ストレスに打ち勝つための4つの「脱フュージョン」テクニック
「NHKのマインドフルネス特集が、瞑想ビギナーにはかなりオススメだった」にも書きましたが、近ごろの心理療法では「脱フュージョン」ってテクニックがよく使われます。
おもにACT(新型の認知療法の一種)でよく出てくる言葉で、ざっくり言えば「ネガティブな思考と自分を切り離して、否定的な感情に巻き込まれないようにする方法」といったところでしょうか。
たとえば、「自分は最低な人間だ」とか考えちゃった場合、そう思った自分の思考を客観的に見つめることで、「自分は最低な人間だ」→「もう誰とも会わない」→「家に引きこもろう」みたいなマイナスの連鎖に落ち込んでいくのを止めるのが目的。
で、最近読んでいたラス・ハリス「コンフィデンス・ギャップ」って本に、誰でもできる「脱フュージョン」のテクニックが出てましたんで、ちょっとメモしておきます。
1・「…と思った」法
NHKのマインドフルネス特集でも紹介された超基本的なテクニック。具体的には、
- 「俺は無能だ」とか「自分はダメな人間だ」と思ったら、そのフレーズを小さな声で口に出してみて、自分のなかにどんな感覚が生まれているかをチェック。
- 続いて「俺は無能だ」と頭のなかでくり返し、その後にすぐ「…と思った」とつけくわえる。
- さらに続けて、再び「俺は無能だ」と頭のなかでくり返し、その後にすぐ「…と思ったことに気づいている」とつけくわえる。この例だと、「俺は無能だと思ったことに気づいている」みたいな感じ。
この方法を使うと、一気に思考と距離を取れるようになり、ネガティブな感情に巻き込まれにくくなるらしい。
2・歌っちゃう法
ネガティブな思考を歌に変える方法。具体的には、
- 「俺は無能だ」とか「自分はダメな人間だ」と思ったら、そのフレーズを小さな声で口に出してみて、自分のなかにどんな感覚が生まれているかをチェック。
- 「自分はダメな人間だ」ってフレーズを、ハッピーバースデーのメロディに乗せて歌う(小声でも大声でもどちらでもOK)。
- 「自分はダメな人間だ」ってフレーズを、自分の好きな曲のメロディに乗せて歌う。
こちらも、ネガティブな思考と一気に距離が取れるようになります。というか、自分の行為がアホらしくなって、ネガティブ思考に落ち込むほうが難しくなる感じですかね(笑)。ただ、この方法はアホらしいことをするのがポイントじゃなくて、どんなネガティブな思考でも要はたんなる言葉にすぎないことを確認するのがキモであります。
3・アホ声法
ネガティブな思考をアホな声で言ってみる方法。具体的には、
- 「俺は無能だ」とか「自分はダメな人間だ」と思ったら、そのフレーズを小さな声で口に出してみて、自分のなかにどんな感覚が生まれているかをチェック。
- 「自分はダメな人間だ」ってフレーズを、アニメキャラの声で言い直してみる(クレヨンしんちゃんとか)。
- 「自分はダメな人間だ」ってフレーズを、再び別のヘン声で言い直してみる(黒柳徹子とか)。
歌っちゃう法と似たテクニックですね。どんなネガティブなフレーズでも、ヘンな声で聞こえると、やはり自分と思考の間に距離を作ることができるわけですね。
4・PCモニタ法
ネガティブな思考を想像のPCモニタに表示させてみる方法。具体的には、
- 「俺は無能だ」とか「自分はダメな人間だ」と思ったら、そのフレーズを小さな声で口に出してみて、自分のなかにどんな感覚が生まれているかをチェック。
- 目を閉じて、「自分はダメな人間だ」ってフレーズが、PCの画面にシンプルなフォントで表示されている様子を想像する。
- 「自分はダメな人間だ」ってテキストの色とフォントを、ピンクや黄色、明朝体や丸文字などに変えて遊んでみる。
- 「自分はダメな人間だ」ってテキストをシンプルなフォントにもどして、今度は1文字ごとにスペースを入れてみる。
- 再び「自分はダメな人間だ」ってテキストを、もとの状態にもどす。
- 「自分はダメな人間だ」ってテキストを画面の下に移動させ、カラオケの歌詞表示のように、左から右へ色が変わっていく様子をイメージする。
これは視覚的な能力が高い人に向いたエクササイズでして、やはりネガティブな思考に巻き込まれないようにする効果があります。
まとめ
そんなわけで、誰にでも使える基本的な4つの「脱フュージョン」テクニックでした。パッと見はアホらしい印象もありますが、あえてアホらしいことをすることで、ネガティブな思考に巻き込まれないのが重要なところ。どうにも嫌なことがあったときなどに、お試しください。
photo credit: Gattou - Lucie Provencher via photopin cc