今週半ばの小ネタ:魚で脳ダメージ回復、テディベアで自信回復、死について考えるとポジティブに
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
魚が大気汚染の脳ダメージを救うかも
「魚が大気汚染の脳ダメージを救う!(かもしれない)」ってデータ(R)が出ておりました。コロンビア大学が平均年齢70歳の女性1,315 人を調査したもので、みんなの食事、身体活動、病歴を調べたうえで、
- 各女性が週単位で消費した魚の平均量を計算
- 赤血球中のオメガ3脂肪酸の量を測定
- 女性が住む地域の大気汚染を調べて3年間の平均測定値
- 脳スキャンで白質と海馬の健康状態を測定
といったデータを比較してます。これで魚を食べてる人の脳ダメージが分かるわけっすね。
すると、全体的にこんな傾向が確認されました。
- 血流中のオメガ3脂肪酸の濃度が最も高い女性は、濃度が最も低い女性と比べて白質の体積が大きかった(グループ間の体積の平均差は7立方センチメートル)
- 同様に、オメガ3脂肪酸の濃度が最も高い女性は海馬の体積も大きかった
ってことで、もちろんこの研究から因果関係はわからないものの、チームは「PM2.5の神経毒性をオメガ3が防いでくれてるんじゃない?」と考えておられます。オメガ3が白質の生産と維持に関わる細胞を保護してくれるので、大気汚染によるダメージをやわらげてくれるかもしれないんだそうな。
確かに、最近は「PM2.5で脳が縮む!」みたいな説をよく聞くようになったんで、魚で保護できるなら実にありがたいっすね。ちなみに、この調査で扱った魚料理は、焼き魚、缶詰、刺身などに限定されていて、フライ系は除外されてますんでそこはご注意ください。
自信がないときはテディベアを抱け?
「実存的な恐怖にテディベアが効く?」みたいな研究(R)が出ておりました。「実存的な恐怖」ってのは「死の不安」とか「存在の不安定さへ心配」みたいなことで、基本的には自尊心が低めな人ほど抱きやすい傾向があったりします。
この実験では、まず50人の参加者を集めて全員の自尊心レベルを測定。続いてみんなに「死」について考えてもらった後で、みんなに体高約1メートルのテディベアを見せて「いくらぐらいの価値があると思いますか?」と尋ねたんだそうな。
すると、参加者の反応にはおもしろい違いが出まして、
- 自尊心が低くて死について考えた参加者はテディベアに23ユーロをつけ、自尊心が高くて死について考えた参加者は13ユーロをつけた
だったそうな。つまり、自尊心が低い人が死の恐怖に襲われると、テディベアみたいにフワフワしたものを抱きたくなるんじゃないかってことですね。
まぁこの実験だと実存的な恐怖がテディベアで癒されるかどうかはまったくわからないんですけど、研究チームは「実存の恐怖は触覚的な触れ合いにより緩和されるのでは?」との仮説を立てておられます。事実、61人の参加者を集めたまた別の研究では、研究アシスタントが1秒だけ参加者の背中に優しく触れた場合は、死に対する恐怖感が少ないと報告する傾向があったらしい。
あくまで予備的な知見ではありますが、私もなんかイライラしたときは猫にほおずりしまくりますし、自尊心が低めな方は「なんかモフモフしたもの」を身の回りに用意しておくといいかもしれませんね。
死について考えるとポジティブに?
最後は「死について考えるとポジティブになれる!」みたいな研究(R)のお話です。
ここでは複数の実験が行なわれてまして、例えばある調査では、学生たちに「jo_」みたいな歯抜け単語を埋めるように指示したんですよ。その際に全体を2つのグループにわけまして、
- 自分の死について考えてもらう
- 歯医者のについて考えてもらう
って感じにしたら、事前に死について考えたグループのほうが、「joy」みたいにポジティブな単語を思い浮かべる確率が高かったんだそうな。
そのあとの実験も基本的な結果は同じで、死について考えた参加者は、やはり感情的にポジティブな単語を選ぶ可能性が高く、しかもその心理プロセスについて本人はまったく気づいてなかったらしい。この結果についてチームいわく、
死は心理的に恐ろしい現実だ。しかし、私たちは死について深く考えると、自動的に幸せな思考を探し始めるシステムが起動するようだ。このメカニズムは、即座に意識の外で発生する。
とのこと。要するに、誰でも自分の死は怖いんで、そのことについて考えると無意識のうちに恐怖を乗り越えたくなり、ポジティブ思考のメカニズムが起動するんだって話ですね。
なので、「ちょっと気分がヘコんでるなー」とか「ネガティブになってるなー」なんてときは、試しに自分の死について考えてみるとポジティブ思考が起動できていいかもしれません(もともとネガティブな人が「死」について考えるとさらにヘコみそうな気がしますんで、そこは注意ですが)。