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「元カレ・元カノを忘れるまでの時間」って、ほんとに“交際期間の半分”なのか問題

  

 

俗に「人間が失恋から立ち直れる時間は、交際していた期間の半分」などと申します。もちろん、すぐに吹っ切れる人もいれば、別れから何年かかっても感情を引きずるような人もおりましょうが、平均すればそんな感じじゃないか、って説ですね。たとえば、3年付き合ったなら1年半で心が癒えるようなイメージですな。

 

では、「失恋から立ち直るのにどれくらい時間がかかるのか?」ってことで、新しい研究(R)がそこらへんを掘り下げてくれておりました。

 

これはイリノイ大学などの研究で、少なくとも2年以上は真剣交際をしていた大人328人を対象に、別れたあとの心の状態を詳しく調べたんだそうな。参加者のプロフィールは、平均の交際期間が約5年で、別れてからの経過時間も約5年。いまは関係が完全に終了しており、死別ではない人だけを選んだらしい(つまり純粋な「失恋」)。

 

この研究で「これはフレッシュだ!」と思ったのは、「別れたあとの執着の度合い」をかなり細かく測定してるとこです。具体的には、

 

  • 元恋人との感情的な距離感(まだ頼りたくなるかどうか)
  • 元恋人との身体的・心理的なつながり
  • 安心感や支えとしての存在感

 

といった要素をアンケートで測り、それらが時間とともにどう変化していくかを見ていったわけですな。

 

で、その結果がどうだったかというと、

 

  • 平均で「別れて4年くらい」で、元恋人への執着は約半分まで低下していた

 

って結論だったらしい。「交際期間の半分で忘れられる」って説に比べると、かなりスローペースですな。要するに、5年付き合って5年別れてても、まだ“半分しか”気持ちが離れていないという人も割といるって話なわけで、個人的には「そんなに時間が解決してくれるってわけじゃないんだなぁ」って印象ですね。

 

ここで気になるのが、「なぜ回復に時間がかかる人とかからない人がいるのか?」という点ですけども、この差を説明するために研究チームは、毎度おなじみ「愛着スタイル」のフレームワークを使っております。愛着スタイルってのは、他人との関係の築き方に関する性格傾向のことで、ざっくり分けると、以下の3タイプがあります。

 

  • 安定型:他人との関係に安心感を持てるタイプ。バランスが良く、恋愛でも落ち着いた関係を築ける。

  • 不安型:見捨てられる不安が強く、相手に過剰に依存しがちなタイプ。連絡が来ないだけで不安になったりする。

  • 回避型:感情的な距離を置きたがるタイプ。自分のスペースを大事にし、他人に頼るのが苦手。

 

でもって、今回の研究では、とくに不安型の人は元恋人への執着が長く続く傾向があり、回避型の人は割と早く立ち直れることがわかったんだそうな。不安型の人は「またつながりたい!」と願う傾向が強いので、その結果として、元恋人に連絡を取ってしまったり、SNSをチェックしたりと、回復のプロセスを自分で止めてしまうみたいっすね。これは「いかにも」な感じっすね。

 

さらには、「元恋人を忘れるには、新しい相手を作るのが一番!」みたいなアドバイスも聞きますけど、今回の研究ではそこらへんも調べてまして、

 

  • 新しい恋人ができたことと、元恋人への未練の強さには相関がなかった

 

って結論だったんだそうな。つまり、次の恋に進んだからといって、過去がスッパリ切れるわけではないんですね。

 

むしろ、過去の傷を埋めるために恋を始めてしまうと、その新しい関係がうまくいかなくなるリスクすらあるわけで、これはちょっと気をつけたほうが良さそうであります。

 

逆に、意外と効果があったのが「子どもの存在」でして、

 

  • 元パートナーとの間に子どもがいる人は、最初は強い執着を示す傾向があるものの、その後の“感情的な切り替え”が早かった

 

という結果も出てたりします。おそらく、共同で子育てをするなかで「もう恋愛感情ではない」と現実を認識しやすくなるため、気持ちの整理もつけやすいんでしょうな。

 

ちなみに、今回の研究でいちばん明確だったのは「元恋人と“継続的に接触している”と、執着がなかなか消えない」って事実でして、これもわかりやすいっすね。別れた後でもLINEでのやり取りやインスタのストーリー閲覧をしてると、感情のつながりが維持されちゃうよーって話ですな。もちろん、全員が「完全に絶縁すべき!」とは言いませんが、少なくとも「なんとなく連絡してしまう」「SNSを眺めてしまう」ような状態が続いているなら、一度見直してみたほうが良さそうっすね。

 

ということで、今回の研究をまとめると、

 

  • 「交際期間の半分で忘れる」説はかなり楽観的。むしろ回復には数年単位の時間がかかる
  • 愛着スタイルによって、立ち直るスピードには大きな差がある。不安型の人は特に注意
  • 新しい恋は過去の癒しにはならない場合も多い
  • 子どもがいる場合は、感情の整理が進みやすくなる可能性あり
  • 元恋人との継続的な接触がいちばん回復を遅らせる

 

って感じっすね。まあ、このデータから“どうすれば”失恋から回復できるかまでは分かりませんが、「そもそも傷が癒えるまでには何年もかかるものなのだ!」と知っておくだけでも、心構えができてよろしいのではないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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