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今週の小ネタ:仕事の退屈をどうにかしたい、ネットでメンタルを病みたくない、仕事の行き詰まりをどうにかしたい


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

仕事の退屈を抑えようとすると死ぬぞ!という研究

退屈を抑えようとするな!って研究(R)がためになったので、内容をメモっておきます。これはノートルダム大学のチームによるもので、以下のような問題意識で研究を進めておられます。

 

  • 過去の調査によると、現代の職場では多くの人が「退屈」に苦しんでおり、一般的な労働者は、平均して週に10時間以上の退屈を感じている。

 

  • 「退屈」を解決する方法はあるのか? そもそも「退屈」は人間にとって自然な感情だが、解決しちゃっていいのか?

 

というわけで、現代人の多くは仕事中の退屈に悩んでいるけど、これってどうにかなる問題なのかってところを調べたんですね。

 

そのために、研究チームは3つの研究を行ってまして、例えば最初の実験では、さまざまな業界で働く共働き家族のデータを使用。みんなに複数のアンケートを行い、参加者の退屈と注意力、生産性の関係を経時的に調べたんだそうな。

 

そこで何がわかったのかと言いますと、だいたいこんな感じです。

 

  • 仕事の「退屈」を抑え込もうとすると、その悪影響が逆に長引いてしまう。

 

  • 参加者の多くは、退屈な仕事を"力づくで "乗り切ろうとしたが、これは退屈の悪影響を防げられないだけでなく、さらに後で退屈感を強める結果になった。

 

というわけで、退屈を抑えつけて無理に仕事をこなすと、さらに後で生産性が低下する傾向があったらしい。

 

研究チームいわく、

 

モグラたたきのように、あるタスクで退屈を抑えつけると、注意力や生産性の低下を招き、その後のタスクでそれが表面化する。逆説的ではあるが、退屈を抑えようとすることは、その有害な効果をより長持ちさせることになるのだ。

 

とのこと。基本的に、抑えた感情ってのはぶり返すものなんで、この結果は納得ですなぁ。

 

では、この問題をどうすべきかってことで、データを見た限りは、だいたい以下のようなことが言えそうであります。

 

  1. 退屈を認識して受け入れる:退屈を抑え込もうとせず、そのかわりに「はいはい。退屈が出てきたのね」ぐらいに認識して受け入れる。退屈は自然な感情なので、それ自体が問題ではないことを理解するのが、まず最初のステップになる。


  2. タスクを戦略的に組み合わせる:退屈なタスクと意味のあるタスクを戦略的に組み合わせることで、退屈の影響を最小限に抑えることができる。例えば、退屈なタスクの後には、興味深くやりがいのあるタスクを行うようにスケジュールを調整する。

 

こんな感じで、とにかく「退屈は悪だ!もっと仕事は楽しくないと!」とか思わずに、「この後でもうちょい楽しいタスクがあるからな……」ぐらいのテンションを保つのが大事。これを守らないと、逆に退屈の悪影響がブーストしちゃうので、くれぐれもご注意くださいませ。

 

 

ネットでメンタルを病まないためには構造化だ!

ネットはメンタルに良いのか悪いのか?」って議論は今も続いていて、このブログでもいろんなデータを紹介してまいりました。すべてを総合して、今の私の感想としては、

 

  • ネットは良くも悪くもないが、基本的にリア充が使うと幸福度は上がりやすい。

 

ぐらいに考えております。現実逃避のためにネットを使ったときには、メンタルへの悪影響が出てしまうんじゃないかって話ですね。

 

ただし、新たに出たメタ分析(R)は、ネットでメンタルを病む理由と対策について、わかりやすい視点を与えてくれていて有用でした。

 

この研究は、青少年とネットの関係を調べた52の個別研究をメタ分析したもので、おおよそ以下のような結果を出してます。

 

  • ネットに使う時間が長い人ほど、うつ病になりやすい。これは、インターネットに時間をつかうせいで、運動やコミュニケーションといった、メンタルの改善に役立つ活動の量が減るからである。

 

  • 最大の問題は、青少年ほどオンラインの利用が構造かされていない傾向があることである。この問題を解決するには、オンラインの時間を構造化するのが良い。

 

ってことで、「構造化されないネット利用こそが問題なのだ!」って結論です。構造化されていないネットの利用ってのは、簡単に言うと「無計画にだらだらとネットを使う」ことで、

 

