運動の前後にストレッチをするべきか否か?問題 2018年バージョン
運動前にストレッチをするべきか否か?問題
「運動前にストレッチをするべきか否か?」ってのは、意外と難しい問題だったりします。おそらく現時点では、
- あまりスポーツ科学にくわしくない人=え?運動前はストレッチが常識でしょ?ケガしちゃうよ!
- ちょっとスポーツ科学にくわしい人=いや、運動前のストレッチは逆にパフォーマンスを下げちゃうんだよ!ダメダメ!
みたいな派閥にわかれるんじゃないでしょうか。
ストレッチが役に立たないかも?ってのは有名な話で、事実、過去の多くの系統的レビューでは、
- 運動前に体を伸ばしてもケガの予防にはならない
- さらに、筋肉を伸ばしたせいで微細な傷がつき、逆に運動パフォーマンスは落ちる
って結果が出てたりもします。ここらへんのデータはなかなか強力でして、いまのところは、
- とりあえず運動前のストレッチは止めとく
- でも、体の柔軟性も欲しいから、運動しない日にストレッチはしとくかな……
ぐらいが落としどころになってるかと思います。なかなか悩ましいもんですな。
が、このストレッチ問題について近ごろ新たな進展(1)がありまして、ちょっとおもしろいんですな。
15秒のストレッチは逆に筋力が上がった
これはガジ大学の実験で、15人のアスリートを4パターンのストレッチをしてもらっております。
- 各部位が15秒ずつのストレッチ
- 各部位が30秒ずつのストレッチ
- 各部位が45秒ずつのストレッチ
- ストレッチをしない(コントロール群)
って感じ。つまりこの研究チームは、「ストレッチの時間によって効果が変わるんじゃないの?と考えたわけですね。
この発想には一理ありまして、過去の系統的レビューでも「30秒以下のストレッチなら問題ないかもよ?」って結論になってたりしますから。この問題をちゃんと調べてくれたのは、まことにありがたいですな。
さて、そこから参加者には筋力テストを指示して、どんな違いが出るかをチェックしたところ、
- 45秒のストレッチはみんな筋力が激減(0%〜-11の範囲)
- 30秒のストレッチも筋力がそこそこ減少。ただし足の筋力はちょっと上がった(+4%〜-8の範囲)
- 15秒のストレッチは逆に筋力が上がる傾向が!(-1%〜+7の範囲)
だったんですな。なんと、ストレッチで逆に筋力が上がる現象が確認されております。
もっとも、この実験では「ゆっくりと筋肉を動かす場合」でしか計測してないんで、果たしてスプリントのような運動でも同じ成果が出るかは不明。なので、筋トレの前にかるーく静的ストレッチを行うのは、逆にパフォーマンスを上げてくれるのかもですな。
長期のストレッチで筋力アップ
で、ストレッチについては同時期に別の実験(2)も行われていて、こちらもおもしろい結果になってます。
これは早稲田大学などの実験で、20人の男性を2つのグループに分けたんだそうな。
- 足をグイッと伸ばすストレッチを週3回やる。ストレッチは1回30秒で、これを6セット(いずれも運動の後)
- ストレッチをしない
でもって6週間後に筋力テストをしたら、以下のような違いが出ました。
- ストレッチをしたグループは最大筋力と、素早く筋力を発揮させる能力(RFD)が20%近く向上
- ただし、ストレッチをしたら筋持久力が20%近く下がっちゃった
うーん、これまた悩ましい。要するに、筋肉は強くなったんだけど、筋肉のスタミナは下がってしまったわけですねぇ。
まとめ
ってことで、いろいろ書いてきましたがざっくりまとめると、
- 短時間のストレッチなら運動前に行うのもアリなのかも(ただし筋トレ限定?)
- 運動後のストレッチであれば、長期的には筋力アップに役立つのかも(ただし筋肉の持久性には問題がある?)
ってとこでしょうか。ちなみに、後者の考え方については過去の系統的レビューでも「定期的なストレッチは長期的に運動パフォーマンスを上げる可能性がある」って結果がいくつか出てますんで、さほど目新しい話でもないかもしれません。
ってことで個人的には今後も「ストレッチはやるけど、運動とは切り離したタイミングで日々のルーチンに組み入れる」って感じで使って行こうかと思った次第です。どうぞよしなに。