糖尿病薬の「メトホルミン」がダイエットと若返りの秘薬だったりする(かもしれない)件
https://yuchrszk.blogspot.com/2015/09/blog-post_33.html?m=0
メトホルミンのダイエット効果とアンチエイジング効果に関するご質問をいただきました。
糖尿病薬のメトグルコ250mgを飲めば痩せられると聞きました。他にも寿命を伸ばす効果があるとか? 糖尿病でも何でもないのですが気になります。本当でしょうか?
とのこと。メトグルコは「メトホルミン」って糖尿病薬の日本での商品名でして、50年ぐらいの歴史を持つ定番のおクスリであります。
糖尿病への効果に関しては昔から定評があったんですが、ここ数年は「痩せられる!」や「若返る!」といった話も出てきまして、かなり注目されてるんですね。
ダイエット薬としてはそこそこ有望
では、まずはダイエット効果のほうから見てみましょう。有名なのは2013年の実験(1)で、肥満体型の参加者154名たちにメトフォルミンを飲んでもらったんですね。全員の血糖値は正常で、糖の代謝には問題はなし。それぞれのBMIによってメトフォルミンの量は調整されております。
すると、6ヶ月後の結果は、
- 平均で 5.8 ± 7.0 kgぐらいの減量効果が出た
- もっとも体重が減った参加者は-35kgで、逆に13kg体重が増えた参加者もいた
- 全体の20%の参加者には減量の効果が見られなかった
といった感じ。個人によるバラつきは大きいものの、ガッツリと減量効果が出る人もいるっぽいですね。というのもメトホルミンには、
- 脂肪酸の合成をジャマする作用
- 食欲を減らす作用
の2つがありまして、ダブルでダイエットに役立ってくれるんですな。
もうひとつ、2008年の系統的レビュー(2)もありまして、過去に行われた12件の実験をまとめております。そのうち5件の論文で「メトホルミンで体重が減った!」って結論が出ていて、数字の幅は2.9〜9kgぐらい。
研究者いわく、
糖尿病ではない肥満の若者に対して、メトホルミンは有効なダイエット薬になるかもしれない。しかし、どの実験も参加者の数が少なく、実験デザインも弱いため、その解釈には限界がある。
とのこと。まだまだ効果を断言するには弱いものの、肥満の解消に役立つ可能性は高そうです。
アンチエイジング薬としてもまぁまぁ有望
次にアンチエイジング効果について。こちらは2014年にセルメタボリズム(一流の科学誌)が「『若返りの秘薬』トップ4」のひとつに挙げたこともあり、かなり信頼してよいかと思います。メトホルミンがアンチエイジングに効くのは、AMPキナーゼという筋肉の中にある酵素を活性化するから。これはエクササイズやプチ断食でも活性化する酵素で、細胞内の古いタンパク質を分解してくれるんですね。俗にいう「オートファジー」であります。
もうひとつ興味深いのが2014年の研究(3)で、メトホルミンを飲んでいる糖尿病患者は、メトホルミンを飲まない健常者よりも寿命が長い傾向があるんだとか。すごいですねぇ。
しかしメトホルミンは気軽に買えない。ではどうすれば?
というわけで、ダイエットとアンチエイジングの両面でメトホルミンには効果がありそう。ただし、ご存じのとおりメトホルミンは処方薬なので、糖尿病の方でないと手に入れられないのが難点であります。いちおう個人輸入でも買えますが、
- 健常者に対しては長期的な安全を確認したデータがない(糖尿病の患者に対しては10年のスパンで安全が確認されている)
といったデメリットがありまして、おすすめしかねるところです。結局、体内での働きはプチ断食やHIITに近いんで、こっちを実践したほうが安全で健康的な気も。
また、「プチ断食やHIITはツラいから嫌!」という方にはベルベリン(黄檗)をおすすめしておきます。本来は整腸剤として使われる生薬なんですが、メトホルミンと同じくAMPキナーゼを活性化する作用がありまして(4)、近い働きはしてくれるのではないかと(ダイエットに効くかは不明ですが)。
Thorne Research, ベルベリン-500