他人から見た自分はどこまで正しくて、どこまで間違っているのか?問題
「科学的な適職」では「人間は自分のことが一番よくわからない!」みたいな話を書いていて、だからこそいろんな方法で自己認識を掘り下げないと痛い目にあうよーみたいな考え方を強調しております。もちろん、なかには自己判断が正しいジャンルもあるんですけど、自分の能力や好みなどを正しくつかむのは苦手みたいなんですよね。
で、ここで取り上げるデータ(R)も、「人間の自己判断はどこまで正確なのか?」という問題を深掘りしていて面白いんですよ。
これはワシントン大学などの研究で、165人の男女を集めて「SOKAモデル」っていうフレームワークについて調べたものです。「SOKA」は「self-other knowledge asymmetry」の略でして、意訳すると「自分と他人が持ってる知識にはズレがあるよねーモデル」ですな。
どんな研究だったかと言いますと、
- みんなにIQテストを行い、そのあとでグループディスカッションをさせて、他の参加者が「どんな人か?」を判断してもらう
- トリーアの社会的ストレステスト(参加者に2名の審査員の前でスピーチをしてもらう)を行い、全員に心理的なストレスを与える
- 全ての参加者に40項目の性格評価フォームを与えて、自分自身の性格と他の参加者の性格をジャッジしてもらう
- すべての結果をひっくるめて、「自分自身の人物評価と他人から見た人物評価のズレ」を測る
みたいになってます。知性や性格をふくめたいろんな側面から人物を計測して、それが果たして自己と他者でどう違うかを見たわけですね。
で、結果はこんな感じです。
- 他人はこちらの知性や創造性、魅力度を自分自身より正確にジャッジできる
- 不安のような神経症的な傾向を評価するときは他人より自分の方が正確にジャッジできる
- 外向性については自分と他人のジャッジの正確さはほぼ変わらない
これについて研究チームいわく、
あなたは自分の不安レベルをよく理解できるが、他の人はそれを判断できない。私たちは自分の内面を隠すのがうまいからだ。しかし、多くの場合、外的な行動のジャッジについては他人のほうが優れている。
パーソナリティは、我々が行う多くのことに反映される。ファッションの選択、家具の配置、WebサイトやFacebookのプロフィール-----あなたが触れるすべてのものは、あなたのパーソナリティの痕跡を残す。気づかないうちに、あなたは自分の個性のヒントを他人に与えているのだ。
ってことで、要するに、内面のネガティブを見極めるのは自分の方がうまいものの、知性とか外向性みたいに外側に現れるものごとについては他人のほうが判断できるんだ、と。そりゃそうかもですね。
では、なんで自己判断が苦手な分野が存在するのかと言いますと、チームは「その特性が望ましいか望ましくないか」ってポイントに原因を求めておられます。
知性、魅力、創造性といった要素には、人生の多くのものがかかっている。あなたが知的かどうか、魅力的かどうかによって、人生は大きく変わるからだ。
誰もが知的で魅力的である人間に見られたいものだが、これらの望ましい特性を自分自身で正確に判断するのは難しい。友人のことを「頭が良くない」と判断しても自分の人生に脅威はないが、自分のことを「頭が良くない」と認めれば急に人生への脅威が増す。
自分の本当の姿を正しく見極めたら生きる希望がなくなっちゃうので、人間は自己の望ましい特性を判断できないんだってことですね。マーク・トゥエインが「汝自身を知れ。さすれば汝は自己嫌悪に陥るであろう」って名言を残してますけど、まさにその通りですねぇ(笑
ということで、以下に研究チームのまとめです。
私たちは「自分のことは自分が一番よく知っている」と思いがちだが、この反射的な考え方には心から疑問を持った方がいい。人間の「パーソナリティ」とは、あなたが自分のことをどう思っているかとは関係がない。
多くの人は人生の物語を書くのは自分自身だと思いこむため、「私こそが自己の専門家である」と考えやすい。しかし、パーソナリティは自己が描く物語とか関係がなく、ただの現実でしかない。そして、あなたがどんな物語を信じているかに関わらず、他の人は現実のほうを見ようとする。