DNAの働きに異変を起こすかもしれない「子供時代の7つの逆境」
毒親や虐待が子供の成長に良くないのは当たり前で、大人になってからも深い傷を残し続けるのは間違いないところです。
が、新しい研究(R)では話がさらに進んで、「子供のころの逆境はDNAレベルで異変を起こす!」って結論になっててちょっと怖いです。
これは774人の児童を調べた長期研究で、「3歳より前の時点でツラい目にあった子供はDNAのメチル化に異常が起きるのではないか?」ってポイントをチェックしたもの。メチル化ってのは、すごーくざっくり言っちゃうと、
- 遺伝子のどのスイッチをオンにしてオフにするか?
みたいな現象だとお考えください。DNAがメチル化されると、遺伝子の働きが制御されるんですよ。この働きによってヒトの細胞は正常に働くことができまして、もし異常が起きれば癌にかかりやすくなったり老化が進んだりといった事態が起きちゃうんですよ。
研究者いわく、
幼少期はとても感受性が高い時期なので、なんらかの困難に見舞われることで、異なったDNDのメチル化が起きやすい。
とのこと。3歳までの人間は特にメチル化の異変が起きやすいので、この時期に激しいストレスにさらされると、大人になってもメンタルを病みやすくなるんじゃないか、と。事実、過去のエピジェネティックス研究なんかでも、幼少期のストレスが遺伝子に消えない傷を残す傾向が指摘されてたんですよね。
で、分析の結果は研究チームの読みどおりで、メチル化の異変を引き起こしやすい7つの逆境が浮かび上がったんですな。具体的には、以下の通りです。
- 親や保護者からの虐待
- 母親の精神病
- 片親の家庭で育った
- 両親が離婚と結婚を繰り返した
- 家庭の経済的なストレス
- 貧しい地域に住んでいた
- 身体的な虐待
非常にキツい要素ばかりですが、なかでもDNAのメチル化異常に結びついていたのは「貧しい地域に住んでいたかどうか?」で、その次に「家庭の経済的なストレス」が続き、身体的な虐待が3番手だったそうです。こうして見ると、金銭的なストレスってのは幼少期においてもかなり重要みたいっすね。
子供時代の激しいストレスはDNAに影響を与え、成人後にも逆境に弱いメンタルを形作ってしまう。
今回の発見は、子供時代(特に生後から3年間)が、メンタルヘルスの生物学的な発達に関わる重要な時期であることを示している。政府や教育団体などは、逆境にさらされる子供たちに早期の介入を行えば、長期的な鬱病の発症リスクを減らせるかもしれない。
ってことで、幼少期にツラい目にあった人にはなかなかヘビーなデータではありますね。
とはいえ近年では、食生活や運動、心理療法などでもエピゲノムが変わることはわかってきてますんで、幼少期にハードな体験をした方でもまだまだ希望はありましょう。いったん異常を起こしたDNAを恨んでも仕方ないので、やれることを端からやってくしかないでしょうなぁ。