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今週の小ネタ:徹夜した脳をクレアチンが癒やす?カルシウムサプリが脳には悪い?オメガ3サプリは脳にいいのか問題


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

徹夜した脳をクレアチンが癒やしてくれるのか?

「徹夜にクレアチンは効くか?」を調べた研究(R)が出ておりました。

 

クレアチンは筋トレ民におなじみのサプリで、「筋力アップ」「高強度運動のパフォーマンス改善」あたりで定番中の定番。私も「筋肉サプリ」として愛用してるんですが、近年は「脳にも効くんじゃないの?」という話が増えてたりするんですよね。脳ってのはエネルギーを大量に食う臓器だし、クレアチンは細胞内のエネルギー供給に関わる物質なので、疲れた脳を助けてくれる可能性があるんですよ。

 

で、今回の研究は、健康な男女29人、平均27歳を対象にしたランダム化クロスオーバー試験です。参加者には、夕方6時半に認知テストを受けてもらい、夜9時にクレアチン、またはプラセボを飲んでもらいます。クレアチン量は体重1kgあたり0.2gなので、体重60kgなら12gぐらい。そこから一睡もせずに、夜11時半、深夜2時半、明け方4時半に同じ認知テストを受ける、というなかなかキツい実験をしたんだそうな。

 

条件は7日間あけて入れ替える設計なので、同じ人がクレアチンとプラセボの両方を経験する感じです。この手の試験は「クロスオーバー」と呼ばれていて、個人差をある程度までならせるので、少人数でも比較的きれいに効果を見やすいのがメリットであります。

 

で、その結果がどうだったのかと言いますと、

 

  • ちょっと効いてそうな気配はあるけど、決定打にはまだ弱い!
  • いくつかの認知テストでは、クレアチンを飲んだほうがプラセボより成績が良かったが、統計的に有意だったのはロジック課題だけだった。

 

みたいな感じだったそうです。つまり、夜更かしで頭がぼんやりしているときにクレアチンを飲むと、論理的な処理だけは少し改善する可能性があるわけですね。

 

まぁ内容をよく読むと、ここで研究者たちはかなり保守的な統計処理をしてるんで、ほかの認知項目の効果が見えにくくなった可能性はありますね。とはいえ、現時点では「広い認知能力をガツンと改善した」と言えるほどの結果じゃないと考えるほうがいいでしょうな。

 

ただ、過去のクレアチン研究では悪くない結果も出てまして、2019年のレビュー(R)でも、クレアチンは筋肉だけでなく認知処理に関係する可能性が示されてますし、2024年には「1回クレアチンを飲むだけで睡眠不足時の認知パフォーマンスが改善した」という報告もあったりすますからね(R)。なので、「睡眠不足の脳をクレアチンが助けるかも」という仮説そのものは、意外とあり得る話なんですよね。

 

なので、まだクレアチンが徹夜に効くかはなんとも言えないとこではありますが、睡眠不足が認知機能に悪いのは確実なので、「どうしても寝られない日」「夜間作業が避けられない日」「育児や仕事で睡眠が削られる日」にサポートとして使う可能性はあるかもですな。すでに筋トレ目的でクレアチンを日常的に使っている人なら、脳へのオマケ効果を少し期待するぐらいはアリでしょう。

 

 

 

カルシウムサプリが脳には悪い?

「カルシウムのサプリは脳には悪いのでは?」という研究(R)が出ておりました。カルシウムは骨の健康を守る定番の栄養素ですが、高齢女性では骨粗しょう症対策としてサプリを飲んでいる方もいるはず。

 

ところが近年は、「カルシウムサプリってデメリットが大きいのでは?」って議論も増えてまして、「心血管リスクが上がるのでは?」と言われたりするんですな。そもそも食事から摂るカルシウムとサプリで摂るカルシウムは体への影響が違うんじゃないかみたいな話がありまして、なかなか困っちゃうわけです。

 

で、今回の研究は、フランスに住む高齢女性227人を対象にした前向きコホート研究を再分析したもの。参加者は平均80歳で、研究がはじまった時点で、カルシウムサプリを飲んでいた人と飲んでいなかった人を比べて、その後7年間で認知機能がどう変わるかをチェックしたんだそうな(認知機能の評価には、Short Portable Mental Status Questionnaireという10点満点の簡易テストを使用)。

 

そこで、結果がどうだったのかと言いますと、

 

  • スタート時点でカルシウムサプリを飲んでいた女性は、飲んでいなかった女性に比べて、7年後に認知機能が低下しているオッズが3.6倍高かった。

 

だそうで、なかなかギョッとする数字っすね。もちろん、これは観察研究なので「カルシウムサプリが認知機能を下げた」とは言えませんで、医師からサプリを勧められるような人は、もともと健康レベルが下がってるケースが多いですからね。カルシウムそのものではなく、「カルシウムサプリを必要とするような健康状態」が、認知機能の低下をもたらしていた可能性もだいぶあるでしょう。

 

さらに、このデータで興味深いのは、

 

  • 食事から摂るカルシウムは認知機能の低下と関連していなかった!

