【質問】日焼け止めが実は体に悪いってマジですか?
こんなご質問をいただきました。
いつも楽しく読んでます。ティム・スペクター博士が、日焼け止めに反対しているニュースを見ました。日焼け止めを毎日使うとビタミンDが足りなくなるというのです。
日焼け止めは紫外線を遮断するので、言われてみればありそうな気もします。鈴木さんはどう思われますか?
とのことで、日焼け止めは紫外線をブロックするので、体内でビタミンDが作られなくなっちゃうのではないか……という疑問であります。この懸念は、キングス・カレッジ・ロンドンの遺伝疫学教授であるティム・スペクター先生が発信したもので(R)、「ダイエットの科学」「双子の遺伝子」などの著作で有名な先生ですね。
確かに、人体が紫外線からビタミンDを作っているのは有名な話なので、スペクター先生の懸念にも一理ありそうな気がしてくるわけです。ご存じのとおり、私は日焼け止めをめっちゃ推奨している一方で、同時にビタミンDもめっちゃ推奨しているので、これが事実なら困ってしまうところなんですよ。日焼け止めは皮膚の老化を守って皮膚がんのリスクを下げてくれるけど、そのせいでビタミンDが減ったら、免疫システムがうまく働かなくなっちゃいますからね。
では、この問題に対して、私の見解をひとことで申し上げますと、
- まぁ心配しなくてもいいでしょう!
って感じです。というのも、日焼け止めの使用とビタミンD濃度の関係を調べた研究ってのは意外とたくさんありまして、全体的なデータを見てみると、「普通に使ってるぶんには、日焼け止でビタミンDが足りなくなることはないでしょう!」って結論になってるもんですから。
たとえば、スペインで行われた研究(R)では、スペインを訪れた観光客40人を対象に1週間の実験を実施。みんなにSPF15の日焼け止めを正しく塗るよう指導したあとで、体内のビタミンDをチェックしたんだそうな。
その結果がどうだったかと言うと、
- 日焼け止めは参加者を日焼けから守っただけでなく、体内のビタミンDのレベルも向上させた!
って感じだったんですよ。つまり、日焼け止めをしっかり使ったとしても、十分な量のUVBが皮膚に到達し、ビタミンDが生成されるわけですな。しかも、また別の研究(R)を見ると、大半の人は本当に必要な量の4分の1から3分の1程度しか日焼け止めを塗っておらず、8割以上の人は、日焼け止めを塗り直していないとのこと。そう考えると、思ったよりも大量のUVBが皮膚に届いているんでしょうな。
また、日焼け止めとビタミンDの関係を調べたレビューは2つありまして(R,R)、ひとつは13人の専門家が過去の文献をチェックしたもので、もうひとつは69件の観察研究の内容をまとめた内容になります。これらのレビューに含まれる研究のほとんどは、ほぼ同じ結論を示してまして、
- 日焼け止めの使用は、ビタミンDレベルに影響を及ぼさない!
- 日焼け止めの使用により、逆にビタミンDレベルは高まる!
って報告が大半なんですよ。しかも、データを見ていると、野外調査のほうが「日焼け止めとビタミンDには関係がない」と示したものが多いんで、現実世界での実態をよく反映していると思われるんですよ。
ただし、公平を期するために書いておくと、これらのレビューでは、「日焼け止めでビタミンDの量が減る!」と報告したものもいくつかあったりはります。ただし、これらの研究をチェックしてみたところ、太陽光ではなく独自の紫外線ランプを使ってまして、個人的には、現実の世界ではそこまで当てはまらないんじゃないかなーとか思ってたりします。
また、もうひとつの懸念点としては、上記のレビューでチェックされた研究のほとんどが、SPFが低い日焼け止めを使っているところです(SPF15以下)。通常は、「少なくともSPF30の日焼け止めを使おうぜ!」ってのがコンセンサスなので、ここらへんも気になるところです。
というわけで、個人的には、日焼け止めでビタミンDが生成されなくなることはないと思う次第。今後も私は気にせずにガンガン日焼け止めを使っていく予定であります。
その他、日焼け止めに関する基礎知識としては、以下のエントリをご利用くださいませ。