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エクササイズの改善に役立ちそうなデータいろいろ:筋トレ食、β-グルカン、70オーバー、低糖質食……etc

  

ここんとこ「過去に類似の話を紹介したけど、さらに追試で効果が確認されたので無視するのももったいないケース」をまとめて取り上げてみる」シリーズをやっております。今回は「エクササイズの改善に役立ちそうなデータ」を4つほど、すごーくざっくりとまとめてお送りしまーす。

 

 

 

筋トレ用の食事はいつがベストタイミングなのか?

筋トレをするとすぐに筋肉の分解が始まるのは有名な話。ここで適切な栄養が補給されないと、うまいこと筋肉は育っていかないわけですね。

 

 

が、この「筋トレ用の食事はいつがベストタイミングなのか?」って問題はまだよくわかってなかったりします。「筋トレ前がいい!」や「いつもの食事通りにするのがベスト!」みたいな仮説がいろいろあって、判断が難しいんですよ。

 

 

というわけで新しい研究(R)は、8人の健康な若い男性を3つのグループに分けて、クロスオーバー試験を行なってくれております。

 

 

どんな実験だったかというと、

 

  • 3つのグループすべてに午前中に全身の筋力トレーニングをしてもらう
  • 3グループ中、ひとつのグループは筋トレの1時間半前に食事し、別のグループは筋トレ直後に食べ、最後のグループはいつもの昼食時に食事をする
  • 以上の指示を3日間のあいだに3回行い、そのたびに参加者は別のグループに切り替える

 

みたいになってます。そのうえで試験が終わったあとに血中インスリンとアミノ酸の変化を調べ、筋肉がどれぐらい分解したかをチェックしたそうな。

 

 

その結果がどうだったかというと、

 

  • 筋肉のタンパク質の分解が最も抑制されたのは、筋トレ直後に高タンパク質の食事をしたグループだった

 

って感じになりました。この研究をうのみにするなら、筋トレの直後に食事をするのがベストってことになりますねぇ。

 

 

もっとも、これが実際に筋肉の成長&回復に役立つかはわからないし、長期的に見ればどのタイミングで食事をしても同じでは?って報告もなくはないので、個人的にはまだ判断がつきかねております。とりあえず気になる方は、筋トレの直後に高タンパク食を持ってきてもいいんじゃないかと。

 

 

 

β-グルカンで運動の炎症が下がる?

β-グルカンはきのこの細胞壁とかにふくまれる食物繊維の一種で、昔から「免疫系の改善に効く!」などと言われてサプリが売られております。実際、「βグルカンに免疫の調節効果がある」とか「炎症を抑える働きがある」って報告はいくつかありまして、そんな根も葉もない話じゃないんですよね。

 

 

ってことで新しい研究(R)では、βグルカンサプリが運動による炎症を抑えることができるのか?ってところを調べてました。これは健康な31名の参加者を対象にしたクロスオーバー試験で、

 

  1. βグルカンを飲む
  2. プラセボサプリを飲む

 

って2パターンをそれぞれ13日ずつ実践してもらい、11日目には高温多湿の環境で激しいトレッドミル運動を指示。そのあとで全員の炎症マーカーを測定したら、14日間のウォッシュアウト期間を経て、同じ手順をくりかえしたそうな。

 

 

その結果は、

 

  • 激しい運動の11日前と2日後にβグルカンを飲むと、炎症の指標が有意に下がった!(ILー8とかTNAαとか)
  • 特に運動後3日目に炎症の指標が有意に減少した(効果量はd = -0.3近辺)

 

みたいになってまして、「おっ!意外と悪くないじゃない!」って印象ですね。あんま類似の研究がないので、運動のダメージ回復にβ-グルカンを飲むかと言われればまだ様子見が無難でしょうけど、食物繊維のなかでもおもしろい働きをするものとして注目しときたいっすな。

 

 

 

70オーバーでも筋トレはまだ遅くない!

こないだウチの母親が「70を超えると筋トレしても意味ないって聞いたよ」と言ってたんですが、この見解をくつがえすデータ(R)が出ておりました。

 

 

これは72歳以上の男性に12ヶ月間もの筋トレを指示した実験で、参加者は全部で43名。みんなサルコペニアと骨粗鬆症を同時にわずらっている人だけを選んだらしい。歳をとるとどうしても筋肉量と骨密度が下がっちゃうので、これは参考になりますな。

 

 

実験では全体を2つのグループに分けて、

 

  1. 高負荷の筋トレを週に2回する
  2. なんもしない

 

って感じにしたうえで、すべての参加者にプロテイン、カルシウム、ビタミンDを飲むように指示したとのこと。

 

 

すると、高負荷筋トレをしたグループは、1年後に腰椎の筋肉量と骨密度、筋力が増えたのに対して、なんもしなかったグループはどちらも量が減少しちゃったらしい。つまり、70を超えても運動の効果は十分に得られるんだ!って話でして、あらためて「筋トレは一生モノだな……」とか思った次第です。

 

 

 

低糖質食をしてるあいだはプロテイン増量が必須なワケ

持久運動のパフォーマンスを高めようと思ったら糖質は必須。そのため、持久系アスリートは炭水化物を食べまくる人が多いんですが、一方では「あえて炭水化物の量を減らす」って時期を設けることもあります。これにより体を低糖質の状態に鳴らして、有酸素運動への適用を高めよう!って考え方ですね。

 

 

ただ、この戦略を使うとどうしてもアミノ酸の酸化が起きやすく、その分だけ筋肉も減りやすいのが難点。なので「低糖質食をしてるあいだはプロテインを増量した方がいいんじゃないの?」って考え方が出てくるわけです。

 

 

そこで新しい研究(R)では、8人の持久系アスリートを集めて、無作為化クロスオーバー試験を実施。それぞれの参加者は、低炭水化物または高炭水化物のどちらかを食べてもらい、その後で持久力テストを行ったんだそうな。

 

 

テストが終わったら、間接熱量測定法などでタンパク質と脂肪の酸化レベルを測定しまして、最終的にはこんな結果になりました。

 

  • 高炭水化物よりも低炭水化物食のほうがアミノ酸酸化は多かった(つまり、低炭水化物を実践しているあいだはタンパク質の必要量が増加する)
  • これは、炭水化物によるタンパク質の温存効果を示唆する

 

ってことで、タンパク質を保存しておくためにもやっぱ糖質は必要なんすねーって感じ。低糖質を実践されている方は、是非プロテインも増量する方向でひとつ。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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