カビだらけの家やオフィスで命が削られる「シックハウス症候群」の恐怖
家にいるだけで気分が悪くなる「シックハウス症候群」
こないだ「シックハウス症候群」について軽く書いたところ、「もっと詳しく!」というご意見をいただきましたんで、もうちょい書いてみます。
「シックハウス症候群」は、その名のとおり、自分の家やオフィスに漂う悪い細菌によって気分が悪くなる現象のこと。腸内フローラのダメージで体調が激しく悪化する話は何も書いてますが、人体の外側の細菌環境が悪くなっても、やっぱりいろんな病気の原因になっちゃうんですね。
ここ数年の研究を見てると(1,2)、シックハウス症候群が原因で起こる症状としては、
- めまい
- 疲労
- 頭痛
- 集中力の低下
- のどや目のかゆみ
- 咳
- 熱
- 寒気
などがある模様。要するに、あらゆる病気のもとになるわけですね。
シックハウスは微生物の種類が少ない
この現象が起きる理由はいろいろですけども、例えば、
- 室内の洗いすぎ
- 洗剤の使いすぎ
- 体の洗いすぎ
- 換気のしなさすぎ
- タバコの煙
- 揮発性の有機化合物(インクとかペンキとか)
などのせいで微生物の種類が減っちゃって、
- 外に出なさすぎ
- 土や砂に触れなさすぎ
- 建物の換気をしなさすぎ
などのせいで微生物との接触回数も減ってしまうのが大きい感じ。なかでも大きいのは「カビ毒」で、壁や天井の裏に繁殖したカビが毒性の物質を吐き出すんですね。
シックハウス症候群の研究で有名なシューメーカー博士の研究(3)だと、一般的なビルや家屋の50%はカビ毒の問題を抱えてるそうな。すえて臭いが感じられなかった場合でも、意外とカビ毒の害は蔓延しているらしい。
究極的にはカビの生えた建物から逃げるしかない
2008年にロンドン大学が出したレビュー論文(1)によると、
高度に近代化した国ではライフスタイルが大幅に変わり、環境内の微生物や寄生虫との接触が減った。これらの生物は、人類の進化のうえで免疫系の生理反応をつかさどる重要な役割を果たしてきた。
現在、先進国では免疫機能の不調が増えている。アレルギー症状の増加だけでなく、慢性的な炎症を適切に抑えることができなくなっているのだ。これらの自己免疫疾患、神経炎症疾患、アテローム性動脈硬化、うつ病などの発生は、炎症性のサイトカインによるものが大きい。
とのこと。とにかく、体の外側の微生物も非常に大事なんだ、と。
これは実際のデータでも明確に出ていて、
- カリフォルニア大学が行った調査によれば、104名の幼児を調べたところ、1才になる前にさまざまな種類の細菌やハウスダストに触れた子どもほど、3才でぜん息を発症する確率が格段に減ったそうな(2014年,4)
- 331人の幼児を調べたところ、生まれた直後にシックハウスで育った場合、9才以降に肥満になる確率が高まった(2009年,5)
あたりが有名なところ。どんなに正しい食生活をしていても、ちゃんと毎晩グッスリ寝ていても、シックハウスやシックオフィスで暮らしてたら水の泡かもしんないらしい。うーん、怖い。
この問題に取り組むには、究極的には自然が多い場所に移り住むしかないわけですが、とりあえずは換気と観葉植物、できればペットを飼ったりして対策していきたいところです。もちろん、除菌グッズはなるべく使わない方向で。
ただし、いくら換気をしても建物全体がカビだらけだとどうにもならないので、その時は引っ越すしかないかと思われます。どんなに健康に気をつけても不調が治らないという方は、シックハウスの可能性も視野に入れていただければと。