スマホの「睡眠改善アプリ」って本当に眠れるようになるの?問題
睡眠アプリは本当に役立つのか問題
「スマホの睡眠アプリって本当に使えるの?」って論文(1)がおもしろかったんでメモ。
これはニューヨーク大学の研究で、スマホ用に提供されてる「睡眠系アプリ」から369本を分析したんですな。その種類は様々で、たとえば「Sleep Cycle alarm clock」みたいに睡眠の質を計測してくれたり、「Deep Sleep」みたいにグッスリ寝るための瞑想ガイドをしてくれたり、「Sleep Genius」みたいにNASAの研究をベースに眠りやすい音楽を流してくれたりとか、とにかくいろいろ。
そのなかから研究者が何を調べたかと言いますと、「アプリで良い睡眠の習慣は身につくか?」ってポイントです。
アプリで人間の行動は変わるのか?
いくらアプリが睡眠の質を計ってくれようが、実際にユーザーが「やっぱ睡眠不足は良くないな!よし、ちゃんと時間を決めて寝るぞ!」って気持ちにならなきゃ意味がないですからねぇ。そこまでのフォローをしてくれるアプリはあるのか、と。
というのも、これまでの研究って睡眠の計測機能の精度を調べたものばっかで、総合的に眠りの質が上がるかどうかをチェックしたケースはゼロだったんですよ。その点で、なかなか貴重なデータではないかと。
人間の行動を変える3ポイント
で、アプリの評価のために使われたのが、「フォグ式消費者行動モデル」ってやつです。これはスタンフォード大学で提唱された理論で、人間は以下の3つのポイントが刺激されないと良い習慣が身につかないんだ!というもの。
- モチベーション(Motivation)
- 行動に必要な能力(Ability)
- 行動を起こすトリガー(Trigger)
この区分けには異論もあるものの、多くの実験で「まあ正しいでしょ」と言われてるんで、とりあえずこのモデルをベースにするとわかりやすくていい感じ。
といっても難しい話ではなくて、
- アプリが科学的なデータをもとに睡眠の大切さを教えてくれる
- 睡眠のゴールを達成するためのリマインダー機能がついている
- SNSで互いの睡眠の質を高め合うような仕組みがある
- 習慣化の正しい方法についてレクチャーしてくれる
みたいなことです。たんに睡眠をチェックするだけじゃなくて、消費行動モデルにもとづいた設計にしないと、本当に役立つアプリにはならないんじゃないの?という。
いまのとこ良い習慣化にまで効くアプリは少ない
その結果、何がわかったかと言いますと、
- エビデンスベースでちゃんとユーザーが行動を起こすように設計されたアプリは34%だけ
- ユーザーに行動をうながすような解説(「1日6時間以下の睡眠が続くと脳機能が低下し…」みたいなやつ)が入っていたものは42%
- いっぽうで、ゴール設定(86 %)、時間管理(77%)、セルフモニタリング(66%)などの機能は、多くのアプリが再読していた
みたいな感じ。要するに、多くのアプリは記録や計測の機能ばかりに気を配っていて、ユーザーの行動を変えるような仕組みがないんだ、と。まあこのへんは睡眠アプリ以外にも言えることで、私も前から「ダイエットとかフィットネスアプリって行動のサポート面は甘いよなー」とは思っておりました。
ただ、この研究を見ると、「フォグ式消費者行動モデル」に沿って作られたアプリほど人気が高い傾向があったようなんで、デベロッパーの方はぜひ参考にしていただきたいなー、と。いっぽで私たちユーザーとしては、「Sleep Cycle alarm clock」のような定番アプリを使いつつ、睡眠の科学的なエビデンスについては自分で補強していくしかないよなーと思う次第であります。