福に関わる5つの要素のうち外向性が関わるものは1つしかないので、残りの4つは内向人間でもどうにかなるのではないかってことです。ちなみに、ビッグファイブの視点から言うと、その他4つの要素は以下のようになります、

 

  • 引きこもり度=不安や心配になりやすいので、神経症傾向と関係がある
  • 勤勉さ=目標志向、セルフコントロール力などに関わるため、誠実性と関係がある
  • 思いやり=他人の苦しみや幸福に共感できるかどうかに関わるため、協調性と関係がある
  • 知的好奇心=知的な活動を好むかどうかに関わるため、開放性と関係がある

 

って感じなんで、もしあなたが私と同じように「熱意」の問題を抱えているなら、ほかの側面にフォーカスするほうが良いかもしれません。具体的には、

 

  1. ビッグファイブテストで自分の性格特性を調べる

  2. 出てきた特性のなかで、「これなら内向性よりも簡単に鍛えられるかも……」と思えるものをピックアップする

  3. ダメな性格を変えたい!というあなたに送る246の行動チャレンジリスト」のような行動リストを参考に、ピックアップした性格特性を伸ばしていく

  4. 人間に幸福をもたらす11の要素に変動があったかをセルフモニタリングしてみる

 

みたいになるでしょうね。私の場合、かつては「外向的な人間になりたいなぁ……」と思ったこともあったんですが、いろいろと試してみた結果「これだけはいくら努力しても無駄だ!自分にとって弱点すぎる!」って結論になりましたので、いまではすっぱりとあきらめて、個人的に生まれつき数値が高い「知的好奇心」と「勤勉さ」に特化して毎日を送ってる感じっすね。

 

 

だいぶ長くなりましたが、ざっくりまとめてみると、

 

  • いま自分がド内向で困っていたとしても、その他の幸福につながる道筋のいずれかを選べば問題なし!

 

っ感じですね。個人的にも、今後も「知的好奇心」と「勤勉さ」の2本柱でやっていこう……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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