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今週の小ネタ:マルチビタミンで脳が改善?メンタルの改善に効く食物繊維とは?CBDで不眠症は治る?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

マルチビタミンで脳が改善?

私がマルチビタミンについてどう思っているかは、 以前に「おすすめのマルチビタミンってありますか?」 に書いた通り。 基本的にはそこまでお勧めしないものの、 特定の場面では役に立つこともあるので、自分のニーズを見極めながら使うのが 良いって感じです。

 

で、新しいテスト(R)もマルチビタミンの使い道に関するもので、 「脳の機能が衰え始めた高齢者なら マルチビタミンは役に立つのでは?」 という話です。

 

実験の参加者は573人の高齢者で、平均年齢は70歳。 みんなに毎日マルチビタミンのサプリメント(セントラムシルバーを使用)またはプラセボの どちらかを摂取してもらい、 2年の長きにわたって追跡調査を行ったんだそうな。 これは労作ですねぇ。

 

でも、全員の認知機能を定期的に調べたところ、 結果はこんな感じになりました。

 

  • 2年後、マルチビタミンを飲み続けたグループは、プラセボよりも全般的な認知機能が改善した(ただし、この差は統計的に有意ではない)。

 

  • マルチビタミンを飲んだグループは、エピソード記憶が改善 しやすい傾向があったが、実行機能と注意のスコアに差はなかった。

 

  • COSMOSサブスタディの結果を含むメタ分析では、マルチビタミンの サプリメントは、プラセボと比較してグローバル認知とエピソード記憶を改善した。グローバル認知については2つのサブスタディ(2,731人)、エピソード記憶については3つのサブスタディ(5,203人)のデータが含まれている(COSMOSは、カカオサプリとマルチビタミンが心血管系疾患と癌のリスクを減少させるかどうかを検証するためにデザインされた大規模ランダム化比較試験)。

 

  • マルチビタミンの摂取がグローバルな認知機能に及ぼす効果は、認知機能の老化を2年減少させることに相当することが明らかになった。

 

ということで、そこまで劇的なメリットではないものの、 マルチビタミンのおかげで高齢者の脳が健やかに保たれる可能性はあるのかもしれません。残念ながら、 このような効果がどの成分によってもたらされたのかは判断しようがなく、ビタミンD かもしれないし、亜鉛かもしれないし、ルテインやリコピンのおかげなのかもしれません。

 

この点については、今のところ何とも言えないんですが、 70歳に近くなってきた場合は、毎日マルチビタミンを飲んでみるのも手なのかもしれません。この試験の結果は多重比較のために調整されていないので、あくまで探索的なものと考えるべきですが。

 

 

 

メンタルの 改善に効く食物繊維とは?

食物繊維がメンタルに効くのでは?」って 報告は昔から何度か出ていたりします。 食物繊維のおかげで腸内環境が整い、それによってメンタルにも良い影響が出るのではないかって話ですね。

 

新しいRCT(R)も 食物繊維によるメンタルの効果をチェックしたもので、 「フラクトオリゴ糖で メンタルが改善するのではないか?」って結論になっています。 フラクトオリゴ糖を飲むと腸内のビフィズス菌が増え、軽度から中等度の不安やストレスを抱える人の抑うつ、不安、気分が改善したというんですな。

 

実験に参加したのは92人の男女で、軽度から中等度の不安とストレスを抱える人だけを選んだとのこと。 調査期間は5週間で、参加者を以下のグループに無作為に割り付けてます。

 

  1. マルトデキストリンを飲む(10グラム/日)
  2. オリゴフルクトース(8グラム/日)+マルトデキストリン(2グラム/日)を飲む
  3. 2'-フコシラクトース(2グラム/日)+マルトデキストリン(8グラム/日)を飲む
  4. オリゴフルクトース(8グラム/日)+2'-フコシラクトース(2グラム/日)を飲む

 

その上で、みんなの便サンプルを採取して腸内環境を分析し、 さらに様々な質問票で メンタルの状態も評価しております。

 

その結果は、 以下のようになりました。

 

  • どのオリゴ糖でも腸内のビフィズス菌が増えたが、 フラクトオリゴ糖を飲んだグループは、2'-フコシラクトースのみ 飲んだグループよりも菌数が増加した。

 

  • フラクトオリゴ糖は、単独または2'-フコシラクトースとの併用により、プラセボよりも抑うつと不安の症状を軽減した。ビフィズス菌の量と抑うつ、不安、 ネガティブ感情、 ストレスホルモンの量との間に逆相関が報告された。

 

  • 介入による食物繊維を除いた1日の平均食物繊維摂取量は20gであった。

 

そんなわけで、 やはりフラクトオリゴ糖はかなり見込みのある食物繊維だと言えそうですね。 私も定期的に「日本オリゴの フラクトオリゴ糖」などをヨーグルトの甘味づけに使ってたりますが、 こういう結果を見ると、 改めて今後も使っていこうと思いますね。

 

 

 

CBDで不眠症は治る?

このブログで、近ごろ何度か取り上げてきた成分と言えばCBD。 メンタルの改善や疲労回復などに効果があると言われていますが、 新しい研究(R)では、「不眠症にCBDは 効果があるのか?」 と言うポイントを調べてくれていて勉強になりました。

 

実験に参加したのは、中等度から重度の不眠症に悩む患者さん30名で、みんなに2週間のRCTを実施。毎晩、寝る60分前に150mgのCBDオイルを摂取する グループと、コーン油(プラセボ)を摂取するグループに割り付けたとのこと。

 

その上で、 みんなに 加速度計付きの腕時計を着用してもらい、 睡眠の状態をモニタリングしたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • CBDはプラセボと比較して、測定されたどの結果も有意に改善しなかった

 

ってことで、 世の中で言われていることとは異なり、CBDは特に睡眠に影響を与えてくれなかったらしい。うーん、残念。

 

もっとも、 だからといって CBDの効果が否定されたわけではなく、社交不安障害のある日本の10代(18~19歳)を対象とした4週間の試験(R)では、CBDはプラセボよりも不安症状を軽減したと 報告されていたりします。さらに、 また別の試験(R)では、不安障害のある参加者に12週間のテストを行ってみたら、 やはりCBDで不安症状が 減ったんだそうな。 そう考えると、不安が強すぎて眠れないような人には、 CBDは効果があるのかもしれません。

 

まぁ、正直なところ、今のデータ量では、 本当にCBDが睡眠と不安の改善に効くのかどうかを判断するのは 不可能でしょう。 予備的な報告はいくつかあるので、 気になる方はお試しいただいても良いかとは思いますが。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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