今週の小ネタ:海藻、めっちゃ体に良い説、筋トレの前後にプロテインを飲むのは意味がある? 腰の痛みは血糖のコントロールに問題がある説
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
海藻、めっちゃ体に良い説
海藻には、いかにも体に良いイメージがありますが、実際のところはどうなのかを調べたメタ分析(R)が出ておりました。
これは610人の男女(平均31~49歳)のデータをまとめた調査で、参加者のほとんどが過体重または肥満だったとのこと。分析の対象になったランダム化比較試験(RCT)は11件で、そのうち3件の研究は日本で行われております。
実験の期間は4~13週間で、用量は1mg~45g。サンプルサイズは実験ごとに25~97人だったとのことで、みんなに対して、海藻がどんだけ体に良いのかを調べた内容になってます。
では、分析の結果を見てみましょうー。
- 海藻をたくさん食べることで、以下のメリットを得られる。
- BMIが下がる(-0.40)
- 脂肪量が下がる(-1.5%)
- 総コレステロールが下がる(-7.7mg/dL)
- LDLコレステロールが下がる(-7.3mg/dL)
- 海藻に健康メリットがあるのは、以下の成分のおかげかもしれない。
- フコキサンチン
- フコイダン
- アルギン酸
- フロロタンニン
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海藻のメリットは、主に8週間の研究で得られた。
ってことで、このデータを見ていると、海藻を食べたり、海藻のサプリを使ったりすると、臨床的に意味があるレベルで脂肪が減り、悪いコレステロールも減らしてくれる可能性があるみたいっすね。
海藻で脂肪とコレステロールが減るのは、難消化性多糖類(要は食物繊維)、ポリフェノール、カロテノイドといった成分のおかげだと考えられております。臨床効果は認められないものの、食物繊維が肥満に有効だと考えられる証拠はたくさんありますしね。
もちろん大幅な脂肪やコレステロールの減少は期待できないけど、安全性は高いだろうし、ダイエットを考えている方は、海藻を増やしてみるのも一興でしょう(研究グループ間の潜在的なベースラインの違いが考慮されていないので、あくまで暫定的な推定値ではありますが)。とはいえ、海藻は重金属が多い傾向がありますんで、そこは気をつけてくださいませ。
筋トレの前後にプロテインを飲むのは意味があるのか?
「プロテインを飲むタイミングは筋トレの効果に影響するの?」という定番のテーマについて、また新たな検証(R)が行われておりました。世の中には、筋トレの直後にプロテインを飲む方が良い!みたいな考え方がありますが、これはどれぐらい正しいのかって問題ですね。
調査の対象になったのは健康な男性31名で、平均年齢は24歳。みんなだいたい3年の筋トレ経験を持っていたそうな。また、すべての参加者は、1晩の睡眠時間が少なくとも7時間だったとのこと。
実験の期間は8週間で、すべての参加者に筋トレをしてもらい、さらには高タンパク質食(1日あたり体重1キログラムあたり2グラム)を摂取するように指示。この時、参加者を2つのグループに分けております。
- 筋トレの前と直後に25グラムのホエイプロテインを摂取する
- 筋トレの3時間前と3時間後に30グラムのホエイプロテインを摂取する
筋トレの頻度は週4〜5回で、筋トレをしない日には、参加者は食事から1日に必要なタンパク質を摂取したとのこと。その上で、みんなの筋力と筋持久力の変化を評価したら、結果はこんな感じになりました。
- 筋肉の量、レッグプレスの筋力、チェストプレスの筋力、懸垂の回数、尿素窒素は、両グループともベースラインから増加したが、両グループ間に違いはなかった。
簡単に言えば、筋トレの直前と直後にプロテインを飲んでも、時間をおいてプロテインを飲んだときと、同じようにしか筋肉は発達しなさそうだぞってことですね。
つまり、この結果に照らすと「トレーニング後約1時間以内にプロテインを摂取すると筋肉が増える!」みたいな説は正しくない感じじゃないでしょうか。まぁ近ごろは「筋肉の適応を高めるためには、タンパク質のタイミングよりも、1日の総タンパク質摂取量のほうがはるかに大事だぜ!」って見解のほうが有力なので、個人的には今回の結果にもさほど驚きはないかなぁ…ってところです。
ただ、この文献だけだと、プロテインのタイミングと摂取方法に有意な差を生む閾値が存在するのかって疑問の答えはわからないので、今後はそこらへんを掘り下げてくれるとありがたいですなぁ。
腰の痛みは血糖のコントロールに問題がある説
「腰痛がヤバい人は血糖値がヤバいのかも?」みたいなデータ(R)が出ておりました。
これはベルギーに住む女性106人(年齢18~65歳、平均BMI26~27)を対象にした調査で、そのうち53人が慢性腰痛に悩んでいたらしい(少なくとも週3日ぐらい)。
実験デザインはランダム化クロスオーバー試験で、参加者は全員、11〜12時間ほど絶食した後で、ショ糖(高GI値の糖)50グラムかイソマルチュロース(低GI値の糖)50グラムを含む甘味飲料を摂取してもらったとのこと。その後、1日間のウォッシュアウト(休養)期間をはさんで、参加者が前回飲まなかった方の飲料を摂取したらしい。
その結果がどうだったかと言いますと、
- 慢性腰痛がない参加者と比べると、慢性腰痛がある人は血糖値の反応が悪化していた(中程度の効果)。
- 血糖値の反応の悪さと痛みの総合スコアとのあいだには、統計的に有意な違いはなかった。
みたいになります。まぁ、いずれのグループにおいても、食後2時間の血糖値が140mg/dLを超えた参加者はいなかったので、慢性腰痛の患者さんの血糖値がそこまで悪いとは言えないところです。
ただし、食後の血糖値の上昇は、糖を代謝する機能に軽いトラブルが起きているサインだし、これが進めば酸化ストレスやAGEsは増加するし、全身の炎症が増加するしで、こういったダメージが腰まわりの組織に関わる細い血管や神経に影響して、痛みの原因になっちゃう可能性は十分にあるかなーって感じですね。
ちなみに、糖尿病が体の痛みに関わるかも?って話は他にもあって、8件の研究をまとめたメタ分析でも、糖尿病の患者は腰痛、首の痛み、または背中の痛みの発生率が高かったと報告されてたりします(R)。まぁ、質が異なる横断的研究がベースなので、まだハッキリと言えるレベルじゃないですが、血糖値が高い人ほど体の痛みに悩みがちな傾向はありますんで、心当たりのある方はお気をつけください。