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偽のカフェイン飲料でコミュ障が改善!という不思議な話

Caffeine

 

 コミュ障は会話のスキルがないわけじゃない

2015年に「コミュ障の人は別に社交スキルが低いわけじゃない!」って話を書きました。ざっくりおさらいすると、

 

  • コミュ障な人に「これから会話の上手さをテストしますよー」と伝えると、コミュニーケーションスキルの点数は下がる
  • しかし、コミュ障な人に「これから一般常識テストしますよー」と伝えると、コミュニーケーションスキルは下がらなない

 

みたいな話でした。つまり、コミュ障の人は会話のスキルがないわけじゃなくて、たんに考えすぎて緊張しすぎちゃうだけなんだ、と。

 

 

これは個人的にも納得できる話で、リラックスすれば普通にコミュニーケーションできるはずなのに、不安のせいでぎこちなっちゃう人が多いわけですな。練習では上手いスポーツ選手が、本番では失敗ちゃうのと同じような感覚と言いますか。私も他人との会話で緊張しがちマンなので、この結果はよくわかりますなぁ。

 



 

 コミュ障を治すメンタルテク「心理的誤帰属」

で、ひさびさに上記の論文(1)をあらためて読んでたら、「コミュ障に特有の不安を解くには?」のヒントが書いてありましたんでメモしときます。

 

 

これは86人の学生を対象にした実験で、不安のせいでコミュニーケーションが不得意な人に「心理的誤帰属」をベースにしたテクニックを使ったんですね。これは、いまの気持ちになった原因を間違える現象で、いわゆる「吊り橋効果」なんかが代表的な例。本当は吊り橋を渡ってドキドキしてるだけなのに、「これは恋だ!」とか思っちゃうみたいな。

 

 

(ニセの)カフェイン飲料でコミュニーケーションが上手くなった

さて、実験ではどのように誤帰属を使ったかと言いますと、

 

  • 会話がヘタな人に「カフェインがたっぷり入ったドリンクです」といって、ただの炭酸水を渡す

 

って感じです。なんとも子供だましのようですが、ただの炭酸水をカフェイン飲料だと思い込んだ参加者は、いつもよりコミュニーケーションがスムーズになったというんですな。

 

 

カフェインへの誤帰属がコミュニーケーションを円滑に

なぜニセのカフェイン飲料で会話が上手くなったかというと、

 

  1. 「カフェインをたくさん飲んだ!」と思い込む
  2. 会話で不安になって心臓がドキドキする
  3. 「このドキドキはカフェインのせいだ!」と解釈する
  4. 会話が上手くいく!

 

って流れです。本当は会話の不安感でドキドキしてるんだけど、本人はカフェインに「誤帰属」をしてるんで、コミュニーケーションの妨げにはならないんですね。おもしろいですねぇ。

 

 

「誤帰属」を現実に活かすには?

では、このテクニックが現実にも応用できるかといえば、意外とイケるんじゃないかと思うわけです。というのも、2013年のハーバード論文でも、「不安になったら『これは興奮してるだけだ!』と自分に言い聞かせると上手くいく」って結果が出てたりしますからね。

 

 

このケースでは、自分の不安感を「本当はワクワクしてるのだ!」って方向に「誤帰属」を誘導してるわけです。つまり、「いま自分は会話で不安になってるんだな…」とわかっていた場合でも、強引に「誤帰属」さえ起こしちゃえば当座はしのげるはず。

 

 

もちろん、これはあくまで短中期的な戦略なので、長期的にコミュ障を改善していきたいときは「アクセプタンス」の気持ちを育てるほうが吉。短期的には「誤帰属」で対処しつつ、長い目ではコミュニーケーションの不安を受け入れるのが最上の方法でありましょう。

 

 

まとめ

ってことで、この実験のポイントをまとめると、

 

  • いまコミュ障に悩んでいる人は、別に「会話術」みたいな本を読む必要はないよ!(本当はスムーズにコミュニーケーションする能力があるはずなんで)

 

  • まずは自分のコミュニーケーションを妨げているのは「不安感」だと気づくのが大事だよ!

 

  • 会話の不安は「誤帰属」でなんとかできる可能性が高いよ!

 

って感じでしょうか。コミュニーケーション系の本を読むなら、自分の不安を取り扱う方法をトレーニングしたほうがいいよーってことでひとつ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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