オメガ3とアレルギー、ビタミンBと脳機能、食事とがんなど、近ごろ「効果が確認されなかった」健康系データ祭り
https://yuchrszk.blogspot.com/2020/05/3b.html?m=0
このブログでは「この運動やサプリに良い効果が確認されたよー」といった話をメインに取り上げてるわけですが、同時に大事なのが「これは効果が確認されなかった……」って知見であります。なにが効いてなにが効かないかの線引きをしないと、せっかくの情報も使いづらいですからね。
というわけで今回は、直近で「効果ゼロ」の判定が出てしまったサプリや健康ネタなどをまとめてみます。まぁ実際のところポジティブなエントリの方がアクセスは伸びるんですけど(笑、たまにはネガ話もいいでしょう。
1. どうもオメガ3はアレルギーの予防にはならないっぽい
「オメガ3のサプリが小児アレルギーの発症リスクを下させるか?」って問題を扱ったメタ分析(R)が出てまして、過去のデータから8件を選んで精査してくれております。オメガ3を小児に飲ませたら、喘息や湿疹、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎は改善するか?ってポイントですね。で、その結果はヌル(効果なし)でして、いかなるアレルギーのリスクについても有意な減少は認められなかったそうな。昔の観察研究とかではDHAとEPAがたくさん入ってる母乳で育った子供ほどアレルギー疾患を発症しづらいなんて話もあったんで、ちょっと意外なとこもありますが。
もっとも、ここで扱われたデータは全体的に「質が低い」と判定されてますんで、全体的な結論の信頼性も低いです。もしかしたら、より質が高いオメガ3を使ったテストが行われたらまた違う結果になるかもなーって感じですね。
2. ビタミンBで認知障害は良くなるか?
ビタミンBで軽度の認知障害は改善するか?を調べたテストの結果(R)が出ておりました。というのも、以前からビタミンB12と葉酸は血中のホモシステインレベルの低下と相関することがわかってたんですよね(ホモシステインは脳機能の低下と関係がある)。これは軽度の認知障害に悩む男女279人を対象にしたテストで、みんなに1日500μgのビタミンB12と400μgの葉酸を飲んでもらって、どうなるかをチェックしたんだそうな。参加者はみな65歳以上で、高血圧や糖尿病などに悩んでるケースが多め。
でもって、その結果はやはりゼロでして、ビタミンB12と葉酸は認知低下に何の影響もおよぼさなかったそうな。うーん、残念。
まぁたんに意味があるレベルの変化を検出できなかった可能性もあるものの、現時点では軽度認知症にビタミンB系のサプリを飲むのは推奨できないかも。ホモシステインがよくないのは確実なんで、必要な栄養は食事から取ることをお勧めしときます。
3. フィッシュオイルで乾癬は治るか?
「フィッシュオイルが乾癬に効くのでは?」って問題を調べたメタ分析(R)が出ておりました。乾癬は肌に赤い斑点が出たり表面がボロボロと剥がれ落ちたりする難しい症状のひとつ。自己免疫の暴走で肌に炎症ができちゃう問題なので、「もしかしたらフィッシュオイルが効くかも?」と考えられてきたんですよね。フィッシュオイルに抗炎症効果があるのは有名ですから。
そこでこのメタ分析では過去のRCTあら337人分のデータをまとめていて、だいたい1日にEPA=1.5〜4.2 g、DHA=1.5〜4.2 gを使った場合の効果をみております。
でもってその結果は「明らかなメリットはなし」だったそうで、やはり上述のデータと合わせて考えても「オメガ3を免疫系の疾患に使うのはむずいのかなー」って印象ですねぇ。
4. 食事の改善とがんサバイバー
がんを予防するには食事の改善が一番!ってのはよく言われることですが、「それじゃあ、がんサバイバーはどうなの?」ってのはあまりわかっていなかったところ。がんの発症を生き延びた人が食事を改善した場合はどうなのか、と。ってことで最近のデータ(R)は、過去の研究から25件をまとめてメタ分析してくれまして、
- 野菜を増やす
- 食物繊維を増やす
- 食事の品質をあげる
といった改善によってがんサバイバーの方々にどんな影響が出るのかをチェックしたんですよ。すると、意外なことに食事の改善によるがんサバイバーのメリットは確認されなかったというんですな(つまり、死亡リスクやがん転移率に明らかな影響がなかった)。うーん、不思議だ……。
まぁこのメタ分析についても、データの大半は「質が低い」と評価されてまして、そこまで強い結論でもないです。個人的には、今後もっと強力なデータが出たら違う結論も出るかなーって印象っすね。