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筋肉がめっちゃ育つと噂の「ドイツ式ボリュームトレーニング(GVT)」はどこまで有効なの?


 

ドイツ式ボリュームトレーニング(GVT)」っていう筋トレの方法があるんですよ。名前から察せられるとおり「とにかくボリュームをいっぱいやろうぜ!」って考え方のトレーニング法で、1つのエクササイズを10セット10レップ(合計100レップ)行うのが基本。1970年代にドイツの筋トレコーチが編み出した手法で、「めっちゃ筋肉が育つ!」と言われてるんですよ。

 

このブログを長く読んでいる方ならおわかりのように、筋トレで最も重要なのはボリュームでして、「重量 x 回数 (レップ数) x セット数」の数値が上がれば上がるほど筋肉は育ちやすくなるものなんですよ。

 

そこらへんについては、「筋トレでもっとも大事な「ボリューム」を完全に使いこなすためのガイドライン」をご参照ください。まぁシンプルに言えば、「いっぱいトレーニングするほど筋肉は育つよー」みたいな話です。

 

それならば、ドイツ式のボリュームトレーニングにもめっちゃ効果があるのでは?ってことで、新しいデータ(R)では、具体的な効果を調べてくれております。

 

被験者は過去に1年以上の筋トレ経験を持つ19人の男性で、

 

  1. ドイツ式グループ=1つのエクササイズで10セットを行う
  2. 普通の筋トレグループ=1つのエクササイズで5セットを行う

 

みたいに分類。両グループとも、6週間のトレーニングを週3回ずつ実施しまして、筋肉の大きさや体組成、筋力を評価チェックしたんだそうな。

 

実験で使われたエクササイズは、こんな感じになります。

 

SESSION 1 (月曜日)
エクササイズ 負荷 セット x レップ
ベンチプレス* 60% 10 または 5 x 10
ラットプルダウン* 60% 10 または 5 x 10
インクラインベンチプレス 70% 4 x 10
シーテッドロー 70% 4 x 10
クランチ 最大 3 x 20

 

SESSION 2 (水曜日)
エクササイズ 負荷 セット x レップ
レッグプレス* 80% 10 または 5 x 10
ダンベルランジ* 70% 10 または 5 x 10
レッグエクステンション 70% 4 x 10
レッグカール 70% 4 x 10
カーフレイズ 1RM近く 3 x 20

 

SESSION 3 (金曜日)
エクササイズ 負荷 セット x レップ
ショルダープレス* 60% 10 または 5 x 10
アップライトロー* 60% 10 または 5 x 10
トライセプスプッシュダウン 70% 4 x 10
バイセップカール 70% 4 x 10
ツイストシットアップ 最大 3 x 20

*被験者が10セット(10×10)群か5セット(10×5)群かに応じて、10セットまたは5セット×5。

 

 

でもって、結果はこんな感じになりました。

 

  • 筋肉の厚さ: どちらのグループも、筋肉の厚さの変化に有意な差はなかった。
  • 筋力の向上: 普通の筋トレグループのほうが、ドイツ式よりも大きな筋力増加を示した(ベンチプレスとラットプルダウンで有意に大きな増加を示した)。
  • 体組成の変化: 体組成の変化も、普通の筋トレグループの方に有利な傾向が見られた。

 

ということで、「ボリュームが多いほど良い!」って考え方に反して、 中程度のトレーニングボリューム(5セット)と、高ボリューム(10セット)を比べても、筋肉の厚みには関係がないかも……って結論であります。

 

といっても、これは必ずしも「高ボリュームのトレーニングが否定された!」って話ではないのでご注意ください。過去のデータとも照らし合わせれば、おそらく以下のことが言えるでしょう。

 

  • 1回のセッションで高ボリュームの筋トレを行うと、非常に疲労がたまりやすく、回復が追いつかなかったのだと思われる。そのため、 トレーニング頻度を2〜3回に分散させることで、回復を促進しながらボリュームを増やすのが吉。

 

 

  • また、初心者がドイツ式を行うと、負荷が多すぎて適切なフォームを維持するのが難しいのも問題。これにより、高ボリュームなトレーニングの効果が薄れるのだと思われる。

 

ということで、全体的に見れば、ドイツ式はトレーニング歴が長い人に向いた手法であり、素人が気軽に手を出すものではなさそうであります。

 

この研究を見ていると、いまやってるトレーニングの量で上達しているのであれば、それを極端に変える必要はなし。むしろ、48~72時間のうちに筋肉が回復できるよう、1つの筋群を少なくとも週2~3回トレーニングするというガイドラインを満たしつつ、ボリュームを上げていくのがいいんでしょうな。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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