催眠療法ってちょっと怪しいけど本当に意味があるの?という話
催眠療法、どうよ?
催眠にかんするご質問をいただきました。
催眠療法はどう思われますか?自分はうさんくさいイメージがあるのですが
とのこと。確かに催眠ってメディアだとエンタメのネタみたいな扱いなので、あやしげな印象はありますねぇ。「指を鳴らすとワサビが辛くなくなります!」みたいな。
ただ、実は「催眠"療法”」の場合は昔からリサーチが進んでまして、良いデータも多い分野ではないかと思います。
催眠療法はダイエットに効く
たとえば代表的なのは1995年のメタ分析(1)で、質が高い18件のデータをまとめて「催眠ってダイエットに効くの?」って問題を調べてくれたんですな。具体的には、
- 認知行動療法でダイエット
- 認知行動療法+催眠療法でダイエット
って感じで効果をくらべてたりします。認知行動療法は「ものの見方」を変えてストレスを減らしていく治療法で、昔から食べ過ぎへの効果も認められてたんですが、そこに催眠療法がくわわったらどうなるのか?を調べたんですね。
その結果はわりとハッキりしていて、
- 催眠療法と認知行動療法を組み合わせたほうが、認知行動療法だけの場合より体重は減る!
- 催眠療法+認知行動療法は18カ月のフォローアップでもリバウンドが少ない!
という傾向が確認されたんですよ。具体的には、催眠+認知が4〜6カ月の時点で10kgぐらい体重が減ったのにたいして、認知行動療法だけの場合は5kgぐらい。およそ倍ぐらいの差が出てますねぇ。
もっとも、「催眠単体だとどうなの?」ってのはまだあやふやな面が大きくて、2009年のメタ分析でも「データが少ないけど見込みはあるんじゃない?」ぐらいの結論ではあります。まぁ効果はあると思いますが、まだはっきりとは言えないところ。
催眠療法は痛みにも効く
でもって、もうひとつ2011年にハートフォード大学が行なったレビュー(2)では、「催眠は痛みに効く!」って結論が出ているのもうれしいポイント。こちらは信頼性が高い13の文献をあつかっていて、
- 通常の薬物療法に催眠をプラスすると、肉体労働者の痛みがより大きく改善したよ
とのこと。こちらでもやはり「催眠は優秀なサポート役として有効」」って論調になってますね。
ちなみに、さらに直近のレビュー論文でも「催眠は不安に効く!」って結論ですし、とりあえず「そんな怪しいものでもないし、標準治療と使うといい感じですよー」ぐらいには言えるんじゃないかと。
ただし催眠療法はテレビの催眠術とは違う
もっとも、ここでいう「催眠」ってのは、テレビでやってるような「指を鳴らすと眠くなります!」みたいなのとはちょっと違うんでご注意ください。データによって催眠の手法が違うので定義が難しいんですけども、おおよその手順は以下のようになります。
ステップ1 リラックスフェイズ
カウンセラーかガイド音声にしたがって体の力を抜いていく段階。ここらへんはボディスキャンみたいに全身のパーツに意識を向けたり、シンプルに腹式呼吸をくり返してみたりといった作業を4〜10分ぐらい行うケースが多め。
ステップ2 誘導フェイズ
ここからは、カウンセラーの指示に従ってイメージの世界に遊んでみる段階。たとえば高所恐怖症をなんとかしたいなら、「まずは自分がミカン箱の上に乗ったところをイメージしてー」ぐらいレベルからスタートして、「次は机の上に乗ったところを……」「ビルの屋上から下を見てるところを……」みたいに少しずつ難易度を上げてったりとか。
流派によって違いはあれど大筋はこんな感じでして、たとえば「寝たまんまヨガ」などをやったことがあれば「あー、あれか」と思うのではないでしょうか。この点では、ガイド瞑想や一部のマインドフルネス瞑想によく似てるんですな。
まとめ
ってことで話をまとめると、
- 催眠療法にはそれなりに意味があると思われる(特に標準治療とセットで行うとよさげ)
- が、単体でどれぐらいの効果を持つのか?と言われれば未知数(事実、「たんにプラシーボの可能性は否定できないよねー」みたいな批判も根強い)
といったようになります。私としては、認知行動療法のサポート役として使うぶんには大いにアリじゃないかと思いますねー。