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うつ病にオメガ3は効くのか?36件のRCTをガチ分析したら見えてきた「本当に効く人の条件」

 

昨日に引き続き、今日もまたオメガ3の話題をひとつ。今回は、「うつ病にオメガ3って、効くの?」という素朴な疑問に、36件のランダム化比較試験(RCT)をもとに考えたガチ論文を取り上げてみます。

 

オメガ3といえば「体にいい油」としてもはや定番で、脳や心にもいいって話も昔からあったんですよ。なにせオメガ3は抗炎症効果が高いので、当然脳の炎症にも良いはずで、それならばメンタルも改善してくれるはずだって考え方ですな。

 

まずは今回の研究の概要をチェックしておくと、対象となったRCTは36件で、総サンプル数は3097人。論文の信頼性や偏り(バイアス)もチェックして、研究としてのクオリティは高水準だったとのことで、これは結論にも非常に期待が持てるんじゃないでしょうか。

 

では、さっそく分析の結果を見てみましょうー。

 

 

 結果1:効果は「弱めだけど確かにある」

最初に全体的なオメガ3の効果を並べてみると、こんな感じになります。

 

  • うつスコアの改善:SMD = −0.26(95%CI = −0.41 ~ −0.11)。つまり、全体として「オメガ3は、うつ症状の改善において弱めだけど有意な効果がある」のだと思われる。ただし「効く=劇的に治る」わけではないので過剰な期待はしないように注意。

 

  • 反応率(改善した人の割合):プラセボと差なし(RR = 0.99)

 

  • 寛解率(完全に良くなった人の割合):やや改善(RR = 1.17)

 

  • 副作用率:変わらず(RR = 1.07)

 

ということで、これらの結果をざっくりまとめてみると、「症状はちょっと軽くなるけど、完全に治る人が劇的に増えるわけではない」「副作用は特にない」「劇薬じゃなくて、体にやさしい補助ツール」くらいの印象っすね。おそらくなにがしかの効果はありそうなんで、メンタル改善のサポートに使うのは良さそうな気がしますが。

 

 

結果2:「効く人の条件」が明確になってきた

ただし、希望の光が見えるデータも出てまして、それが以下のようになります。

 

  • アジア人で、軽度〜中等度のうつ症状を持ち、他に薬を飲んでいない人に対して、オメガ3はとくに効果が出やすい。
  • 特に効果が出やすい摂取量は、EPA+DHAで1日1000〜1500mg。EPA:DHAの比率は1:1〜2:1が望ましい。
  • 期間は最低でも8週間は続けると、オメガ3の効果が出やすくなる。

 

これを見てみると、EPAの摂取量と寛解率に相関があったっぽいので、おそらく「EPA多め+8週間以上の継続」が、うつには効果的なのかもですな。

 

 

なんでオメガ3は効くんでしょうか?

ねんのため、「そもそもなぜオメガ3がうつに効くのか?」ってとこも、あらためて書いときましょう。オメガ3とメンタルの関係については、主に以下のような仕組みが考えられております。

 

  • 炎症を抑える効果が高いから → うつ病には脳内の慢性炎症が関わっているという説があるが、EPAは抗炎症作用が強いため、脳の健康にも良いのだと思われる。

 

  • 神経伝達のバランス調整に役立つから → セロトニンやドーパミンのシステムに関与し、気分の安定に関わる可能性がある。

 

  • 血液脳関門を通過して直接脳に作用するから → オメガ3は脳への直接アクセスが可能。これは他のサプリでは難しい。

 

ここらへんは、割とオメガ3の効果として有望なんですが、これは「誰にでも効くメカニズム」ではなく、体質や生活習慣によって反応がまったく異なる可能性があるので、そこはご注意いただければと思うわけです。

 

 

一方で、長期の研究では「効果なし」とするものもある

ちなみに、過去には「オメガ3は効かない」と結論づけた研究もありますんで、こちらの内容もざっくり知っておくと便利であります。たとえば、

 

  • 18 353人の男女を対象にした大規模追跡調査では、「うつの予防効果はなし」という結果が出ている(R)
  • 別のRCTでは、逆にうつ症状がやや悪化したケースも報告されている(R)

 

このへんの食い違いが起きる理由はまだ謎なんですけど、「オメガ3が“栄養的に足りていない人”には効果を発揮しやすく、もともと足りてる人には意味がない」って考え方が正しいのかもしれんですな。

 

 

まとめ:オメガ3は条件を満たせば効かないわけではない

いろいろ書いてきましたが、今回のメタ分析をひとことでまとめると、

 

  • 「オメガ3はそんなに効くわけでもない。でも、正しい条件を満たせば、確かにうつを軽減する力を持っている」

 

という感じになるでしょうな。とくに、薬をまだ使っておらず、軽いうつで悩んでいる方には、“最初の一歩”として十分アリな選択肢になるんじゃないでしょうか。自分の体質や生活状況に合っていれば、サプリが意外と強力な武器になることもありますからね。

 

気になる方は、EPAが多めに入った商品を選びつつ、最低8週間は続けることを目指してご利用くださいませ。どうぞよしなにー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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