辛い腰痛を改善するには「職場のあれ」を直すべし!というメタ分析のお話
腰痛の治療は難しい!ってのはよく聞く話で、過去にも「いまの腰痛治療はデタラメだらけだし専門医でも誤診が多い」なんて話を書いたことがありました。なんせ現時点ではプロでも腰痛の原因はよくわからんぐらいなので、そもそも対策の立てようがないんですよね。
といったところで、新しいデータ(R)は「自由な職場は腰痛を減らす!」って結論になっていておもしろいです。
これは過去の腰痛研究から19,572人分のデータを抜き出したメタ分析になっていて、まず研究チームの問題意識からどうぞ。
慢性腰痛の有病率は世界的に約23%であり、もっとも一般的な慢性疼痛および筋骨格系疾患である。特に所得が高い国では、社会的・経済的コストも大きい。
日本でも腰痛に悩む人は多いですが、その割合は世界的に23%にも達してるんだ、と。こりゃすごい数字ですな。
で、その原因としてよく言われるのは、
- 仕事場で不適切な姿勢をずっと取ってるから?
- 長時間すわりっぱなしだから?
みたいなことがよく言われるんですけど、ここで著者たちは「メンタルの要因」を重視しておられます。
職場における心理社会的なストレス要因は、筋骨格系の症状と一貫して関連する。
ってことで、職場のストレスが腰痛のトリガーになってるのでは?ってポイントが強調されておりました。このブログでもよく「腰痛は脳の誤作動だ!」なんて話を紹介してますが、確かに現代人がもっとも心理的な負担を感じやすいのは仕事場でしょうからねぇ。
著者のリサーチによれば、職場のストレスと腰痛について調べたデータは18件ありまして、具体的にどんな問題をチェックしたのかと言いますと、
- 仕事量:仕事が多すぎないかどうか
- 仕事のコントロールレベル:仕事の進め方や内容を自分で自由に調整できるかどうか
- 社会的支援:同僚や上司から心理的なサポートが得られるかどうか
- 報酬:自分の成果に対して正当な見返りがあるかどうか
の4つです。職場のストレスといえば「公平性」や「価値観」の問題もありそうですが、今回の研究では該当するデータが見つからなかったとのこと。また、全体的な研究の質は「低い」から「中程度」ぐらいになってまして、そこまで精度が高い内容ではない点はおふくみおきください。
それでは、以下に結果をざっとまとめてみますと、
- 仕事量が多いととにかく腰が痛みやすい(OR=1.32)
- 仕事のコントロールレベルも、かなり腰痛を引き起こしてるっぽい(OR=0.81)
- 社会的支援も腰痛の原因になり得る(OR=0.75〜0.78)
- 報酬と技術の自由裁量(労働者がどれぐらい幅広いスキルを使えるかどうか)は腰痛と相関してなかった
だったそうな。仕事量や仕事のコントロールレベルについては、「科学的な適職」でも「仕事における幸福を左右する大事な要因」として取り上げてますけど、実は腰痛まで引き起こしていた!ってのは意外というか納得というか。
研究チームいわく、
仕事量が多い人は慢性腰痛により頻繁に苦しんでいたが、職務のコントロールが効く従業員は影響を受けにくかった。また、職場で上司や同僚から社会的支援を受けると腰痛が軽減することもわかった。(中略)
労働条件の改善は、痛みに関連する欠勤を減らすことができる。柔軟な休憩や自律的な作業スケジュールなどの改善は、すべて作業負荷を軽減してくれる。また、同僚からの社会的支援や、上司からのフィードバックや評価も役に立つかもしれない。
ってことでして、腰痛にお悩みの方は、とりあえず「これは仕事のストレスが原因なのでは?」と疑ってみても良さそうですねー。