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“怖い上司”はなぜ出世するのか?の科学と、ヤバい上司の特徴リスト

  

 

どの世界にも、なんか怖い上司やリーダーってのはいるもんです。発言にいちいち威圧感があったり、ちょっとしたミスを強く責められたりして、その場の空気を張りつめさせるようなタイプですな。なんだかわかりませんが、こういうタイプに限って社内では評価が高かったり、出世の階段を登っていたりするから不思議なもんです。

 

ということで、新たにアラバマ大学の先生方が行ったレビュー研究(R)では、「マキャヴェリズム」(他人を操作し、支配しようとする性格傾向を持った人たち)が、リーダーとしてどれだけ優秀なのかを、500,000人超のデータでメタ分析を行っていてタメになりました。身近に嫌な上司がいる人は、なんらかの参考になるでしょう。

 

ここで取り上げられた「マキャヴェリズム的な性格」ってのは、以下のような要素で構成されております。

 

  • 反社会的傾向:他者を信頼せず、冷笑的な世界観を持つ
  • 適応的なスキル:リスクを察知する能力や、政治的に立ち回るスキルがある

 

つまり、「自分が損をしないよう、他人を利用してでも生き残るぞ!」ってのが、マキャヴェリ型リーダーの基本的なメンタリティなわけですな。このような考え方を持つリーダーは、当然部下にあえて厳しく接し、恐怖で人を動かすことで、組織のパフォーマンスを最大化させようとするんですよ。

 

では、この分析でなにがわかったかと言いますと、だいたいこんな感じです。

 

  • マキャベリタイプの人たちは、昇進する能力に長けていた。とにかく、上司の前で好印象を演出し、部下の不満を隠すのが上手く、見かけ上は有能に見えるのが原因だと考えられる。

 

  • しかし、マキャベリタイプのリーダーは、チームに深刻な悪影響を与えるのも確実で、特に部下への影響はかなり深刻。具体的には以下のような数値が示されている。
    • 虐待的なマネジメントの増加:28%
    • リーダーとの関係悪化:49%
    • チームワークや信頼の低下:19%
    • 部下の反抗や規律違反:15%
    • バーンアウト(燃え尽き症候群)のリスク上昇:12%

 

というわけで、マキャベリタイプのリーダーは、たんに出世がうまいだけで、部下のモチベーションやメンタルヘルスは破壊しまくるみたいっすね。幸いにもこのタイプのリーダーには会ったことがないですが、こりゃ嫌ですなぁ(サイコパス系は遭遇したことがある)。

 

しかし、困ったもんで、こうした「恐怖型リーダー」は、いまだに社会で支持されるケースが少なくないんだそうな。これは「成果さえ出していれば、リーダーはそれでいいのだ!」って考え方がいまもビジネスの世界には根強く残っているからで、誰も積極的に対処しないらしい。これもしんどい話ですね。

 

このタイプのリーダーを見抜くのは難しくないとは思いますが、念のためマキャベリタイプな人の行動特徴もまとめときます。身近に「あれ?あの人ってマキャベリスト?」と思うような上司がいたら、ぜひリストと照合してみてくださいませ。

 

 

マキャベリタイプのリーダーの特徴リスト

  1. 相手の感情や弱みを巧みに利用して、望む行動を引き出そうとする
  2. ゴマすり、裏工作、人間関係の操作など「政治的行動」に長けている
  3. 組織の利益よりも、自分の評価・昇進・権力確保を最優先に考える
  4. 「チームのため」と見せかけて、自分に有利なように状況を動かす
  5. 「目的のためなら手段を選ばない」という信念を持っている
  6. 嘘や裏切りも、必要であれば平然と使う
  7. 他人の気持ちに関心がなく、冷淡または冷酷にふるまう
  8. 部下の苦悩やバーンアウトにも無関心
  9. 「人間は基本的に利己的で信用できない」と考えている
  10. 「食うか食われるか」のゼロサム思考に陥りがち
  11. 社内のパワーバランスや敵味方の関係に敏感
  12. 潜在的な脅威を見抜くのが早く、先手を打つ行動をとる
  13. 上司や外部には「頼れるリーダー」や「カリスマ」に見えるよう演出する
  14. 第一印象は良く、人当たりも悪くない場合が多い(ただし裏がある)
  15. 威圧的な態度や過度な要求で、従わせようとする
  16. 罰や評価の切り下げをちらつかせ、部下をコントロールする
  17. 長期的な関係構築より、短期的な成果を優先
  18. 失敗時に支えてくれる部下や同僚がいない(信頼の貯金がない)
  19. 一定の成果を出している間は評価されるが、つまずくと一気に孤立する
  20. チームの士気が低く、離職やバーンアウトの温床になりやすい

 

 

ちなみに、このタイプが出世しやすいと聞くと絶望しそうになりますが、研究のラストでは「良い人が損をするとは限らないぞ!」って視点が強調されておりました。このメタ分析によれば、倫理的で、共感的で、誠実なリーダーってのは、確かに目立つ成果をすぐに出すのは難しい傾向があるんだけど、ジワジワと部下のモチベーションやチームの結束などの“見えない資産”を積み上げていくので、長期的にはマキャベリストを打ち負かす確率が高いんだそうな。ヤバいタイプの上司を見かけると、つい私たちは「なんでああいう人ばっかり出世するんだろう」とか思っちゃうもんですが、それはあくまで短期的な権力に終わる可能性のほうが高いわけっすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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