天然魚 VS. 養殖魚 どっちが安全で健康にいいのか?
ナチュラル志向な方々のあいだでは、よく「養殖魚はアカン!」といった主張をみかけます。養殖の魚は天然の魚よりも健康に悪いのだ!という話であります。
具体的には、
- 養殖魚は体に良いオメガ3が少ない!
- 天然魚のほうが有害な重金属や汚染物質が少ない!
といったあたりがよく聞く話ではないかと。オメガ3についてくわしく知りたい方は「まずは徹底的にオメガ6を減らそうね」を、重金属については「魚にふくまれる水銀の害」なんかをどうぞ。
なかなか気になる話ですが、なんせ天然魚はお値段が高いのが難点。 食事をすべて天然魚でまかなうのは、現実的には不可能ではないのかと思う次第です。
というわけで、ここでは養殖魚と天然魚の差について考えてみようかと。
養殖魚のほうがオメガ3が多いこともある
まずはオメガ3の量について。自然で育った天然魚のほうが、いかにも健康的なオメガ3をたっぷりふくんでそうですが、実はそんな単純な話でもなかったりします。
たとえば2014年の調査(1)によれば、76種類の魚をチェックしたところ、
- 全体的には養殖魚のほうがオメガ3が多い傾向があった
- ただしオメガ3の量には差が大きく、魚100グラムあたり717〜1,533 mgの違いがあった
- もっとも、養殖魚のほうが飽和脂肪酸が多かった(といってもヤバいレベルではない)
みたいな感じ。なんと、いざ調べてみたら養殖魚のほうがオメガ3は多かったんですな。
とはいえ「養殖こそ最高!」とは言い切れないのでして、2014年のオーストラリア研究(2)などを見ますと、
- 養殖魚のオメガ3は、エサによってふくまれる量が激しく変わる
- 養殖魚のオメガ3とオメガ6のバランスは、5:1〜1:1までさまざま
って感じなんですな。養殖魚の育てられ方によっては、激しくオメガ3が少ないケースもあるわけですね。
このデータをどう見るかは個人の価値観によりますけど、わたしの場合は「まぁ最悪でも1:1のバランスは保てるからいいか」という感想です。「まずは徹底的にオメガ6を減らそうね」にも書いたとおり、オメガ3を増やすよりもオメガ6を減らすほうが重要なんで、最低でも1:1の比率がキープされてれば別にいいのかな、と。
養殖魚を食べても血中や脂肪には変化がなかった
続いて、養殖魚の汚染について。キレイな水で育った天然魚を食ってたほうが、有害な物質が体にたまらないんじゃないの?って説ですな。
ここで参考になるのが、2014年にベルゲン大学が行った実験(3)であります。42名の外来患者さんに養殖のサーモンをガンガン食べてもらった、おもしろい研究です。
で、30週間後の結果は、
- 血液中の汚染物質の量には変化なし!
- 脂肪組織にも汚染物質はたまっていなかった!
って結果だったらしい。どうやら養殖魚を食べたところで、たいした影響はないみたい。
研究者によれば、「確かに養殖魚には有害物質がふくまれるけど、その量は他の食品(穀類とか)とそんな変わらないし、コスメとかデオドラントに入ってるヤバい成分を気にするほうが先でしょ」とのこと。まことにごもっともかと思います。
ちなみに、2002年の論文(4)では、実際は天然魚のほうが隔離されてないぶんだけ化合物の量が多いって結果も出てまして、これまた気になるところ。重金属に関しても、「別に天然魚も養殖魚も水銀の量は変わらない」なんてデータ(5)があったりします。
このあたりは「まだよくわからん」としか言いようがないんですが、とりあえず天然魚だから安全!とは言えないのは間違いないかと。
まとめ
いろいろ書きましたが、ここまでの話をまとめると、
- オメガ3の量は天然魚のほうが安定しているが、養殖魚のほうが多いこともある
- 有害物質については、そもそも天然でも養殖でもそんなに心配はいらなそう
って感じです。以上のデータをふまえまして、個人的には「天然魚は高いから別に養殖魚でいいや!十分に美味しいし!」って結論になりました。特に日本の養殖技術は世界でも優秀(なはず)なんで、恐れずに食べていけばいいのではないかと。