科学的に最強の「やる気を出す」方法は「ウソでもいいから前に進んでる感じを作る」
https://yuchrszk.blogspot.com/2015/09/blog-post_24.html?m=0
「前進の法則(The Progress Principle)」って本を読みました。「やる気を出すのに一番大事なのは『前進』だ!」って内容で、著者はハーバード大のテレサ・アマビール教授。専門は職場のモチベーション研究で、凄まじく面倒な実験を行ってきた偉い人であります。
どれぐらい大変かというと、7つの会社から238人のビジネスマンを集めて、毎日のモチベーションの変動を12,000時間も記録し続けたレベル。ここまで徹底してデータを集めた実験は珍しいかと思います。素晴らしいですね。
ウソでもいいから前に進んでる感覚を得るのが大事
その結論は明快で、 「自分にとって意味のある仕事が前に進んでいるとき、人間はもっともモチベーションが高まる」というもの。著者いわく、この結果を、私たちは「前進の法則」と名づけた。職場のモチベーションを高める要素はいろいろあるが、唯一ずば抜けてパワフルなのは仕事が前進することだ。
同じように、職場のモチベーションを下げる要素もいろいろあるが、最悪なのは前進が止まることーーすなわち、仕事の停滞だ。
とのこと。とにかく何でもいいから前に進んでる感覚が大事なんだ、と。
身近な例として有名なのは2010年の実験(1)で、参加者を以下の2つのグループに分けたんですね。
- 「コーヒーを10杯買えば無料で1杯をサービス」と書かれたスタンプカードを渡す
- 「コーヒーを12杯買えば無料で1杯をサービス」と書かれたスタンプカードを渡す。ただし、そのカードにはすでに2つのスタンプが押してある
つまり、どちらも10杯買わないと無料サービスを受けられないのは同じなんですが、実際は「コーヒーを12杯」のグループのほうがスタンプの貯まるスピードが速かったんだそうな。本当は前に進んでいなくても、前進してるようにさえ感じられればモチベーションは上がるわけですね。
ところが、アマビール教授が700人の管理職を調査したところ、95%は「従業員はおだてて金さえ払っときゃええんや!」と答えたとか(管理職のセリフは意訳です)。現実とのミスマッチはかなり大きそうですねー。
小さな勝利と小さな敗北
そんなわけで、「前進感」を出すためにアマビール教授がおすすめしてるのが、「小さな勝利」であります。デカいゴールに向かって突き進むんじゃなくて、1日単位ぐらいで達成できそうな目標をこなしていくわけっすね。仕事のモチベーションは、プロジェクトの前進に大きく左右される。どんな小さな前進でも構わない。「小さな勝利」には驚くほどの効果があり、「小さな敗北」にも驚くほどの悪影響がある。
とのこと。「大きな目標」は危険が多いのは昔から有名な話でして、つまりは西川きよし師匠の名言「小さなことからコツコツと」が科学的に証明されたとお考えいただければよいかと(笑)
「小さな勝利」はスポーツ心理学ではおなじみの発想で、たとえばオリンピックの水泳選手なんかも使う定番の方法であります。「今週はバックストロークの改善だけを目指し、次の週は息つぎのテクニックに集中する!」といったように、週単位で細かな達成感を積み上げていくんだそうな。
ちなみに、アマビール教授の統計によれば、最初は「こんなの大したこっちゃない」と思ったことの28%が、実際には後でモチベーションを大きく左右する要素になったとか。その意味でも、小さな勝利をみくびるとヤバいことになりそう。
また、具体的な方策としては、
- 1日に最低20分は自分にとって最重要な作業をする時間を持つ
- どんな小さなことでもいいから、自分の前進レベルを記録したノートをつける
そんなわけで、本作は「やる気」について厳密な検証を行ったナイスな一冊でありました。たぶん邦訳も出るんじゃないかな。
The Progress Principle: Using Small Wins to Ignite Joy, Engagement, and Creativity at Work
posted with カエレバ
Teresa Amabile,Steven Kramer Harvard Business School Pr 2011-07-19