「あの作家」の小説を読むと頭が良くなるらしいよー
以前に「小説を読むと共感力が鍛えられるよー」って話がありまして、あらためてフィクションの力に注目が集まってる昨今。さらには「小説を読むと寿命が延びる」なんて研究も出てまして、いろいろとおもしろそうなんですな。
でもって本日は、「小説で頭が良くなるんじゃない?」ってデータ(1)の話など。
これはブリティッシュコロンビア大学の研究で、40人の学生を2つのグループに分けております。
- カフカの「田舎医者」を読んでもらう
- 研究チームが書いた、普通の「田舎医者」を読んでもらう
「田舎医者」はカフカの短編で、虫歯に苦しむ若者を歯医者が救おうとするものの、どんどん意味がわからない展開になっていく作品です。岩波文庫の「カフカ短編集」に入ってますんで、興味があるかたはどーぞ。
その後、参加者には「人工文法タスク」って認知テストをやってもらったんだそうな。これは架空の単語(X M X R T V)をいくつか見せたうえで、なんとなく文法を推測してもらうという作業になっております。なかなか難易度が高そうですねー。
で、テストの成績はこんな感じです。グレーのバーがカフカの「田舎医者」を読んだグループで、白いバーが普通バージョンを読んだグループ。
ってことで、そこそこハッキリした違いが出てまして、カフカを読んだ直後からどうも脳の働きが良くなったっぽいんですな。
この現象を研究チームは「ミーニング・スレット(意味の脅威)」と呼んでおります。どういうことかと言いますと、
意味の脅威とは、根本的に意味をなさないものに触れることだ。意味がわからないものにさらされると、人間の脳は周囲の環境から別の構造を探すように努力をし始める。いったん構造が見つかれば、意味の脅威からは逃れることができるだろう。
って感じになってます。つまり、
- 意味がわからないものを読む
- 脳が「なんとか意味を見つけねば!」と焦る
- 脳の機能がアップ
- 頭が良くなる!
みたいな流れです。プチ断食で細胞が活性化するのと同じようなもんで、あえて心に負荷をかけて脳をブーストさせてるわけっすな。
カフカの小説を読んだグループは、架空の単語からより多くの意味を探そうとした。あきらかに、カフカのおかげで構造を探すモチベーションが高まったのだ。
ここで大事なのは、カフカを読んだグループは、テストの正確性も上がっていたことだ。他のグループよりも有意にパターンを探すのがうまくなっていた。
ってことで、シュールなものに触れると、ランダムに見えるもののなかから特定のパターンを見つけるのがうまくなるらしい。ここらへんは創造性の向上なんかにもつながるポイントですな。
そんなわけで、脳に気合を入れたい人はシュールな作品に触れてみるとよさげ。そう考えると、昔からデビッド・リンチが大好きなわたしは勝ち組ですな(笑)