筋トレに関する2020年1月の小ネタ:ビーツの筋トレ効果、カーボローディング意味ある?、男女の筋トレの疲れにくさ
日ごろから筋トレについていろいろ書いてますけど、「ひとつのエントリにするほどじゃないけど、ちょっとおもしろいなー」って論文がいくつかたまってきましたんで、まとめてご紹介しておきます。
ビーツジュース、どこまで運動のパフォーマンスアップに効くの?問題
一酸化窒素は運動に効くよ!って話は何度かこのブログでも書いている話。体内に一酸化窒素が増えると、血管が広がって血のめぐりが良くなるんですよね。
で、体内に一酸化窒素を生み出すパワーが強そうな食材と言えば「ビーツジュース」です。このジュースにふくまれる硝酸塩が一酸化窒素を生み出して、近年では「脳の血流が上がった!」なんて報告も出てたりします。まぁこれで頭が要なるとは思わんですが、とりあえず健康に良いのは間違いなさげ。
というわけで、新たに出たレビュー論文(R)では、ビーツジュースや硝酸塩のサプリがどれぐらいの効果を持つの?ってあたりを100件超のデータをまとめてざっくりした結論を出してくれてます。具体的にどんな感じだったかと言いますと、
- 多くの文献で、硝酸塩は筋力とパワーを増強することが示されている(3〜5%の改善)。これは、筋肉の収縮機能に直接的な効果があるからだと考えられる
- 運動をしない男性には、硝酸塩は血圧の低下をもたらす(効果は小さいけど)
- もしかしたら、硝酸塩の効果には性別による差があり、一般に男性よりも女性のほうが血圧と運動パフォーマンスへの効果は低いかも。これは、もともと女性のほうが血中の硝酸塩レベルが高いからだと考えられる
って感じでして、あんま運動の経験がない人には、やはりビーツジュースは良いのかもなーとか思いました(よく運動をしている人でも同じ効果を得られるかは、データ数が少ないので良くわからない)。また、これを見る限りは女性へのメリットは少なそうなんで、そこらへんもご注意いただきたいところですかねー。
カーボローディング、意味あるの?問題
カーボローディングってテクニックがありますわな。簡単に言うと、
- ボディビルダーが、コンテストの前に大量の糖質を摂取する
- 糖質の働きにより筋肉の水分量が上がる
- 水分が増えたおかげで筋肉が増えてハリが出たように見える!
みたいなテクニックです(ランナーが試合の直前に炭水化物を食べるテクニックも同じ名前で呼ばれますが、今回は除外)。
で、近ごろ「カーボローディングで本当に筋肉の見た目はよくなるの?」ってのを調べた珍しい論文(R)が出ていておもしろかったです。
これは24人のビルダーさんを対象にした研究で、
- 競技の直前に糖質を8〜12g/kg摂取してエネルギーバランスをプラスにする
- 競技の直前に糖質を5g/kgまで増加させて維持カロリーを保つ
という2つのグループを作ったうえで、「どれだけ体型が変わったか?」ってあたりを7人の第三者にジャッジしてもらったんだそうな。その結果がどうだったかと言いますと、
- 糖質を8〜12g/kg摂取したグループのみ筋肉の胴回りと厚さが増加し、第三者も「体格がベースラインから改善した」と評価した
- 糖質をそんなに摂取しなかったグループには体型の改善は見られなかった
だったそうで、やっぱりカーボローディングには筋肉の見た目をよくする働きがあるみたいっすね。まぁこの結果を一般人が日常に応用するのはムズいんですけど、他人に筋肉を見せねばならないような場面が訪れたら試してみてください(笑)
男女では筋トレの疲れ方が違うのでは?説
「女性は男より筋トレの疲労に強い!」みたいなデータ(R)が出ておりました。
これは9名の男性と9名の女性を対象にした研究で、みんなを7回ほどラボに呼び、ニーエクステンションをしつつ神経筋の機能を評価したそうな。そうしたところ、
- 全体的に女性のほうが高い強度の筋トレを続けられる傾向があったが、どれだけ疲れにくいかを1つの数字で表すことは不可能(疲労感の評価は関わる因子が多すぎるので)
- 変数の組み合わせによっては、女性の疲れにくさは男性の2〜3倍に達する可能性がある
- このような男女差は、運動と回復の両方の間の血流の違いが関わっているっぽい
だったそうで、どうも女性のほうが疲れにくいみたい(どの指標を使うかでだいぶ違いが出そうですが)。その点で女性のほうがボリュームを稼ぎやすかったりするんですかねぇ。