仕事のための人脈作りはメンタルヘルスを損なうかもしれない
「一番大事なのは人脈作りだ!」などとよくビジネス書で言われますが、トロント大学が出した論文(1)によれば、仕事のために人脈を作ろうとするとメンタルヘルスを損なう可能性が強くなるらしい。
これは306人を対象にした実験で、まずは下心バリバリで人脈を作る場面(ワリのいい仕事をもらうために名刺をわたしてるシーンとか)をイメージしてもらったんですね。すると、人脈作りを想像したグループは、そうでないグループにくらべて2倍ほど、心身ともに薄汚れた気分になるケースが多かったらしい。
研究者いわく、
友情や感情的なつながりを求めて自然なコミュニケーションを取る場合とは違って、なんらかのメリットのために人脈を作ろうとすると、無意識のうちにモラルの感覚に傷がつく。これは、道徳的に見て自分が汚れたように感じる状態だ。この現象によって、わたしたちは人脈作りに臆病になり、仕事のパフォーマンスも落ちてしまう可能性がある。
とのこと。スケベ心で人とつきあうと、知らぬ間に精神的なダメージを受けたうえに、仕事の能力も落ちちゃうかもしれないんだ、と。 うーん、おそろしい。
ただし、一方で著者たちは、人脈作りの有効性も指摘しております。同じ論文には165人の弁護士を調べたデータも出てまして、積極的に人脈作りをする人はより金持ちになる傾向があったうえに、偉くなった弁護士ほど罪悪感を覚えることが少なかったらしい。この原因については、いったん人間関係の頂点に立てば罪悪感は減るってことかもしれないし、逆に罪悪感を感じない人間がトップに立てるんだって話なのかも。どっちが正しいのかは不明であります。
そんなわけで、間違いなく人脈作りは大事ではあるものの、メンタルヘルスを損なう可能性も大。このジレンマを解決するために、研究者たちは「たとえ仕事のための人脈作りでも、たがいにメリットのある関係を模索する」ことを提案しております。「惜しみなく与える者ほど成功する!」にも書きましたとおり、やっぱ他者のメリットを考えて行動するのが成功面でもメンタル面でもいいって話ですねぇ。
credit: Sean MacEntee via FindCC