腰痛を治すのに良い姿勢を心がけるのは時間のムダ!それでは、代わりにどこに注意すべきか?
https://yuchrszk.blogspot.com/2015/07/blog-post_22.html?m=0
こないだ「姿勢が悪いと腰痛になるって話は科学的には証明されていないんですよー」って話を書いたところ、「理由が知りたい!」とのご要望をチラホラといただきましたんで、もうちょい書いてみようかと思います。
前回の話をおさらいしますと、いまのところ「姿勢が悪いと腰が痛くなる」って説を立証したデータはほとんど存在しておらず、実際の腰痛はメンタルが原因で起きるケースのほうが多いって内容でした。完全に腰痛の常識には反しちゃってますけど、本当にそうなんだから仕方がない。
では、なんで悪い姿勢が腰痛の原因にならないのかと言いますと…
1 周辺組織のダメージが痛みを起こすとは限らない
姿勢が悪いと腰痛が起きるって説は、- 姿勢が悪いと腰や肩にストレスがかかる
- ストレスが組織(筋膜とか腱とか)に細かなダメージをあたえる
- 痛みが起きる!
ってメカニズムを想定しております。ぱっと見はとても正しい理屈に見えるんですけども、実際は周辺組織のダメージと痛みの関係はそこまで強くないんですよ。
このへんに関してはかなりの量の研究がありまして、実際、周辺組織にダメージがあっても痛みを感じない人はかなり多いんですね(1,2,3)。具体的には、たとえば半月板を損傷したり、肩の腱が裂けたり、椎間板ヘルニアがあったとしても、全体の20〜50%は痛みと無縁の暮らしをしております。
というのも、「痛み」はかなり複雑な現象でして(4)、周辺組織のダメージは小さな原因の1つでしかないんですよ。というか、30才を過ぎれば、たいていの人にはなんらかの組織ダメージがあるもんでして、あんま心配してもしょうがないところではあります。
2 姿勢の悪さが起こすダメージにはすぐ慣れちゃう
周辺組織にダメージがあっても痛みが起きないのは、ヒトの関節や筋膜や靭帯などが、すぐにストレスに慣れちゃうから。これは、俗に「デービスの法則」などと呼ばれてまして(5)、たとえば筋トレなどで重いものを持ち上がると、筋肉が育つと同時に、関節・靭帯・腱などもストレスに強くなっていくんですね。ハードな運動のストレスにも適応できるぐらいですから、姿勢が悪いぐらいのダメージでは激しい痛みが起きようがないんですな。
3 そもそも最適な姿勢は人によって大きく違う
ヒトの骨格は人によって大きく違います。もともと背骨が左右に軽く曲がってる人は多いし、生まれつき骨盤がゆがんでいる人も普通。整体の世界なんでは、ことさらに「足の左右の長さが違う!」とか騒ぐ傾向が強いですけども、そもそも人体は非対称なのが自然なんですね。実際、前回の話でもさんざんデータをあげたとおり、左右のアンバランスや猫背が痛みの原因にはならないことは間違いなし。各自の身長や骨の長さによっても最適な姿勢や動きは変わってくるので、ありもしない「理想の姿勢」を目指すのは時間のムダと言えましょう。
注意すべきは姿勢よりも動くときのフォーム
以上の理由から、姿勢の悪さを気に病んでもしかたないわけですが、それじゃあ代わりに何に注意すべきなんでしょう? 狩猟採集民の研究などを見ていて痛感する重要なポイントは、以下の2つです。- 普段の姿勢よりも運動時のフォームが大事:日常の姿勢が痛みと無関係だとはいっても、動作中のフォームに関しては別。たとえば猫背でイスに座り続けても周辺組織へのストレスはとても小さくてすみますが、間違ったフォームで筋トレや有酸素運動を行った際のダメージはくらべものになりませんので。仕事中に腰が曲がってるのに気づいても心配しなくてOKですが、何か重い物を持ったり、階段を駆け上がったりする際は、十分にフォームへ気をくばったほうがいいでしょう。
- とにかく頻繁に動く:なにせヒトの体は同じ姿勢をとり続けるようにデザインされてないので、座りっぱなしの状態が続くとメンタルが悪化して心理的な痛みの原因にもなっちゃう。これを防ぐためには、とにかく定期的に休憩をとって体を動かすこと。願わくばトレッドミルデスクがあれば最高ですが、そこまでできない方は20分おきのストレッチぐらいはしたいところ。
というわけで、いろいろ書いてきましたが、大きな結論を一言でいうならば、
- 良い姿勢ではなくて良い動きを目指せ!
って感じです。肩や腰の痛みを減らすために、ありもしない「良い姿勢」を目指しても意味がないので、良いフォームで動き続けるほうに意識を注ぐほうが生産的かなーと思うしだいです。どうぞよしなに。