「多読」をやれば英語がグングン上手くなる!はどこまで本当なの?
英語多読についてのご質問をいただきました。
いつも楽しく読んでます。20代後半の男ですが、まじめに英語の勉強をやろうと考え始めました。そこで最初に多読からはじめようと思っているのですが、これは科学的に効果が示されているものなのでしょうか?パレオさんは多読はしたことがあるのでしょうか?
とのこと。多読ってのは文字どおり「とにかく洋書を読みまくろう!」ってタイプの学習法で、
- 激しく簡単なレベルの洋書を読む
- わかんない単語が出ても辞書は引かない
- 少しでもおもしろくないと思ったら読むのを止める
ぐらいのやさしいルールでできております。さらにくわしい手法に興味があれば、「英語多読法」などをご参照ください。
私が英語の勉強を始めたときはまだ「多読」って言葉がなかったんですが(笑)近いことはやってまして、「Penguin Readers」を100冊ぐらいまとめ買いして毎日読んでたりしましたね。貯金がなくなって死にそうでした。
ただし、当時はわからない単語があるたびに辞書を引いてたんで、「ペン型スキャナー辞書」みたいなのを使ってたりとか。それがいまじゃKindleですぐ辞書が引けますから、まことにいい時代になったもんです。
といったボヤキはさておき、多読については「英語多読法」の古川先生を中心にリサーチが進められていて、だいぶ信頼にたる成果が出てるんじゃないかと思います。そのすべてを紹介するのは不可能ですが、一例としては2007年の観察研究(1)を見てみましょう。
これは日本の中高生を対象にした研究で、参加者を、
- 中学校に入ってから多読をはじめた生徒
- 小学生のころから多読をはじめた生徒
- 多読をまだはじめてない高校生
の3グループに分類したうえで、英語の学力テスト(BACE)をやってもらったんですな。
そこでどんな傾向が出たかと言いますと、
- 多読をやってる中学生は、中2の段階で多読をしてない高校1年生より成績がいい!
って感じだったんですな。多読をやってた中学生は、読解力、文法、リスニング、ボキャブラリーのすべてにおいて60%ぐらい高校生をうわまわってたんだそうな。こりゃ結構な違いっすね。
さらに2011年には実践研究(2)も行われていて、これまたおもしろい成果が出てたりします。こちらは89人の大学生を対象にしてまして、全体を3つに分けております。
- 昔ながらのリーディングクラスを受ける(文法を説明しつつ読解のポイントを伝えるような方法)
- ほぼ多読学習をメインに行う
- 多読とシャドーイングを行う
3番目のシャドーイングってのは英語の音声を聞きつつ、その内容をリアルタイムで復唱していく手法のこと。これまた英語教育の世界では定評があるテクニックですな。
その結果、もちろんどの手法でも英語の読解力は伸びたんですが、多読+シャドーイングの伸び率が一番高かったんですよ。データを見てると昔ながらの授業も効果は出てまして、そこまで「多読はすごい!」って結論にはならないんですけど、いろんな勉強法と組み合わせて使うと効果が高そうではあります。
ってことで、結論としては、やはり「多読」はオススメできる学習法のひとつかと存じます。個人的な体験でいうと、多読をしまくってもスピーキング力はそこまで上がらなかったものの、読解力とリスニングについてはメキメキと力がつきましたねー。