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生まれつきの天才よりも上の判断力をつけるためのトレーニング方法

Advice  

 知性は鍛えられないが合理性なら鍛えられる

だいぶ前に「知性の高さはほぼ遺伝で決まる!」みたいな話を書きました。人間の知能はほぼ生まれつき決まっており、「どんなに努力しても生まれつき頭がいい人には勝てない」なんてデータもあったりするんですな。

 

 

どうにも切ない話ですが、遺伝子に抵抗してもしょうがないので、自分の知性レベルは受け入れていくしかない感じ。あくまで、過去の自分を乗り越えるために努力していくのがベストであります。

 

 

ただ、近ごろの実験(1)を見てたら、生まれつきの知性は天才には勝てないものの、「合理性」に関してならトレーニングで向上させられるかもしんないらしい。

 

 

合理的な能力とは、要するに偏見にとらわれない判断ができること。「コイン投げで裏ばっか出たから次は表だ!」とか、「B型だから大ざっぱな性格!」のような判断をしないってことですな。

 

 

というと、「知性があれば合理性も高いんじゃないの?」と思いがちですが、そう簡単にはいかないのがおもしろいところ。たとえば2008年にトロント大学が行った実験(2)によれば、知性と合理性はあんま関係がないらしいんですな。

 



 

 

 

どんなに頭が良くても思い込みには勝てない

この実験では、およそ500人の参加者のIQを調べたうえで、以下の文章を読んでもらったらしい。

 

リンダは31歳、独身でとても頭が良く、はっきりとものをいう。大学では哲学を専攻し、人種差別や社会正義の問題に関心を持ち、反核デモに参加していた。

 

そのあとで、リンダの現在の職業は以下のどちらが正しいかと思うかを尋ねたそうな。

 

  1. 銀行員
  2. 銀行員で、女性解放運動もしている

 

当然、1の「銀行員」と答えるほうが合理的なわけですが、およそ80%は「2番」と解答。しかも、どっちの答えを選ぶかは、IQの高さとはまったく関連してなかったんですね。

 

 

つまり、どんなに頭が良い人だろうが、思い込みをベースに、適当な判断を下しちゃう傾向からは逃れられないわけですな。それだけ人間は思い込みに弱い生き物なんですねぇ。

 

 

ビデオを見ただけで正しい判断ができるようになった

が、ここで「合理性は鍛えられる!」って事実を示したのが、最初のほうで紹介した研究であります。

 

 

こちらはボストン大学の論文で、約200の男女を対象に2つの実験を行ったもの。まずは全員の合理性レベルをテストしたうえで、「人間はこんなに不合理な生き物なんですよー」って話を教えてくれるビデオを見せたんだそうな。

 

 

 その動画は、具体的には以下のような感じ。「認知のゆがみ」が起きる原因をざっくり説明してくれる、とても基本的な内容になっております。

 

 

 で、ビデオを見てから2カ月後に再び合理性テストを行ったところ、知性の高さとは関係なく、全員の成績がハッキリとアップしてたみたい。ほんの30分ほどのビデオを見ただけで、2カ月も効果が続いたってのは凄いもんですなぁ。

 

 

バイアスを学ぶだけで判断力がアップ

研究者いわく、

 

正確な意思決定は、ビジネスの世界でも日々の暮らしでも重要な要素だ。トレーニングで合理性が鍛えられれば、世の中に多大なメリットをもたらすだろう。

 

とのこと。知性はどうにもならないにしても、正しい判断を下すための能力ならアップできるってわけですな。

 

 

ビデオを見る限り、基本的なバイアスの仕組みについて学ぶだけでも効果があるみたいなんで、当ブログのエントリで言えば、

 

 

 あたりもトレーニングの一助になるかも。さらにガッツリ訓練したければ、「ファスト&スロー」や「予想どおりに不合理」や「明日の幸せを科学する」あたりを読んでみるといいんじゃないでしょうか。ひとつよしなに。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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