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アスリートは一般人より頭が良い!メタ分析で分かった認知能力の高さ


 

スポーツマンは頭が良い!」って結論のメタ分析(R)がおもしろかったんでメモしときます。

 

これはノースイースタン大学などによるレビューで、プロスポーツ選手と健常対照者(要するに一般人)の認知を比べた41の研究をピックアップ。5,339人(うちアスリート2267人)のデータをメタ分析して、アスリートと一般人の脳の使い方の違いをチェックしたんですな。なかなかデータ数が多めの分析で、よろしいのではないでしょうか。

 

その結果は、研究チームの予想どおり「プロスポーツ選手はいろんな面で一般人よりも頭が良い!」って結論で、詳しくは以下のようなポイントが優れていたらしい。

 

  1. 注意配分が優れている!:プロスポーツ選手は、いろんな情報がある中から重要な情報を素早く見つけ、それだけに集中する能力に優れていたとのこと。例えば、サッカー選手だったら、試合中にボールの位置や他の選手の動きなどを瞬時に把握して、すぐに「あっちにパスを出せばいい!」みたいな判断ができるわけですな。この判断を支えるのが「注意配分」の能力なわけですね。

    研究によると、プロスポーツ選手はこの分野で、一般人よりもかなり優れた成績を示したとのこと(効果量 g = 1.18)。



  2. 認知的柔軟性に優れている!:プロスポーツ選手は、試合やトレーニング中に刻々と変化する状況に柔軟に対応する必要があるため、適切な戦術や行動にすぐ切り替える能力が高くなるんだそうな。このような能力は認知的柔軟性と呼ばれ、この能力が高いと、新しい情報をスピーディに取り入れて、どんな状況でも適切に意思決定を行えるようになるらしい。

    多くの研究では、プロスポーツ選手は一般人よりも認知的柔軟性のテストで高い成績を収めており(効果量 g = 0.31)、認知面でも優れた柔軟性を持っていることが分かるとのこと。



  3. 抑制制御に優れている!:抑制制御ってのは、不要な反応や衝動を抑え、目標に向けて計画的な行動を取る能力のこと。プロスポーツ選手は、試合や練習のなかで、瞬時に衝動的な反応を抑え、適切な反応を選ぶ能力が発達していくんだそうな。例えば、バスケットボール選手がファウルを避けつつ、相手の攻撃を阻止しなきゃいけないような場面で、この能力が鍛えられるわけっすね。

 

って感じで、どうもスポーツマンってのは、全般的な認知能力が優れている傾向にあるらしい。研究全体を見てみると、特に注意配分や認知的柔軟性が高い傾向がありまして、どうやらスポーツってのは認知の発達に大きく役立つ可能性があるみたいっすね。

 

ちなみに、このようなスポーツのメリットは有酸素系やチームスポーツほど大きく、特にエリートレベルの選手(g = 0.94)やシニア層のアスリート(g = 0.91)は、認知機能が著しく高いことも示されてたりします。有酸素系は脳の発達に有利だし、チームスポーツの方が良い脳トレになりそうですもんね。

 

さらに余談ですが、この分析を読んでみると、スポーツで頭を良くしようと思ったら、おそらく以下のポイントに気を配るのが良さそうであります。

 

  1. 集中力系のトレーニング:スポーツ中に集中力を発揮するため、視覚や聴覚に対する感度を高めるトレーニングを取り入れる(目の前の物体を素早く追いかけるドリル、複数の音の変化を聞き分ける練習など)。


  2. 意思決定力のトレーニング: 実際の試合を想定し、複数の選択肢を比較しながら最適な行動を選ぶシミュレーションを繰り返し行う。また、実際の試合映像を見ながら「この場面ではどのプレイが最適か」を考える。


  3. イメージトレーニング:試合中の具体的な場面を頭の中で何度もシミュレートする。プレイの流れ、選手の配置、相手の反応を詳細に再現し、成功パターンを繰り返しイメージする。 自分の視点だけでなく、他の選手やコーチの視点からも状況をイメージし、多角的にプレイを想像すると吉。


  4. 認知的柔軟性トレーニング: 試合中の様々な状況を想定し、異なるシナリオに応じた行動計画を立てる練習を行う。例えば、「相手が守備的な戦術を取った場合」と「攻撃的な戦術を取った場合」で異なるプレイを考え、シナリオに応じて素早く戦術を切り替えたりとか。


  5. 実行機能の強化トレーニング:試合を想定した反復的なトレーニング(決まった動作を何度も繰り返し行い、無意識にでも正確なプレイができるようにする)を行う。例えば、サッカー選手が特定の状況でのパス回しやドリブル練習を繰り返したりとか。


  6. プレッシャートレーニング: 試合中のプレッシャーに耐えながら正確な判断を下す力を養うために、タイムプレッシャーやフィジカルプレッシャー(トレーニング中のスプリントやウェイトトレーニングを組み合わせた状態での意思決定練習)を加えた練習を行う。


  7. 社会的認知力トレーニング: チームスポーツに参加しつつ、他の選手の動きや意図を理解し、コミュニケーションを取りながら最適な行動を取る練習を行う。これには、チームメイトやコーチとの戦術会議や、シミュレーションを通じてのコミュニケーションが含まれる。

 

まぁ、これはあくまで私が「こういうことをしたら良さそうだなー」と思っただけでして、メタ分析の中で上記のトレーニングが推奨されているわけじゃないんで、そこはご留意あれ。といっても、スポーツが脳に与える影響を考えれば、上記のポイントを押さえておくのは良さそうだよなーと思った次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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