サプリ会社がスポンサーになってる研究ってどこまで信じていいの?問題
このブログでは「企業が研究のお金を出してるから注意」みたいなことを書くケースがあります。サプリ企業がサプリ研究のお金を出してたりしてるせいで、スポンサーに都合の良い結果が出てるんじゃないか?みたいな話ですね。
もちろん、これはあくまでも”疑惑”ってだけでして、企業がスポンサーだからといって、必ずしも研究結果が当てにならないってわけじゃないのも当たり前の話。たいていは資金を提供するだけで他にはなにもしないケースがほとんどですからね。
が、そうは言っても、スポンサーの影響力が完全になくなると考えるのもまた無理筋で、研究者が「お金をもらったからには良い結果を出さねば!」ってプレッシャーを抱き、知らずのうちにデータを調整しちゃう可能性もありますからね。
では、具体的に「科学の研究にスポンサーはどれぐらい影響を受けてるのか?」ってことで、そこらへんを調べたおもしろいデータ(R)が出ておりました。どんな研究だったかと言いますと、
- SCImagoジャーナルランク(論文の掲載誌の重要性を示す指標)にある栄養学の雑誌からトップ10を選び、2018年に発表された論文から1,732件をピックアップ
- それぞれの論文に食品産業が関わっているかどうかを調べる
- それぞれの論文が食品産業に好ましい結果を出してるかどうかを調べる
みたいになってます。栄養系の有名誌を端から調べて、「研究の資金提供があったり著者が食品業界の従業員だったりした場合に、本当に都合が良い結論ばかり出てるのか?」をチェックしたわけっすね。
で、結果はこんな感じでーす。
- 1,732件の論文のうち研究の基準を満たしたのは1,461件。そのうち、196件(13.4%)が食品業界の関与があると分類された。最も多いパターンは資金提供だった(61.2%)
- 食品産業が関わった研究のうち、食品産業に有利な結果を示した研究は55.6%だった(109件)
- 食品産業がスポンサーになった場合は、有利な結果を示す割合が66.2%になった
- 食品産業が関与していない研究の場合、食品産業に有利な結果を示す論文は9.7%だった
- 食品産業が関わった研究のうち、食品産業に不利な結果を出した論文は6.6%だった
といったわけで、パッと見ると「あー、やっぱスポンサーに有利な結論に偏っちゃうんだなー」みたいな印象がありますね。ただ、55.6%ってのは「スポンサーに有利な結論が出やすい」と言い切れるほどの数値でもなく、「ただの偶然でもこれぐらいの数字には落ち着くかも」と言えるレベルだと思うわけです。
というと「食品産業が関与していない研究の9.7%って数字は?」って疑問もありましょうが、これは同じ土俵にないものを比べてるんで、判断が難しいんですよね。要するに、資金提供がビタミンDの有効性に与える影響を調べたいなら、「資金提供を受けてないビタミンD研究」と比べないと意味がないって話です。
その点で、今回の研究はちょっと判断が難しくて、個人的には「あれ?意外と大きな差は出なかったな?」ぐらいの印象だったりします。ちなみに先行研究と比べてみると、2016年のメタ分析(R)によりますと、
- 業界からの資金提供を受けた研究は、ポジティブな結果を出す確率が31%高い。ただし、これは統計的に有意ではない
ってことで、「影響はあるっちゃあると思われるが、そこまで確定的な話でもない」ぐらいの結論になってます。まぁこのあたりは研究のジャンルによっても結果が違ってきそうですが(例えば医薬品のテストとかは資金額が大きいので、ポジティブな結果が出やすい可能性はある)。
ってことで、個人的な見解としては、
- やっぱり資金提供の問題は影響を与えそうだけど、研究の正しさを考える上ではもっと注目すべきポイントは他にある
ぐらいの位置に落ち着いております。どうぞよしなに。