  • YouTubeやTikTokでおすすめ動画を次々と見続ける。

  • 特定の情報を探しているわけでもなく、次々と異なるウェブサイトを渡り歩く。
  • 特に話すこともないのに、メッセージアプリやチャットルームでダラダラと会話を続ける。

 

みたいな行為を意味します。明確な目的と時間の制限を持たずにネットを使い、そのせいで時間がどんどん溶けていき、メンタルに良い活動に使う時間がなくなっちゃうのが一番の問題だってことですね。

 

研究チームいわく、

 

主な問題は、オンラインの時間がしばしば構造化されていないことだ。

 

プレイステーションでゲームをする時間など、一部の用途には境界線があるかもしれないが、インターネット利用に明確な構造を作るケースは少ない。

その代わり、親は子どもたちにインターネットをもっと節度ある集中的な方法で利用するよう促すことができる。そのような集中した時間は、マインドフルなネットとの付き合いを生み、テクノロジーとのより健全な関係をも育むだろう。

 

とのこと。ネットで病まないためには、とにかくメリハリをつけるのが一番ってことでして、「今日は10時から10分だけメールチェック」「23時間からLINEに集中して返事をする」「スマホのゲームは、仕事のタスクの間に5分ずつ行う」って感じで、すべての利用に明確な時間を決めておくと良いかもですね。

 

 

「仕事が行き詰まった!」には良いところもあるぞ!という実験の話

「仕事が行き詰まった!」って体験は誰にでもあるもので、私も本を書くときは1日に1回は行き詰まりを感じ、逃げ出したい衝動をこらえながらデスクに向かっております。

 

この感覚は、執筆で消耗する大きな原因のひとつなので、日ごろから「どうにかしたいなー」とか思ってたんですが、新しい研究(R)では、

 

  • 行き詰まりが問題解決能力を高めるのだ!

 

って結論になっていて、ちょっと癒されたりしました。行き詰まりってのは単なる障害ではなく、良いアイデアを生むために重要な役割を果たしているんだって話です。

 

ここでは856人を対象に4つの実験を行ってますが、全体的なデザインは似てまして、

 

  1. 参加者に「いろんな答えがある問題」を出し、制限時間内に答えを出してもらう。

  2. その際に、「行き詰まり」を感じた人と感じなかった人を比べ、どんな違いがあったのかを調べる

 

みたいになってます。この実験で使われた「いろんな答えがある問題」ってのは、以下のような感じだったそうです。

 

ある人物は、重厚な額に入った18世紀の名作絵画を所有しています。絵を吊るす紐は絵と同じくらい古く、太い3枚重ねの麻でできていました。

 

その人物は、紐を取り替えようと考えていましたが、その前に、お腹を空かせたネズミが絵の裏に忍び込み、紐を噛み切ってしまいました。ところが、しばらくは絵には変化がなかったので、その事実には、誰も気づきませんでした。絵が落ちなかった理由を簡単に説明してください。

 

このように、いかようにも解釈できそうな問題を投げかけて、参加者の反応をチェックしたわけっすね。

 

細かいところは省いて、4つの実験から得られる知見をまとめると、こんな感じになります。

 

  • 行き詰まりを感じた人ほど、問題を解決する確率は低かった(32%対15%)。
  • しかし、行き詰まりを感じたうえで問題の解決に成功した人は、より良いアイデアを思い出す傾向があった。

 

というわけで、行き詰まりは必ずしも悪いものではなく、ちゃんと問題を解決できるなら、より深い理解やイノベーションにつながる可能性があるらしい。これは自分の体験から考えても、納得できる感じですね。

 

ちなみに、「行き詰まり」で良いアイデアが生まれる理由は謎ですが、可能性としては、

 

  • 行き詰まりを感じると、問題解決のための新しい視点やアプローチを強制的に考えさせられる。そのせいで、問題を異なる角度から見られるようになる。

 

  • 行き詰まりを経験すると、強い感情が起きやすい(フラストレーションや不安)。これらの感情がモチベーションを高め、問題解決に対する集中力を強化するのかもしれない。

 

  • 行き詰まりの体験は、自己の思考プロセスを振り返らせ、「メタ認知」の能力を高める可能性がある。そのせいで、自分の解決策の有効性をより正確に評価できるようになるのかもしれない。

 

といったあたりが考えられるでしょう。そう考えると、行き詰まりを感じたときには、このネガティブな感覚をポジティブに捉え、「これは突破口を見つける機会なのだ!」と自分に言い聞かせるのが良さそうっすね。まぁ、これで多少は楽な気持ちになれるかな……。

 


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