 

って傾向も出てるところです。要するに、「牛乳、ヨーグルト、小魚、豆腐、青菜などからカルシウムを摂るのは別に問題なさそうだが、サプリの場合は少し話が違うかも」と考えられるわけっすね。

 

とはいえ、これはまだあくまで仮説レベルで、「カルシウムサプリを飲むと認知症になる!」みたいな強い結論は出せないのでご注意あれ。今回の研究から言えるのは、「高齢女性において、カルシウムサプリの使用と軽い認知機能低下に関連が見られた。ただし因果関係は不明」というぐらいなんで。ということで、実用的にはどう考えればいいのかと言いますと、個人的には、「カルシウムはまず食事から摂るのを基本にしたほうがよさそうだなー」ぐらいに考えておけばいいんじゃないかと。

 

 

 

オメガ3サプリは脳にいいのか問題

「オメガ3は脳にいい!」という話は、健康界隈ではかなりおなじみでしょう。魚を食べる人は認知症リスクが低いとか、DHAは脳の材料になるとか、EPAは炎症を抑えるとか、そういう話を誰もが一度は聞いたことがあるはずであります。実際、オメガ3脂肪酸は炎症の調整に関わってるんで、脳の健康と関係がありそうに思えるわけです。

 

ということで新しい研究(R)は、55〜90歳の成人819人を対象にしたコホート研究の二次分析であります。参加者のなかには、アルツハイマー病の方も含まれてまして、中央値で約5年間の追跡が行われております。

 

研究では、参加者にオメガ3サプリを使っていたかどうかを自己申告で確認してもらい、その後の認知機能の変化をチェック。サプリの中身は主にフィッシュオイルで、一般的に市販されている魚油サプリを飲んでいた人と、飲んでいなかった人を比べたんだそうな。

 

では結果はどうだったのか?と言いますと、

 

  • オメガ3サプリを使っていた人のほうが、使っていなかった人より認知機能の低下が速かった!

 

だったらしいんですよ。その差は、典型的な認知機能の低下の進行のうち、およそ8〜15%ぶんに相当するってことで、めちゃくちゃ巨大な差ではないものの、「脳にいいはずのサプリで、むしろ脳の働きが悪化した」ってのは、なかなか無視しづらい結果であります。

 

ただし、ここで早とちりして「オメガ3は脳に悪い!」と結論するのは危険なので、こちらもご注意ください。

 

まず、この研究は観察研究の二次分析でして、たしかに「オメガ3サプリを飲んでいた人ほど認知機能の低下が速かった」という関連は見えたものの、「オメガ3サプリが認知機能を悪化させた」とまでは言えないんですよ。たとえば、サプリを飲んでいた人は、もともと健康不安が強かったのかもしれないし、認知機能の低下を自覚していたからこそフィッシュオイルを飲み始めたのかもしれませんからね。毎度おなじみ「原因と結果が逆かもしれない問題」は、ここでもつきまとうわけです。

 

とはいえ、今回の話で興味深いのは、「オメガ3そのものが悪い」というより、「市販の魚油サプリの質が問題かもしれない」って傾向も見て取れることであります。過去にこのブログでも書きましたが、オメガ3脂肪酸はとても酸化しやすいんで、フィッシュオイルのサプリってどうしても劣化しがちなんですよ。これが、サプリで逆に脳がダメージを受ける原因になってるのかも?とは言えるわけっすね。

 

つまり、今回の研究から得られる教訓は、「オメガ3は脳に悪い」ってことじゃなくて、「フィッシュオイルサプリは質が大事!」という従来どおりのものになるんでしょう。魚そのものを食べる場合は鮮度を判断しやすいですが、サプリだと見た目では酸化レベルを見抜くのは不可能ですからねぇ。

 

結論として、オメガ3はやはり有望ではあるものの、フィッシュオイルサプリにはくれぐれも注意していただければと思う次第です。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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