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1日30分を6週間で記憶力がガツンとアップするトレーニング術はこれだ!みたいな実験の話

 

記憶術みたいなものはいろいろありますが、とりあえず一番役に立つものといえば「記憶の宮殿」でしょう。頭のなかになんらかの空間(自分の部屋とか)を思い描き、そこに覚えたい数字や記号をセットしていくっていう手法ですね。

 

 

記憶力のチャンピオンなんかもたいていは「記憶の宮殿」を使ってて、500桁の数字を数分で暗記したりとか、すさまじいパフォーマンスを出してたりします。すごいもんですなぁ。

 

 

といったところで、近ごろチェックしたデータ(R)は、「記憶力が普通の凡人でもトレーニングで記憶チャンピオンに迫ることはできるの?」って問題を調べてて、なかなかおもしろいものがありました。一般人でも「記憶の宮殿」でトレーニングすればいいとこまでいけるのか?ってことですね。

 

 

これはラドバウド大学の研究で、まず最初のテストでは、

 

  1. 記憶競技で優勝した23人のチャンピオンと普通の人を集める
  2. 全員の脳をfMRIで調べる(安静時と何かを暗記をしている間の2パターン)

 

って感じで記憶力のエリートと一般人の脳の働きを調べたんだそうな。すると、

 

  • どちらのグループも、脳の構造や機能については差がなかった
  • ただし、記憶エリートの脳は接続パターンが異なっていた

 

って結論が出たそうで、要するに記憶力のエリートと言っても特殊な脳を持ってるわけじゃなくて、回路のつながりが違うだけなんだってことですな。

 

 

研究チームいわく、

 

記憶力のチャンピオンといえど、記憶力が大きく発達するような特別なハードウェアを持っているわけではなかった。ただし、彼らの脳はより繊細な処理を行っていたのだ。

 

ってことで、もしかしたら一般人の脳でもトレーニングでどうにかなるんじゃないか?って希望が出てきたわけですね。

 

 

そこで2つ目の実験では、いままで記憶のトレーニングをしたことがない51人を集めて、2つのグループに分けております。

 

  • 実験群:1日30分ずつ「記憶の宮殿」をトレーニングする
  • コントロール群:なにもしないか、n-backトレーニングをする

 

トレーニングの期間は6週間で、ほとんどの人は「脳内に思い浮かべた自宅のなかに、覚えたい数字や名前を配置する」という手法を練習したそうな。一番ベーシックなタイプの「記憶の宮殿」っすね。

 

 

でもって、結果はこんな感じになりました。

 

  • 「記憶の宮殿」をトレーニングしたグループは、有意に記憶タスクの成績が上がった(コントロール群には変化なし)
  • 「記憶の宮殿」をトレーニングしたグループは脳の構造に変化は起きなかったが、fMRIスキャン中の脳の接続パターンは良い方向に変化した(つまり、記憶力チャンピオンの脳に似た働きを示すようになった)

 

ってことで、6週間で被験者の脳はだいぶ処理能力があがったみたい。これはなかなか希望が持てる結果ですねー。

 

 

まぁ新しいスキルを学ぶことで脳が変化するのは有名な話で、よく知られている研究だと、ロンドンのタクシー運転手はいつも複雑な路地を走ってるせいで海馬の灰白質が増えていた!なんて事例がありますからね。6週間も集中してトレーニングすれば、良い方向に脳が変わっても不思議じゃないのかもしれません。

 

 

今回の研究は実験デザインもいい感じですし、新しいことをガンガン学んでいけば、わりと短期間で脳が変わることを示した良いデータじゃないでしょうか。特に「記憶の宮殿」については、

 

 

みたいなメリットも指摘されてますんで、毎日の脳トレとして取り入れてみてもいいかもですねぇ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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