狩猟採集民のように動く「パレオダイエットってなに?2015年版 #3」
https://yuchrszk.blogspot.com/2015/05/2015-3.html
パレオダイエットの基礎編と食事編に続いて、今回は運動編です。
狩猟採集民は1日にどれだけ運動してる?
基礎編にもちらっと書きましたとおり、かつての人類は獲物を追ったり野菜を集めつつ進化してきまして、1日の運動量はかなりのもの。つまり、ヒトの遺伝子には、ちゃんと毎日エクササイズするためのプログラムが組み込まれているわけです(1)。もちろん、200万年前の人類の運動量を推測するのは難しいんですが、幸いにも現代の狩猟採集民に関しては、かなり細かなリサーチが出ております(2,3)。部族によって細かな違いはあるものの、基本的にはかなり似てまして、たとえば…
- 基本的は裸足で自然を動きまわる
- 1日に6〜16キロぐらい歩く
- 消費カロリーの少ない活動と多い活動を1日おきに行う
- たまーに最大心拍数80%以上の激しい活動を行う
- 激しい運動のあとはしっかりと休む
- 重いものをもつ→長時間歩く→ガケを登るなど、さまざまなタイプの活動を日替わりで行う
- 大半の活動は1人ではなく集団で行う
といった感じ。この狩猟採集民の活動傾向に近づけていくのが、パレオなエクササイズのポイントになります。
現代人の運動に多すぎるもの、少なすぎるもの
ここでいったんパレオダイエットの基本をおさらいしますと、現代の暮らしとヒトの遺伝子には、以下のような“ズレ”が存在しております。- 少なすぎる:原始時代には豊富だったが現代には少ない
- 多すぎる:原始時代には少なかったが現代には豊富
- 新しすぎる:原始時代には完全になかったもの
この原則を運動に適用してみると、以下のようになるでしょう。
▼少なすぎるもの
言うまでもなく、現代人は慢性的な運動不足。2010年の論文(4)による推定では、狩猟採集民が1日に運動で消費するカロリーは800〜1,200kcalだとか。これは、現代人のおよそ3倍ぐらいの消費量であります(ただし一部の部族には例外もアリ)。「座りっぱなしの人は寿命が短くなる!」なんてデータもあるとおり、ヒトの体が運動不足に慣れていないのは間違いないところ。どうやら、進化のプロセスでヒトの体には「1日の最低活動量」が設定されたようで、この数値を下まわると一気に体とメンタルに不調が出てきちゃうみたい。
▼多すぎるもの
逆に現代で多すぎるのは、「運動しすぎ」と「屋内での活動」の2つ。まずは前者の「運動しすぎ」については、なんて話を以前に紹介したとおり。1日の最低活動量があるように、最大の活動量もおおよそ決まってまして、このレベルを過ぎて運動をすると、コルチゾール(ストレスホルモン)がドバドバ出て激しい炎症のもとになっちゃう。これは有酸素運動に限らず、筋トレでもHIITでもやり過ぎれば老化が進みます。
もう1つ、「屋外での活動」も重要な要素。「GO WILD」のジョン・レイティ博士いわく、ヒトの遺伝子には「バイオフィリア(生物や自然への愛情)」が組み込まれていて、自然のなかにいるだけで免疫が高まり、心身が健康になる傾向があるんだ、と。実際、外で行うエクササイズは室内運動よりメンタルにいいってデータもありまして、積極的にアウトドアを楽しみたいところです。
▼新しすぎるもの
これは、クッションの効いたシューズや、ジムの筋トレマシン、定期的に現れては消えていくエクササイズ器具などが当てはまるかと思います。もちろん、ジムのマシンに問題があるわけじゃないんですが、そもそもヒトの筋肉に必要な動きは限られてまして、基本的には「結局、パレオダイエット的に必要な筋トレは5種類だけなんじゃないか?説」で紹介したレーニングをやってれば十分。
狩猟採集民のように動く
以上の話をふまえて、パレオダイエット的なエクササイズのガイドラインは、こんな感じ。- とにかく歩くのが基本!歩数の目安は「『1日1万歩歩こう!』でどこまで痩せられるのか?」を参考に、慣れてきたら1日1万〜2万歩を目指す。
- 週に2〜3回のペースで筋トレ。種目は、ベンチプレス、プルアップ、デッドリフト、スクワット、腕立て伏せなどの基本的なものだけで十分。
- 週に1回は最大心拍数80%以上(息が切れて会話ができないぐらい)の有酸素運動を行う。HIITが手軽でオススメ。
- 長時間の有酸素運動はしない。激しすぎる筋トレもしない。
- できるだけアウトドアで、できれば裸足で、友だちと一緒に運動をする。
- 運動のあとはちゃんと休む。ちゃんと寝る。これは本当に大事。
といったところ。 いままで運動の習慣がない方は、とりあえず早足のウォーキングあたりから初めて、じょじょに強度を高めていくのがよいかと思います。それでは、みなさまどうぞよしなに。
credit: Christopher Michel